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転職時代のキャリア形成論(3)知らないと損する!転職活動リテラシー
東大生が悩むキャリアの行方

転職時代のキャリア形成論(3) 知らないと損する!転職活動リテラシー東大生が悩むキャリアの行方

 夢を叶えるためのキャリア作りを伝授した1冊の本、『未来をつくるキャリアの授業』が2017年に東京大学の授業で教科書に採用されました。著者である渡辺秀和氏は、コンコードエグゼクティブグループの代表取締役社長CEOを務める転職コンサルタントの第一人者です。上手にキャリアを重ねていくためには、どんな心構えが必要なのでしょうか――。若い世代に向けて、同氏のインタビューを連載でお届けします。1回目の「勉強してきたことが役に立たない!?」、2回目の「エッセンスを分析すれば『好き』を仕事にできる」に続き、最終回は「転職活動を有利に進めるためのキャリア設計」がテーマです。

◇   ◇   ◇

――前回のインタビューでは、自分の「好き」を知って仕事を選ぶ方法を伺いました。今、就活中の学生は、「好き・嫌い分析」で自分の好きな仕事を目指せるのでよいですね。しかし、社会人として働きはじめた後で、仕事が合わないと気づいた場合は、どうすればよいのでしょうか。

 現職が自分の望む仕事とは異なる、あるいは、就活中だけど今の経験では望む仕事にすぐに就くことができないというケースもあります。いずれの場合も、転職することによってキャリア形成していくことになるでしょう。そのためには、キャリア設計のセオリーを知っておくことが大切です。

転職活動リテラシーが必要不可欠な時代

 現代は、日本を代表するような大企業でもリストラされたり、外資系企業に買収されたりすることも珍しくない時代です。今は転職するつもりがなくても、転職市場の構造やどのようなキャリアを形成した人材が評価されるのかを知っておくことは必要不可欠でしょう。実際、「すぐに転職するつもりはないけれど、どういうキャリアを積むべきかを知りたくて」とご相談にいらっしゃる方がとても増えています。

――転職にも市場があるのですね。市場と聞くと株式市場のイメージがあります。

東大で開いたキャリアデザインの授業風景

 まさに株式市場に近いイメージです。転職市場とは、端的に言えば「転職したい人」と「人材を求める企業」がマッチングされる場です。

 「経理のスキルを活用して転職したい」という人がいたとします。すると、経理の即戦力人材を求めている企業が「採用を検討したい」と手を挙げてきます。そこで双方の期待する仕事内容、ポジション、年収などの条件が折り合えば、無事に転職することができます。その際、手を挙げてくる会社が一社とは限りません。是が非でも採用したいという企業が出てくれば、他社よりもよい条件を提示してくるでしょう。こうなると、まさに株式市場のように人気の人材にはどんどん高値がつき、多くの企業で争奪戦が行われるのです。

 以前は転職というとネガティブなイメージもありましたが、転職市場が発達した現代では「優秀だからこそ、転職することができる」とポジティブに捉えられるようになりました。転職市場で高い評価を得られれば、やりたい仕事を選べて、条件のよい会社に移ることもできます。万が一、会社が倒産するようなことになっても大丈夫です。もちろん、転職を繰り返してばかりでは評価されません。所属する企業で十分に価値を生み出し、組織に貢献することは前提です。

――営業職から人事職へ転身したいというような、今の仕事とは違う仕事へ「キャリアチェンジ」をしたい場合はどうすればよいのでしょうか。新卒とは異なり、転職では即戦力が求められるというイメージがあります。

 一般的にネクストキャリアは、それまでの職務経験に影響を受けます。人事職の採用では人事関連の業務経験が求められるといった具合です。そのため、自分がやりたい仕事にキャリアチェンジするためには、すでにその仕事の経験を持っている必要があるという問題が生じるのです。

「キャリアの階段」で夢を実現する

――確かにそれでは困ります。どうすればいいのでしょうか。

 この問題を解決するために私たちが提唱しているのが、「キャリアの階段」をつくるというキャリア設計法です。目指すゴールへまっすぐ辿り着くことが難しい場合には、中間地点となる「キャリアの階段」をつくることで、実現可能性が飛躍的に高くなります。

 先ほどの営業職から人事職へ転身したいという場合であれば、人事部門の中の採用職を挟むのが一つの方法です。採用職は、候補者に自社の魅力を伝えてファンになってもらうという側面もあり、営業職と似た要素を持ちます。そのため、この仕事の特性をよく理解している企業は、人事出身者だけでなく営業出身者も採用していることがあります。このように採用職をキャリアの階段として挟めば、比較的スムーズに人事キャリアへシフトしていける可能性が高いでしょう。

 ただ、読者の方の中には、もっとダイナミックなキャリアチェンジをしたいという方もいらっしゃるかも知れません。そのような方にお薦めなのが、キャリアの階段として「ハブ・キャリア」を活用する方法です。「ハブ・キャリア」とは、幅広い業界・職種から入ることが可能で、かつ、幅広い業界・職種へ転出することが可能な仕事です。

「ハブ・キャリア」で業界・職種を飛び越える

――そんな便利なキャリアがあるのですか。

 よく知られたハブ・キャリアの一つが、戦略コンサルタントです。出身大学名は重視されますが、コンサル未経験者でも入社可能ですし、MBAを取得していなくても問題ありません。一方で、ネクストキャリアは、様々な業界の経営企画・マーケティング・M&A部門さらには投資ファンドなど、幅広い選択肢が広がります。

 例えば、「保険会社のシステムエンジニア」→「戦略コンサルタント」→「製造業の経営幹部」というような転身も可能です。戦略コンサルタントを挟むことで、業界も職種も見事に変わっています。もちろん、経理や法務などへの転身には役立ちませんが、いわゆる経営者人材と言われるようなキャリアには非常に役立ちます。

 なお、ハブ・キャリアは戦略コンサルタント以外にも、さまざまな職種があります。最近では、インターネット企業の事業開発・マーケティング部門も、比較的受け入れの幅が広く、ハブ・キャリアの一つとして脚光を浴びつつあります。

「市況」と「年齢」を味方につける

――転職するのによいタイミングというものはあるのでしょうか。

 皆さんの置かれている状況は千差万別です。社内の立場や家庭のご事情も様々でしょう。ぜひそれらを大切にして、お考え頂きたいと思います。ただ、「いつ転職するのか」という判断は、キャリア形成に非常に大きな影響を与えますので、基本的な考え方は抑えておいて頂いた方がよいと思います。

 まず、注視しておいた方が良いのが「市況」です。実は、投資銀行やPEファンドなどの超人気企業も、時期によって入社難易度は大きく異なっています。同じ候補者でも、今年受ければあっさり落ちるけど、来年には問題なく受かるということも起こりえます。

 リーマンショック後の冷え切った市況時、ご相談頂いたコンサル未経験者の方へ「2年くらい待った方がよいです」とアドバイスさせて頂いていました。実際、市況が回復してきた2~3年後にコンサルへの転身を見事に実現され、活躍されている方がたくさんいます。一方、今はご存じのように圧倒的な売り手市場です。このようなタイミングはキャリアを飛躍させるチャンスと言えるでしょう。

――年齢も影響がありそうです。やはり若い方が有利なのでしょうか。

 その通りです。転職時期を考える上で「年齢」との兼ね合いも大切です。特に、新しい領域へキャリアチェンジしたいと考えているのであれば、若いうちに転職した方が基本的には有利です。年齢があがるほど、即戦力人材であること、短期間で成果を出すことが求められるようになります。先ほど、戦略コンサルが未経験者を採用しているという話をしましたが、こちらも35歳くらいまでの応募が現実的なラインとなっています。

 「好き・嫌い分析」を通してご自身の価値観を把握し、このような採用企業や転職市場の実態を踏まえた上で、キャリア設計を行っていただければと思います。

 (聞き手 日本経済新聞出版社編集部 雨宮百子)

1回目の「勉強してきたことが役に立たない!?」、連載2回目の「エッセンスを分析すれば『好き』を仕事にできる」も合わせてお読みください。

渡辺秀和(わたなべ・ひでかず)

 一橋大学商学部卒。「ビジネスリーダーのキャリア支援を通じて、真に豊かな社会をつくりたい」との想いから、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立し、代表取締役社長CEOに就任する。戦略コンサルタント、外資系エグゼクティブ、起業家などへ1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。東京大学でキャリアデザインの正規科目「未来をつくるキャリアの授業」をコースディレクターとして開講。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社刊)、『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社刊)は、同授業の教科書に指定される。

未来をつくるキャリアの授業 最短距離で希望の人生を手に入れる!

著者 : 渡辺 秀和
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 842円 (税込み)

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