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トビタった!私たち(19)宇宙への夢を馳せフランスへ
~科学と技術をもって未来に

トビタった!私たち(19) 宇宙への夢を馳せフランスへ~科学と技術をもって未来に
authored by トビタテ!留学JAPAN

 初めまして、同志社大学理工学研究科機械工学専攻修士1年生の井上拓也(いのうえ・たくや)と申します。現在の大学院での専門は伝熱工学ですが、留学先のフランスのエコールサントラル リールでは約1年8ヶ月の間、工学をはじめとし、経営学や経済学、法律に至るまで幅広く学び、またインターンシップ先のドイツのマックス・プランク宇宙物理学研究所では、4ヶ月間、宇宙物理学に関する研究を行っていました。そして、これらの事を成し遂げることができたのが、2年間のダブルディグリー留学でした。

世界で活躍する宇宙開発エンジニアになる為に

 まず、初めに留学への経緯を話します。元々、将来世界で活躍する宇宙開発エンジニアになる事が大学に入った頃の夢でした。大学に入り半年が過ぎ、いつものように大学のジムでトレーニングしようと着替えてたら、そこに外国人留学生が現れ、日本の学生と英語で楽しく話しているところを何の気なしに見ていました。その時、まるで自分に雷が落ちたかのようにビビっときました。その時に何故か、世界に出なければならない使命感に襲われて、海外を目指すようになりました。特に海外で何がしたいとかはなく第六感みたいなものでした。

 その頃から自分分析を始めました。自分は何の為にここにいるのか、何がしたいのか、具体的に考えるようになりました。将来世界で活躍する宇宙開発エンジニアになるには何をすれば良いのか、その問いに対する自分の答えがこの留学でした。宇宙開発エンジニア、その中にもちろん宇宙飛行士という存在があります。宇宙飛行士は専門ができるだけではなれません。宇宙飛行士に求められることは幅広い知識を含めたジェネラリストになる事です。そして、それは宇宙飛行士だけではなく、現在の宇宙開発に求められている人材でもあります。

プロジェクト発足時にメンバーと

 フランスでは、専門を持たず、幅広く学ぶという姿勢が取られており、いまの自分に必要な能力を取得できると思い留学先として選びました。また、その学校では、1年に一度インターンシップを数ヶ月する機会が与えられることもあり、その機会を使い、マックスプランク宇宙物理学研究所で研究することにしました。

 ジェネラリストとしての教育を終えて必要だったのが、専門性でした。宇宙物理学は自分を宇宙へと導いた故ホーキング氏の専門で、いつか本気で勉強したいと思っていて、ようやくその機会をものにする事ができました。大学に入った頃はエンジニアとしての未来を考えていましたが、この留学を通して、物理学者として研究者としての将来も考えるようになりました。

フランスで立ちはだかった能力の壁

帰国前に凱旋門前にて

 必死に勉強をして、フランス留学への切符を手にした私でしたが、そこでも辛い日々が待ち受けていました。辛かったこととして言語の壁と本当は言いたいですけど、私の前に立ちはだかっていた大きな壁は正直な話、能力の壁でした。同世代の世界の人々の能力を目の当たりにして、かなりショックを受けました。自分も勉強をかなりしてきたつもりでしたが、それよりもはるかに彼らは勉強していました。

 言語の問題としてももちろんかなり辛い思いをしました。留学先の学校では、3セメスターに及ぶプロジェクトをする事になっており、数人のグループを組んで行いました。自分以外は全員フランス人で、プロジェクトが始まった頃は彼らの言っている事が理解できず、会話に入れなかったり、多少理解できたとしても、説明する事ができないといった状況に置かれました。そこで、私は言葉が通じないなら、行動で示さなければと思い、積極的にプロジェクトに参加したり家で勉強したりしました。それが、みんなの心に通じてか、次第に心を開いてくれるようになりました。

インターン先のドイツで宇宙物理学の魅力知る

 ドイツのマックス・プランク研究所でのインターンでも、色々な人と出会うことができました。自分を受け入れてくれた人は日本人で、宇宙の謎の解明に貢献した宇宙物理学研究の第一人者でした。今まで産業界の人との出会いは色々ありましたが、その人と出会い、研究の世界の魅力を知ることができました。そんな人の元で自分のやりたかった宇宙物理学の研究ができるのは、とても光栄なことでした。研究所での生活中は、世界で活躍する日本人との出会いがあり、刺激のある生活でした。

 その傍ら、フランスのバカンス期間や休日の時には世界中色んな所を旅しました。留学中に30カ国近く周ることができ、その旅行からも色々なことを学ぶことができました。今回の留学は修行と冒険の旅がテーマだったので、上手く両立することができました。

 今回の2年間のダブルディグリー留学ができたのは、トビタテの奨学金ありきでした。留学の中で出会った友達だけではなく、事前研修や壮行会で出逢った友達と留学先で出会い、泊めてもらったり、一緒に旅行したりと、改めてトビタテコミュニティの良さを感じる事もできました。また、留学を2年間続けられたのは、トビタテの研修を通じて、自分分析や留学の目的、目標をしっかりと抑える事が出来、強い意志を持ったまま留学が出来たからです。

フランスの学校でともに過ごした同学年生

留学で得た3つの軸「気付き」「積極性」「行動」

 私がこの2年間の留学を通して得たものは3つあります。それは気付き、積極性、行動です。留学先では、今まで知ってる情報、すなわち教科書から得られた情報やメディアから得られる情報を照らし合わせることになります。何が言いたいかと言いますと、自分の信じてきた事が全然違うことや、やっぱりそうなんだと思うときがたくさんあります。百聞は一見にしかずと言いますが、現地で現物を前にして五感を使って気付く事がたくさんあります。そして、それらから私たちは新しい情報にアップデートされます。

 留学中に得たこととして、一番に大きかったのは、積極性でした。現地の学校の授業を受け、それを感じました。周りの学生は、まさに積極的に質問をし、自分の意見を伝えていました。最初はかなり驚きましたが、授業体系に慣れてくる内に自然に質問や意見を積極的に投げかけれるようになっていました。またプロジェクトを通して、積極的に自分から行動できるようになりました。

 私は留学1年目にこれらの事を学び、習得した事で2年目にそれらを実践する事ができました。1年の留学では習得して終わりになってたかもしれません。2年間の留学を通して、学問としての知識を得るだけではなく、上記の3つを経験から得る事ができました。

 留学に行くまでは、一切勉強してこなかった宇宙物理学の分野を今回の留学で勉強する事ができ、将来の可能性を広げる事ができました。今は、他の科学者よりも技術的な事ができ、また他の技術者よりも科学的な考えができるジェネラリストでありスペシャリストになる事を目指しています。最終的にどちらかの道を選ぶ時が来るかも知れませんが、そのときも、今までの自分の学問的背景や経験を活かしていきたいと考えています。

バカンス期間にNASA JPLに訪問

 この留学を通して、一番印象的なエピソードは、NASA JPL(ジェット推進研究所)で働いている日本人と話す為、フランスから12時間かけてロサンゼルスまで行った事です。きっかけは、将来NASAで働いてみたいというところから始まり、留学中は何故か魔法のように行ってしまえば良いじゃないかと思い決行することにしました。

 どうやったか。それはツイッターのDMで、あるNASA JPLで働いている日本人に駄目元でメッセージを送ってみました。その時メッセージとして自分の思いと今までの経験を伝えました。メッセージが返ってくるとは思いませんでしたが、何とメッセージが返ってきて、NASA JPLで話す機会を下さっただけでなくNASAの中を案内までして下さいました。本当に貴重な経験が出来、可能性が0ではない限り、何事にも挑戦、積極的に行動する価値を感じました。この時、留学は人のマインドを大きく変えるものだとも感じました。これは一年目で習得した積極的な行動力を実際に実践した例です。

プロフィール
井上拓也(いのうえ・たくや) 1995年生まれ、兵庫県立星陵高等学校卒。同志社大学理工学研究科機械工学専攻所属の修士1年生で、現在エコールサントラル リールとのダブルディグリー中。同志社大学では主に伝熱についての研究をしている。その傍ら、マックスプランクで行っていた宇宙物理の研究も続けている。趣味はランニング、休日は美術館や博物館に行き、リフレッシュしている