一面のみかん畑を訪ねて ~佐賀・太良の若手農家さんとレシピ開発
食べる幸せ 広げたい!(4)
爽やかな海風と太陽の光を受けてきらめくのは、どこまでも続く青い海と鮮やかな緑色の果実―――。ここは、普段私たちが通うお茶の水女子大学から離れた場所、佐賀県太良町。私たちOchasはここで地域創生活動のお手伝いをさせて頂いているのですが、キーワードは自然の恵みと農家さんの愛情が凝縮された「みかん」・・・!?
東京から1000km、東大みかん愛好会と合同プロジェクト
こんにちは!お茶の水女子大学公認サークルOchasです。今回ご紹介するのは「太良みかんプロジェクト」という、佐賀県太良町のみかん生産者の集まりである「太良シトラス会」、東京大学の「東大みかん愛好会」、佐賀県有田町の「佐賀県立有田工業高校」と合同で行っている活動です。「この団体は何をするの? みかんを食べるの? ただみかんが好きな人の集まり?」―――きっと、初めて名前を聞いた方の多くはそう思われますよね。確かにみかんが好きな人の集まりではありますが(笑)、その活動は食べるだけ、みかんについて知るだけ...のように単純なものではありません。
太良町では、古くからみかんの栽培が盛んに行われてきました。しかし、近年はみかんをはじめとする柑橘類の消費量が減ったり、生産者の高齢化による労力不足に伴う廃園及び後継者不足に直面したりするなどの原因から、みかんの生産量および消費量は年々減少する一方です。太良町のみかんも例外でなく厳しい状況に置かれています。
その風潮を少しでも打破するために、「太良みかんのPRと消費拡大による地域の活性化」を目的として"太良みかんのブランド化"に向けた取り組みが始まりました。私たちOchasは、「食の魅力を広め、地域貢献をする」という姿勢に共感し、一昨年から太良シトラス会・東大みかん愛好会・有田工業高校と合同でプロジェクトに取り組んでいます。みかんが好きだからこそ、太良みかんのブランドを普及させ、太良の美しい自然から生まれる美味しいみかんを守っていくために何ができるかを日々模索しています。
同時に、みかんというツールを通して、太良町との交流や、みかんの商品開発・イベントへの参加などの太良町の魅力を広める活動を行っています。今回の記事では、その一部である太良町合宿と、みかんを使ったレシピ開発の様子についてレポートしていきます!
合宿の地は、地域創生の目的地である佐賀県太良町。温暖な気候や勾配のある地形、そして豊かな水に恵まれたこの地では、甘さと程よい酸味が特徴の上質なみかんやたくさんの種類の柑橘類が、ほぼ一年を通じて生産されています。東京から離れることおよそ1000kmの長い旅路を終えて降り立った地では、青空に映える緑が目に飛び込んできて、息を吸い込むと、海の香りをのせた空気が身体を一掃してくれたような新鮮な気持ちになります。
やはり現地に来たからには、農家さんの元に行って実物を見たい...ということで、Ochas一行はみかん畑に。そこで私たちを待っていたのは、辺り一面たわわに実る大量の青みかん! 青空とのコントラストがとても綺麗です。自分の目で見ると、みかんは自然・人間・みかんが共存して、やっと私たちの元に商品として届けられるのだと再確認。Ochasが食のことを伝える立場であるからには、何気なく食べているみかんでも必ず誰かの手と豊かな自然によって育てられているという背景を忘れてはいけないですね。
女子大生ならではの観点で食べ方考案
みかんを実際に見たところで、合宿の大きな目的であるレシピ開発に取り掛かります。みかんの甘みと酸味・柑橘類独特の爽やかな香りが生かせる料理は何だろう...と、一同知恵と経験をフル回転させて案を出し、レシピに反映していきます。特に、みかんの若者離れが顕著な現代においてみかんの魅力を広めていくためには、私たち女子大生ならではの観点で食べ方を考案していくことが大切だと考えます。
こうした取り組みの一環で、今までに商品化されたのが「蜜柑と紅茶のオトナジャム」。これは、「太良シトラス会」とOchasが合同で開発したものです。紅茶の葉が醸し出す優雅な香りとリキュールの風味が効いており、さらにみかんピールの苦味で大人っぽい味になっています。若い層にも興味を持ってもらえるよう、ラベルも女性に好まれるような外観に。このジャムは、太良にある道の駅や、お茶の水女子大学の文化祭などで実際に販売されています。
このジャムも使いながら、合宿中に作成したレシピを後日試作してみました! 間食やデザートとして使われるイメージが強いみかんですが、ラインナップからもわかるように、生ハムやチーズなどの塩気が強いものにも合うのです! 料理にうまくプラスすると味にアクセントが付き、見た目も華やかになるので、料理が格上げされたような気がしますよね(笑)。また、みかんと同じ柑橘類である柚子やレモンに比較的甘さの強いみかんを代用すれば、酸味が少なくマイルドな仕上がりになります。また、このジャムはパウンドケーキなどのスイーツにもピッタリです。11月にお茶の水女子大学で開催される文化祭ではスイーツのレシピ付きで販売しますので、機会があったらぜひ皆さんも試してみてくださいね。
美しい景色と豊かな食環境...未来に伝えていきたい
この合宿では、みかんのことをもっと深く実体験として知るためにジュースの試飲もさせて頂きました。出して頂いたのは数種類のみかんジュースですが...こんなにたくさんの種類のジュースを準備して頂きました。それぞれのジュースはみかんの品種が違うのだそうですが、どれも似たような味なのでは...?と思ってしまいます。確かめるように一口ずつ飲んでみると...「あれ......全然違う!」。
実際に飲み比べると、風味や甘みと酸味のバランス、まろやかさや爽やかさなど、品種によって味わいが様々なのがわかります。たかが品種と思っていましたが、侮るなかれ! 人間にそれぞれ個性があるように、みかんにも個性があるのです。味の違いに驚き、感想を言い合って盛り上がるOchas一同。お米のブランドは耳にすることが多いけれど、みかんについては品種まで気にしたことがあったかな...?と新たな気付きを得ながら、ニーズや用途、嗜好に合わせて多様な品種が生み出されていることを体感できました。なじみ深いものと思っていたみかんですが、まだまだ知らないことが多いようです! 自分の好みに合わせて、お気に入りの品種を見つけてみるのも楽しいかもしれませんね。
みかん畑を後にしたOchas一行は、太良町の観光もしてきました。身がぎっしり詰まった大きな蟹やエビ、その魚介類を育てた海でのクルージング、海に佇む神聖な雰囲気の鳥居、そしてお世話になった人たちの温かさ...。たくさんの魅力に触れて感じたのは、何度でも太良町に足を運びたくなるほどの素晴らしい体験ばかりだということ。地方の過疎化が進んでいる現代ですが、美しい景色と豊かな食環境、地域の人たちの生活を肌で感じ、こうした魅力を未来に伝えていかなくてはならないと思いました。私たち若い世代が地域活性化に興味を持ち、地方の良いところ、および抱えている課題について考える機会を大切にしたいものです。
この合宿で、たった一個のみかんの裏側にも、太良町の自然、そして人々が持つ地元への愛が込められていることを再確認できました。私たちOchasは、今後も太良町と皆さんのお互いがみかんを食べることで幸せになれるよう、活動の輪を広げていきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました!
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