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大学生が見たカイシャ(9)小学館~子どもの目線を大切に幅広い読者に寄り添う

大学生が見たカイシャ(9) 小学館~子どもの目線を大切に幅広い読者に寄り添う
authored by 国学院大学学生キャリアサポーター

 キャラクタービジネスに強く、幅広い分野の書籍や雑誌を発行している、総合出版社の一つ『小学館』。企業理念に『出版物が世の中全ての悪いことを無くすことはできないが、人の心に良い方向を生み出す、何らかの小さな種子をまくことはできる』と掲げ、子どもからお年寄りまで読者に寄り添うことを大切にしている会社です。「大学生が見たカイシャ」第9回目は小学館の総務局人事・人材課の井上翼さんにお話を伺いました。

―――どのように他の出版社との差別化を図っているのか教えてください。

 小学館のターゲットは年齢や性別を問いませんが、創業以来子ども向けの本作りに力を入れ続けています。子どもの目線を大切にし、雑誌や絵本、図鑑、学習まんが、そして小中校生向けの新聞まで扱っています。時には他社と提携もしながら作っているという点は、他の出版社とはかなり異なると考えています。

 刊行する雑誌数は50誌ほどと、業界一でジャンルも多岐に渡りますし、どの部署にいても自由に本の企画を出せるという環境は、実は総合出版社の中では小学館ならでは、です。また、ドラえもんや名探偵コナンなどに代表されるキャラクタービジネスにも強く、『面白ければ色々なことをやろう』という考えのもと仕事をしています。


多種多様な本の形、サイズから紙の種類にまで気を配る

―――紙媒体で販売するとき、見栄えの点で意識していることは何でしょうか。

小学館人事・人材課の井上翼さん

 ひとくちに本といっても、書店での扱いはどの本も全く同じとは言えません。例えば、数千部刷られる本と数十万部刷られる本とでは、置かれる場所も、置かれ方も違います。平置きされる本はカバー前面の見栄えやデザインが見た人を惹きつけられれば、手に取ってもらえる機会も多くなるでしょう。しかし部数が小さく棚に差される本は、背の部分のデザインもとても重要なものになります。

 読者に刺さるようなキャッチコピーを帯に載せたり、本の形やサイズ、紙の種類にまで気を配ったりもします。その前提として、今の流行や読み手が求めているものといったリサーチも重要で、それを装丁・デザインに生かしていくわけです。

―――アプリでの作品の無料公開にはどのような意図があるのでしょうか。

 現代では、コンテンツに対してお金を払うハードルがとても上がっています。作品を途中まで無料で公開しているのは、お金を払うことに躊躇している読者の方々にも、色々な作品に触れてもら貰う入り口として頂きたいからです。読んでもらえれば、そこから口コミが生まれるかもしれません。つまり宣伝効果も期待できるわけです。そうした広がりがまた、好きな作品と出会える機会を増やすことにつながると考えています。

―――海外に向けてやっていることをお聞かせください。

 今や日本の出版物、特にコミックは世界各国で売れていますが、国によって売れるものが違います。そこで、社内の国際ライツの部署が各国の出版社と連携を取りながら、それぞれの国に合ったコンテンツを送り込んでいます。と同時に、サンフランシスコ、パリ、シンガポール、そして台湾にある関連会社が、マーケティングとプロモーション活動を行っています。

―――小学館の今後の課題についてお聞かせください。

 一番のテーマは、読者人口を増やすこと。小さな子に本を好きになってもら貰えるよう、イベントなども開催しています。書店での立ち読み推進施策にも取り組んでいるんですよ。また、デジタル関連の売り上げ伸び率は目を見張るものがありますが、実は業界としてはまだまだ未成熟。そのためデジタル人材を多く登用し、よりユーザーが使い見やすいコンテンツを実現して、売り上げを伸ばすことも目下の目標です。

読者イベントやモニター会を通じて読み手の顔をイメージ

―――編集者の一日の流れを教えて下さい。

 「部署が変われば別会社」と言われる総合出版社では、部署によって流れはかなり違います。また、1冊の本、1本の作品を作っていても、同じ業務をする日は一日としてありません。一日中机仕事をしている日もあれば、取材や打ち合わせで社にほとんどいない日もある。つまりは、モデルとなる一日の流れというものがないのです。今抱えている仕事をこなしつつ、次の号や次の単行本のことを見据えて仕事をするのも大事になりますね。

―――働く上で大事にしていることをお聞かせください。

井上翼さん(中央)と4人の筆者

 出版社はマスコミであり、メーカーでもあります。しかし実際読者の方と触れ合う機会はそう多くはないので、その機会を大事にしています。具体的には読者イベントやモニター会などです。いかに読者の方の顔をイメージし、面白い作品を作るか。それは全社員が仕事をする中で大事にしていることだと思います。

―――平均の勤続年数が長い理由はどこにあるでしょうか。

 やはり、この会社でしかできない仕事があるからだと思います。それだけ本作り、コンテンツ作りは面白いということですね。かつ、色々な本を作ることができるので、飽きないという点も挙げられると思います。

日常の出来事に疑問を持ち「なぜ?」を企画につなげる

―――入社に必要なスキルはありますか。

 絶対に必要、とされる資格やスキルはありませんし、求められる能力は部署によって異なります。ただひとつ共通しているのは、どんなジャンルであれ本や雑誌が好きだということ。そして、日常的に自身の周りで起こる出来事に疑問を持てることも重要です。「なぜ?」が企画につながることが多いので。

―――小学館で磨かれたスキルはありますか。

 メディアに触れたとき、面白いか面白くないかの判断だけで終わるのではなく、「何故これが面白いと感じさせるのか?」「何故これは面白くないと感じてしまうのか?」とその原因や要素にまで気を配るようになりましたね。現在の流行や風潮への感度を高め、それについての自分の意見や疑問をはっきり持つようになりました。

――――今後のキャリアプランについてお聞かせください。

 私はこれまでコミック局や子ども向けコンテンツの部署にいて、入社7年目の今年7月から人事・人材課の採用担当になりました。ですから今は、少しでも多くの人に本作りの魅力を伝え、小学館で働きたい!という人を増やしたいと思っています。と同時に、今年で30歳になるので、30代のうちに大ヒットまんがを作るという目標も持ち続けています。

―――最後に、学生に向けて一言お願いします。

 若さというのは素晴らしいものです。若いうちに自分の好きなものを見つけて、全力でそれに打ち込んで下さい。そうした経験をダイレクトに活かせるのが出版業界です。新しい感性を生かしながら、自分の「好き」を人に伝えるのがこの仕事の根幹ですから。「好き」以外にも自身が抱いた色々な感情を世間にぶつけることができる職業なので、もし興味があったら是非覗いてみてください。

(取材:星名彩由里、安部佑香、小宮千穂、大和田実沙)

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