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誰も行かない所へ行こう(2)洞窟の探検ってなんだ? ロマンです
~普段は体育館の外壁で地道に訓練

誰も行かない所へ行こう(2) 洞窟の探検ってなんだ? ロマンです~普段は体育館の外壁で地道に訓練
authored by 山口大学洞穴研究会

 こんにちは。山口大学洞穴研究会の金清です。私は洞窟に入ってばかりで学業の方が疎かになっている気がして内心ヒヤヒヤしている今日このごろですが、皆様はどうお過ごしでしょうか。

 今回のテーマは「洞窟の探検ってなんだ」です。私達は普段、洞窟に入って探検をしています。ですがよくよく考えてみると、まともな人間であれば「探検」なんて言葉はせいぜい小学生ぐらいまでしか使わない言葉ですし、この記事を読んでいる皆さんとはイメージに違いがあるかもしれません。今日はそのへんを書いていければなと思います。よろしくお願いします。

「松明持って財宝を探り当てる」イメージとは違った

 前回の記事ではざっくり「洞窟探検は、洞窟に入って出る事」と説明しました。まぁこの一言で大体説明できていると思うのですが、それで終わってしまうと記事があっと言う間に終わってしまうので詳しく説明していきますね。

秋吉台の竪穴。深さ57mありワイヤーラダーを確保をつけて降りて行く。洞口付近は光が差し込むため植物が生えている ©Takeshi Murase

 「洞窟探検」という言葉に皆さんはどんなイメージが浮かぶでしょうか。私が洞穴研究会に入る前の洞窟探検のイメージは「松明を持った探検家がトラップだらけの洞窟をくぐり抜けて財宝を探し当てる」みたいなイメージでした。大体、某映画のせいだと思います。ですが洞穴研究会の「洞窟探検」はこのイメージとは全く違うものです。もっと地味ですね。

 洞窟探検を説明するにあたって、軽くではありますが洞窟の種類について説明しなければなりません。私達が探検する洞窟は大きく分けて三種類に分類されます。一つは横穴、もう一つが竪穴、最後が竪横複合洞窟です。

 まず横穴というのは簡単に言うと「横に伸びている穴」です。基本的には特別な装備は必要なくヘルメットやヘッドライトなどの基本的な装備で探検が可能です。皆さんが考える洞窟のイメージは大体横穴に該当するかと思います。

 次に竪穴ですが、これは簡単にいうと「縦にぽっかり空いた穴」です。私達は、井戸に似ていることから「井戸穴」なんて言ったりします。このような穴に入るためには特別な装備が必要です。探検用の特別なロープや特製のワイヤーはしごなどですね。これらを揃えるには多くのお金が必要で部員たちの悩みの種です。高低差(縦に伸びている穴の長さ)は洞窟によってまちまちですが10m以下のものから60m、秋吉台で最長のもので90mあったりと意外と長かったりします。高所恐怖症の人はちょっと怖いかもしれないですね。お金と体力と技術が必要な洞窟です。

 竪横複合洞窟ですが、これはその名の通り「竪穴と横穴が一緒になっている穴」です。こういった洞窟は大物が多いですね。有名な秋芳洞も竪横複合洞窟です。

新歓合宿で7㍍のロッククライミング

秋吉台の深さ100mの竪穴。最深部に至る最後の竪穴から帰ってきている様子 ©Takeshi Murase

 さて前回の記事でも触れましたが、私達が洞窟探検をする目的は、探検能力向上にあります。横穴には横穴の探検技術が必要ですし、竪穴には竪穴の探検技術が必要です。洞穴研究会は今年で62年目ですが、その間絶えず引き継ぎ改良されてきた「秘伝のタレ」みたいな技術を継承し磨いていくわけです。

 先程横穴について竪穴と比べてかなり簡単そうに書きましたが実際はそういうわけではありません。横穴探検にはロッククライミングが必要です。もちろん、本物のクライマ-が登るような断崖絶壁を行くようなことではありませんが、数メートルのロッククライミングは日常茶飯事です。

 毎年、新入生に新人歓迎合宿で初めて入らせる洞窟として「寺山の穴」があります。ですがこれには罠というか少しビックリ要素がありまして、7㍍のロッククライミングがあります。ここでは意地の悪い上回生が、幼気な新入生が驚く様を見て悦に入るというのが毎年の恒例行事になっています。

秋吉台の横穴。人が写っているところから暗くなっている部分の底まで7mクライミングで降りて行く ©Takeshi Murase

 結局、新入生歓迎合宿で一番楽しんでいるのは新入生でなく上回生という歪んだ「歓迎」ですね。ロッククライミングそのものの難易度はさほど高くないですし、もちろん確保ロープ(いわゆる命綱、万が一落ちても安全です)をつけた上で登るのですが新入生には気持ち的になかなか厳しいものがあります。

 竪穴は竪穴でもちろん大変です。竪穴に入るためにはワイヤーはしごやロープを木や岩に設置して入っていくわけですが性質上命を預けるため、設置には訓練が必要不可欠です。さらに降りたり昇ったりしているときもなにか異常が起これば一人で対応しなくてはいけません。

 桜が散ってあとは夏を待つばかりといった5月中旬の山口大学。ここでは不思議な光景を見ることが出来ます。体育館の屋上にはしごやロープをくくりつけて、なにやらヘルメットをかぶった人がそれを登ったり降りたりしている光景です。聞くところによると多くの学生には工事だと思われているようです。実はこれは洞穴研究会が行っている訓練の一つ。竪穴に入ったときに求められる技術を模擬的に訓練しています。体育館の屋上ということでいろいろな人からの冷ややかな視線を感じますが、心を強くもって訓練しています。

人類未踏の地に足を踏み入れる感動

沖永良部島にある総延長3000mを越える横穴。入口から水路が続いており全身濡れながら進む ©Takeshi Murase

 これまでは洞窟探検の厳しい面しか触れませんでしたがもちろん楽しいというか素晴らしい面もあります。さらにこれが洞窟に入るさらなる目的でもあります。

 まず文献でしか見れないような美しい景色などを自分の目で見ることが出来ます。自分よりも圧倒的に大きい岩の前に立つといかに人間がちっぽけかわかります。「自然の壮大さ」なんて月並みな言葉でしか表現できないのがもどかしいですが、これは一度見ないと分からないと思います。

 さらに私達は一般の人も入れないようなところに行くわけですから鍾乳石もほとんど人の手が加えられておらず、自然のままの美しい姿で見ることができます。また専門的な知識があれば、それぞれの洞窟がどのように形成されたのかを推測することができるなどマニア的な楽しみもあります。

 前回の記事で触れたように私達の活動は主に調査活動です。ですが、そのためには知識や洞窟を見極める「目」も必要になってきます。こうしたものは普段から洞窟に入ってないと身につかないものですから積極的に洞窟探検をしようというふうになるわけです。

竪穴を降りている様子。降りる人以外にも命綱を操作する人、降りる人と命綱を操作する人との連絡係である連絡員が必要になる(洞窟では声が聞こえにくいため) ©Takeshi Murase

 またこれは極めて特殊な事例ですが、これまで発見されていなかった洞窟や、洞窟の一部分などいわゆる人類未踏の地に足を踏み入れることがあります。その一歩が人類最初の一歩になるわけです。ちょっと感動ものですよね。こういったロマン抜きでは洞窟探検は語れませんね。

 さてかなり荒っぽくではありますが洞窟探検についてまとめてみました。いろいろ言いたいことが多くてまとめるのが大変でした。情熱だけでも伝わればいいかなと思います。

 次回のテーマは洞窟の測量についてです。だんだん地味なテーマになっている感は否めませんが楽しい記事をかけるよう文章力を磨いておきます。文章は前回に引き続き洞穴研究会広報の金清がお送りしました。次回をお楽しみに!

山口大学洞穴研究会OBで洞窟写真家のTakeshi MuraseさんのSNSです。ご覧下さい。
Instagram https://www.instagram.com/mcavephoto/?hl=ja
Facebook https://www.facebook.com/takeshimurasephotography/

ベトナムの火山洞窟。東南アジア最大級の火山洞窟で光が差し込む洞口から洞床まで30m落ちている ©Takeshi Murase