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liberal arts-大学生の常識

人生を経済学で考えよう(19)テスト結果は、こう伝えれば学生がやる気になる!

人生を経済学で考えよう(19) テスト結果は、こう伝えれば学生がやる気になる!
authored by 慶應大学 中室牧子ゼミ

 こんにちは。慶應義塾大学中室牧子ゼミナールです。今回は、「先生は学生にテストの結果をどのように伝えるべきか?」について考えます。これを読んでいる皆さんも、学校でのテストは数えられないほど受けてきたと思います。そのテストの結果はどのように伝えられたでしょうか。

伝え方は教員によって違いがある

 一般的には、自分の点数が書かれた答案用紙を返してもらうと思いますが、先生によってはクラスの平均点を伝えてくれたり、クラス内での自分の順位を伝えてくれることもあったのではないでしょうか。もしかすると、テストを受験したのに結果が伝えられないこともあったかもしれません(大学などではテストの結果を返してくれない教員も多いでしょう)。このように、テストの結果の伝え方は、各教育段階や各教員の裁量によって決められている印象を受けます。果たして、どのようなテストの結果の伝え方が、より学生のモチベーションを高め、次に繋がるような効果があるのでしょうか。

 実際に、過去の経済学の研究では、こうした疑問に答える分析が行われています。スペインの高校において行われた、テストの点数のみ伝えられるグループとテストの点数とクラスの平均点を伝えられるグループを比較した研究では、後者の平均点も伝えられるグループの方が後の成績が向上することが明らかになっています。また、ベトナムの大学における研究では、英語の小テストについて、テストの点数のみ伝えられるグループ、テストの点数とクラス内の自分の順位を伝えられるグループを比較し、これもまた後者の順位も伝えられるグループの方が、後の成績が向上することが明らかにされています。自分のテストの点数に加えて、クラスの平均点やクラス内の順位といった周りと比較できるような情報を伝えるということは、周囲との競争を促すような効果があり、学生のモチベーションを高めるのではないかと考えられます。

学生の「競争心」が成績アップのカギ

 では、テストの点数に加えて、平均点あるいは順位のどちらを伝えるのが効果的なのでしょうか。私達はこの点を明らかにするために、大学の授業で実験を行いました。授業では数回の小テストが実施し、小テストごとに結果を伝えました。その時、大学生は、①自分のテストの点数のみ伝えるグループ、②自分のテストの点数とクラスの平均点を伝えるグループ、③自分のテストの点数とクラス内の自分の順位を伝えるグループにランダムに振り分けられました。3つのグループのうち、期末テストの点数が最も高くなったのは、③の自分のテストの点数とクラス内の自分の順位を通知された生徒のグループでした。また、面白いことに、クラス内の順位を伝えられて期末テストで高いパフォーマンスを発揮したのは、男子生徒であることもわかりました。

 なぜ、クラス内の自分の順位を伝えられたグループの方が期末テストの点数が高くなったのでしょうか。今回、実験の対象となった生徒たちにインタビュー調査を行うと、順位を伝えられたことで、より上の順位を目指そうとする競争心が湧いたという意見が多く聞かれました。そのため、順位を伝えられることで、競争心が湧き、成績が向上したと考えらます。男子生徒に対して効果が大きかった理由としても、男性の方が競争心が強いため、より競争心が刺激されたのではないかと考えられます。

 私たちの研究より、テストの結果はテストの点数だけでなく、順位も伝えることで、成績が向上することがわかりました。テストの結果の伝えられ方は各教員によって異なり、あまり意味を持たない印象を受けますが、科学的根拠に基づいて、その後の結果に結びつくような伝え方をしていく必要があるのではないでしょうか。

(中室牧子・山本侑汰・中村真優子)

中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部准教授は、教育経済学が専門。著書に『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。最新刊は写真の津川友介との共著『「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)