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この秋「就活本」ならこれを読もう!
専門家が大学3年生に薦める9冊

この秋「就活本」ならこれを読もう!専門家が大学3年生に薦める9冊

 読書の秋は、大学3年生にとって就職活動への準備が本格化する時期でもあります。キャリア支援、大学教育と新卒採用に詳しいる3人の専門家に、「就活学生に読んで欲しい本」を3冊づつ挙げていただきました。9本のブックリストの中から気になる本を実際に手にとって、働くということについてじっくりと考えてみませんか?

【菊入みゆきさんの3冊】

1分間菜根譚 齋藤孝監修 (SBクリエイティブ)

 就活で必要な自己アピールネタが詰まった本です。就活では様々な自己アピールが必要です。自己アピールの王道は、「大学で〇〇の経験をし、その結果◇◇を学びました」という、「経験+学び」のセットです。「入社したら学びを活かして□□します」と言えるからです。しかも、セットは1つだけではなく、複数のパターンが必要です。

 「1分間菜根譚」は、見開き2ページに1つの処世訓を取り上げ、やさしい言葉で説明しています。「菜根譚」は中国明代の洪自誠による書物です。1つ1つが心に残る内容ですが、ページをめくるうちに、「これは自分にあてはまる」というものが出てきます。例えば、「忍耐を重ねてこそ念願はかなう」という項目に、思い当たる人は多いでしょう。

 思い当たるできごとを「経験」として文章にしてみましょう。そして、「学び」として、「忍耐を・・・」の部分を自分の言葉にアレンジします。自己アピールセットの原型が出来上がります。ページをめくるうちに、自分にも様々な「経験+学び」があることに気づく1冊です。

知識ゼロでも今すぐ使える! 行動経済学見るだけノート 真壁昭夫著 (宝島社)

 行動経済学という新しい学問の領域が関心を集めています。この学問を応用して、自己分析やニュースの分析をしてみましょう。就活中は様々な判断が求められます。どの会社の説明会に行くか、どの会社が自分に合うのかなど、ふだん考えたことのない問題にも判断を下さなければなりません。

 人の行動を心理学と経済学に基づいて解析する行動経済学は、自分の判断が正しいか否かを見直すヒントをくれます。

 例えば、最新の情報が意思決定を左右するという説明を読むと、「A社がいいと思うのは、さっき聞いたばかりの情報にとらわれているのかも」と気づくことができます。

 また、初頭効果のページを読むと、人と会う時の第一印象の重要性が理解でき、面接や先輩訪問の時の心がまえが変わります。私たちが、なぜ非合理的な行動をしてしまうのかを解き明かしてくれる行動経済学について知ることで、ものの見方が変わり、就活中の行動も変わります。

究極のマインドフルネス 気づきのトレーニング 自信を取り戻し 最高の自分を引き出す方法
小林弘幸著 (徳間書店)

 「今の自分」の軸を持ちましょう。就活をしていると、今まで会ったことのない人に会い、行ったことのない場所に行き、膨大な情報に触れます。情報に溺れて、どうすればいいかわからなくなったり、気持ちの面でも舞い上がったり落ち込んだり乱高下を繰り返します。

 気持ちを落ち着けること、地に足を付けることが、実は就活のキーワードです。マインドフルネスは「今の自分」を意識し、ストレスを軽減したり集中力を高めたりするための1つの方法です。

 この本は、わかりやすく、且つ説教くさくなく、日常生活の中で行えるマインドフルネスのやり方を教えてくれます。できれば、就活が本格的に始まる前に、身につけておくとよいと思います。もちろん、就活本番時期にも使えます。ちょっとした待ち時間に行う呼吸法なども載っているので面接の直前などに活用できます。

(菊入みゆき:明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザインワーク・モチベーション研究所長)

【石渡嶺司さんの3冊】

コミュ障は治らなくても大丈夫 コミックエッセイでわかるマイナスからの会話力
吉田尚記、水谷緑著 (KADOKAWA)

 ニッポン放送の人気アナウンサーの体験が元となったエッセイ漫画です。著者による同様の内容の書籍としては『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)があります。そちらでもいいのですが、こちらは漫画である分、すっと入っていきます。

タイトルにある「コミュ障」は読者を選ぶかもしれません。が、著者と同じように会話に悩むのは誰でもある話です。実際、著者は新入社員歓迎会で滑り、その後の番組出演でも滑り、しまいには「つまんねーやつ」「日本一からみづらいアナウンサー」とまで言われてしまいます。

 その著者が第3章の実践レクチャー(うち1人は就活でうまく話せない学生)では参加者に対して「(聞いてみたいことに対して)タブーなんてそんなにないよ」と話します。

 では著者の会話力はなぜ劇的に変わっていったのでしょうか。そのあたり、同書を読めばわかりますし、面接やグループディスカッションなどでも役立つでしょう。

キミのお金はどこに消えるのか 井上純一著 (角川書店)

 「中国嫁日記」著者による経済の解説本です。なお、飯田泰之・明治大学准教授(経済学部)が監修についています。

「医療費が増えれば日本の財政が圧迫され潰れる → ウソ/むしろ社会福祉も含めて国の負担が増える方が健全」

「借金する人が増える分だけお金が生まれる→ホント/信用創造」

 ここに紹介したように、お金にまつわる意外なエピソードについてキャラクターを駆使しつつ解説しています。

 お金や経済と言えば難しいイメージを持つ学生が多数います。これは社会人も同じ。その点、同書を読めばお金・経済への見方が大きく変わることでしょう。

地元で広告代理店の営業女子はじめました えりた著 (イースト・プレス)

 著者の求人広告会社の体験をもとにしたエッセイ漫画です。営業と言えば女子学生だけでなく男子学生も押し売りのようなイメージというか偏見を強く持っています。このイメージから、営業は務まらない、と勝手に自己分析して就活を進める就活生は少なく在りません。しかし、どのような企業であれ、どのような部署であれ、職種であれ、営業的な側面は必ずあります。営業という側面を無視して仕事をすることはほぼ不可能でしょう。

 本書では、最初は全くと言っていいほど営業ができなかった著者が成長していく様を描いています。罵声を浴びせるほどだった顧客がなぜ著者を信用するようになったのか、同書を読めば営業の面白さ、創造性に気づくことでしょう。なお、同書の続編である『社会人4年目、転職考えはじめました』も合わせて読むと、仕事の厳しさや人間関係の難しさなども合わせて学べます。

 ここで挙げた3冊は直接的に就活のノウハウを伝えているわけではありません。その点で意外に思う方もいるでしょうし、学生によってはもっとノウハウを期待する方もいるでしょう。ノウハウはノウハウで大事です。一方、就活は単なる通過点であり、社会人になってからの生活の方がより長く、より重要です。

 取り上げた3冊のエッセイ漫画はコミュニケーション論、お金・経済論、営業論をそれぞれまとめたものです。就活にも間接的には役立ちますし、まして社会人になってからの生活をより豊かにするに違いありません。

(石渡嶺司:大学ジャーナリスト)

【渡辺茂晃さんの3冊】

業界・企業研究にも使える 図解でわかる時事重要テーマ100 2020年度版
日経HR編集部編著 (日経HR)

  「宣伝か!」と突っ込まれそうですが、自分の部下が一生懸命作った本なのでお許しください。で、どんな本かと言いますと、「北朝鮮問題」や「働き方改革」「仮想通貨」「AI(人工知能)」などの時事関連テーマを文章控えめ、図やイラストを多く使って解説した本です。

 就活生の皆さんは筆記試験対策としてWEBテストやテストセンターの準備はしていますが、時事問題対策をしている人は少数です。ところが、日経HRが現4年生に実施した調査ではSPIのテストセンター、SPIのWEBテストに次いで多かったのが企業オリジナル問題。そして、企業オリジナル問題には時事問題が多く含まれることが分かっているのです。

 本書では「国際社会」「国内政治・行政」「経済」「業界・企業」「労働・雇用」「テクノロジー」など全9章で構成し、各章の最後には穴埋め問題の「確認ドリル」も掲載しています。筆記試験対策はもちろん、小論文、グループワーク・グループディスカッションなどにも役立つでしょう。これまで新聞を読んでこなかった人には、効率良く時事問題を習得するのに役立ちます。

1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術
伊藤羊一著 (SBクリエイティブ)

 プレゼンの上手い経営者と言われる孫正義氏が絶賛したという著者のプレゼン技術。そのテクニックが公開されているのがこの本です。1分間で自分の伝えたいことを相手に理解させ、行動に移してもらうためのテクニックが書いてあります。

 就活生の失敗で多いのが、面接でダラダラと話して結局何を言いたいのか分からないで終わること。ガクチカでのせっかくの良いネタも話し方で台無しになることもあります。話を簡潔にまとめる考え方、技術を身につけたら、安心して面接に臨むことができるでしょう。

不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか
高橋克徳、河合太介、永田稔、渡部幹著 (講談社現代新書)

 内定者が就職先を決めた理由を聞くと、「社員の人柄」が多く挙がります。素敵な社員に出会って心を動かされるのはいいのですが、それが全てではないことを理解した上で社会に出てほしいのです。本書に出てくるような"不機嫌な職場"は、実は多くの会社に存在する職場なのです。就活では会社のきれいな部分ばかりを見せられますが、そうではない部分があることも知っておいたほうがいいかと思います。

(渡辺茂晃:日経HRコンテンツ事業部長・桜美林大学大学院非常勤講師)

学生と一緒に「お薦め本」を開く菊入さん(右)