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ジョブヨクって何?(上)生き辛さを感じる若者たちへ
学生と社会人が語り合う職業とライフスタイル

ジョブヨクって何?(上) 生き辛さを感じる若者たちへ学生と社会人が語り合う職業とライフスタイル
authored by 工藤紘生SoLaBo代表理事

 世代や立場の異なる学生と大人が、「働き方」と「生き方」を語り合う――。新しいカタチの生涯学習の仕組みとして、2013年に「ジョブヨク」と名付けられた新しい試みが始まった。年齢や社会的な経験の差にこだわらず、両者がフラットな立場で意見を言い合う。運営するのは大学生たち。ニュースに出てくるような社会問題や身近な話題を取り上げるなど、自由な発想で毎回異なるテーマを設定している。活動を発案し、縁の下で支えてきた工藤紘生さん(66)が、ジョブヨクの魅力を語る。前編は5年間の取り組みで得られた成果について振り返ってもらった。

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ジョブヨク開催の最後には必ず全体写真を撮影

 ジョブヨクが始まったのは2013年10月です。今月で5周年を迎えました。継続して開催してきたジョブヨクは、学生が自分たちで企画します。ジョブヨクとは「職欲」(職=ジョブ)からネーミングされた造語です。大人との対話を通じて、「働き方」「生き方」などについて考え、さまざまな職業や人生経験をもつ大人と、いろいろな大学に通う学生が共に学びあう「対話の場」を目指してスタートしました。2018年9月までに30以上の大学でトータル125回開催しています。延べ6000人を超える学生と大人が参加してきました。テーマは「職業とは何か」や「仕事の選び方」といったキャリア形成に関する内容から、「人との付き合い」「自信とは何か」など生き方につながるものまで幅広く採用しています。

恋愛について、真剣に向き合ってみた

 2017年10月21日(土)。横浜市立大学で【Amour! Liebe! Amore! ~恋ジョブ~】と題するジョブヨクが開かれました。「恋」について、熱い思いを持つ人も、冷めた人も、考える場にしようと思った学生が発案したテーマです。お互いを知り合うアイスブレイクのお題は「あなたの初恋相手は誰か?」で、会場には打ち解けた雰囲気が広がりました。そのあと、フランス語、ドイツ語、イタリア語で愛を意味する「Amour! Liebe! Amore!」という音頭で乾杯。「恋バナ」「男女のあるある」「横浜のデートプランを考えよう!」などのワークが進み、大学生が恋愛について大人と語り合う楽しい場となりました。世代や個人によって恋愛観が大きく異なることに、学生も大人もびっくりな恋愛談義でした。

幹事会では学生たちは楽しく計画を立てる

 ジョブヨクで何をテーマに取り上げるかは、毎月末29日に開催される学生たちの交流会で決めていきます。各大学のジョブヨク・チームが情報を共有することが目的のひとつです。さらに、交流会に集まる幹事は、ジョブヨクのミーティングで参加者のディスカッションが活発になるように周到に準備します。テーマに沿った質問に各人に答えてもらうクイズ方式や、いくつかワードを並べて人気投票をするといった仕掛けがその一例です。9月29日の交流会では関東と関西からメンバーが集まりました。津田塾、明星、上智、立教、東洋、横浜市立、早稲田、相模女子、立命館の9大学です。このときは学生幹部の4年生の一ノ瀬佑太君がもうすぐ引退するという話から彼の人柄の話で盛り上がりました。。美味しい鍋を頂きながら、ワイワイガヤガヤと深夜遅くまで会は続きました。

横並びの「就活」がもたらすマイナス面に目を向ける

 ここでジョブヨクを開くようになった経緯を振り返ろうと思います。ジョブヨクが生まれた背景には、生きることに行き詰まってしまう若い人の増加があります。2011年の平成23年の大学生の自殺は1029人で、調査を開始した1978年以来初めて1000人を超えてしまいました。目立つのは就職活動の失敗でした。学生が「自分には価値がない」と孤独感を深め追い込まれていったのはなぜでしょうか。私は高度経済成長期につくられた「お金のために働く」という考え方と、横並びを重視する「就活システム」にあると思います。

 しかしその「就活システム」にしばられて身動きの取れなくなった大学生は、大きな不安を抱えることになります。さらに大卒の3割の人が3年以内に、入社した会社を辞めてしまいます。希望を持って社会に出ても、多くは時をおかずに壁にぶち当たるのです。これは現在の「就活システム」の弊害であり、大学生との企業との互いのニーズに適したマッチングが行われているとは言い難いのです。

 このような厳しい就活環境の中で、人生において抱える大きな悩み(就活・人生・家庭・恋愛など)について相談できる大人がいないのではないか。そんな疑問が次第に強まりました。世の中にはさまざまな職業が存在します。そしていろいろな立場の大人との対話の場が身近にあれば、状況は大きく変わるはずなのです。交流を通じて、学生たちに自らの可能性を信じて、職業への視野を拡げて欲しいという思いが活動の原点です。5年間のジョブヨクの活動の継続によって、学生と大人の新しいコミュニティが出来ました。まさに困ったときに相談できる大人が大学生のまわりに存在しているのです。

 そこでの対話では、成功談ではありません。多様な働き方をしている大人の失敗の経験談こそが、学生にたくましく生きる術を教えてくれます。そして就職への視野、選択肢を広げ、人生への希望を発見することが容易になっていくのです。大人の失敗の経験こそが学生を育てるのである。ジョブヨクにはレギュラーのワークショップだけではなく、毎月29日の学生交流会及び大人の学び場そして夏合宿、クリスマスパーティ、4年生追い出し花見ジョブヨク等、様々な仲間と楽しめる企画がたくさんあり、目には見えないが、学生と大人の素敵な仲間が増え続けています。

初の海外開催、シンガポール・ジョブヨクではドタバタの連続!?

初めての海外開催はシンガポールで行った

 さて、こうして5年間続いてきたジョブヨクですが、最近、私の印象に強く残ったのは、この春に初めて海外で開いたシンガポール・ジョブヨクです。「海外で働くとは?」というテーマで日本から学生が約10名参加、シンガポールで働く大人を交えたジョブヨクでした。この9月には2回目のシンガポール・ジョブヨクも開催しています。このときは6泊7日のグローバル研修としました。新潟アルビレックス・シンガポールのマネージャー、難波修二郎さんの海外スポーツビジネスのセミナーにはショックを受けた学生もいたのではないでしょうか。「日本に留まり続けることは危険」という強烈なメッセージをもらったからです。また一風堂のマネージャー井尻正毅さんからは、ラーメンビジネスで「店は文化のショーケース」ぶれない哲学について解説していただき、その後に各人がオリジナルのラーメン作りを体験しました。

 もちろん、初めての海外開催ということでドタバタも......。詳細は省きますが、つたない英語での観光体験とかビックリ・ドッキリの連続クでした。出発当日の朝、羽田発のシンガポール行きの飛行機なのになぜか成田に集合したメンバーがいて、出だしから失敗談には事欠きませんでした。来年3月には3回目のシンガポールジョブヨクを開催するので、ぜひ参加をして下さい。

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 ジョブヨクはジョブヨクのワークショップを「世代を超えた人と人との繋がりを生み出す場」と位置付けています。これは知らない人同士、学生と大人がジョブヨクのワークショップを通じて様々な価値観・多様性を共有することで、これまで関わりを持たなかった学生と大人が仲間となる機会をいつでも提供しています。あなたもジョブヨクに参加してみませんか?あなたの世界が変わります。

 次回は、ジョブヨクをより魅力的にしていくための取り組みと今後の課題をについてお話しします。