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映像業界ってどんな仕事があるの?
~映画と広告が融合 ブランデッドムービーの世界

映像業界ってどんな仕事があるの?~映画と広告が融合 ブランデッドムービーの世界

 国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)で広報の仕事をしている高橋秀幸と申します。大学生のみなさんが今後のキャリア形成で「映像の仕事をしたい」と考えたとき、まず思いつくのはテレビ局や番組制作会社かもしれません。しかし、映像にかかわる仕事は多岐にわたります。今回は、企業に新しいプロモーションの手法として「ショートフィルム」の製作を提案し、出来上がった作品をどう効果的に発表・発信していくかをプロデュースする映画祭の立場から、「映像業界ってこんな仕事もあるんだ」と発見していただけるレポートをお届けします。

テレビCMとは異なる新たなプロモーション手法

 SSFF & ASIAでは、企業と組んで、商品の魅力やブランドのメッセージを伝えるショートフィルムを「ブランデッドムービー」として製作、発表する事業を展開しています。ここでいうショートフィルムとは、数分~15分程度とテレビCMよりも尺が長く、テレビを対象媒体としていない動画で、ストーリー性のある映画的な作品を指しています。

 私たちの映画祭では、2016年からブランデッドムービーを特集する部門「BRANDEDSHORTS」を立ち上げました。「ブランデッドムービー」は、ブランディングを目的として製作されたショートフィルムで、現在、企業からの注目が高まりつつある新たなマーケティング手法です。「ストーリー」を見せることで、生活者が共感したり楽しんだりする価値を創りながら、企業・ブランドの想いや意志の伝達を両立し表現できるとされています。

ネスレ日本のブランデッドムービー「What is REAL?」

 受験生に合格祈願や「キット、願いかなう。」のメッセージを託して「キットカット」を渡すCMをみなさんもご覧になったことがあるのではないでしょうか?そんな「キットカット」のCMは、短い時間ながらドラマのようにストーリー性を持った先駆者的存在と言えるのではないでしょうか。

 ネスレ日本と私どもが新たに製作・発表した、「キットカット」の魅力を伝えるショートフィルムをここではとりあげ、製作の提案から発表・発信までの取り組み事例を紹介します。

 2018年10月に完成したネスレ日本のブランデッドムービー「What is REAL?」は、台湾にいる、これから日本を旅しよう、旅したいと考えている人々に向けて、「キットカット」ブランドの魅力を伝えていくことを目的に製作されました。台湾からの訪日外国人客数は、中国、韓国に次いで第3位。訪日外国人観光客は、日本に出発する前に家族や友人向けのおみやげリストを作り、それをもとに量販店で、おみやげを購入しています。そのため、日本に来てからだけでなく、日本に渡る前のタイミングで、日本の「キットカット」のことを知ってもらうためのコミュニケーション活動が必要だったのです。

ショートフィルムといえ総勢30人のスタッフ

9月に行われた撮影は小雨の中、東京・幡ヶ谷のカフェを貸しきりにしてスタート

 9月に行われた撮影は小雨の中、幡ヶ谷のカフェを貸しきりにしてスタート。スタッフはショートフィルムといえ30名ほど。監督、キャストはもちろんですが、演出部、制作部、撮影部、録音部、照明部などそれぞれの役割があります。撮影は天候や周囲の環境にも左右されるので甲州街道沿いでは歩行者をとめるスタッフもいますし、キャストのマネージャーさんたちもその演技を見守っています。

ネスレ日本デジタルマーケティング部部長・出牛誠さんもロケ現場に立ち会いました。「台湾 高雄映画祭のプレミア上映を皮切りにネットを通じて台湾・中国・日本を中心に、複数の字幕パターンで配信を行う本作。これから日本に旅行する、台湾をはじめとした国の方々にメイドインジャパン 『キットカット』の魅力が伝わり共感していただけるにはどうしたら良いか・・・」そう考えながら製作の話を進めてきました。

 「コミュニケーション活動には目標や目的があって、その達成のために様々な活動があるわけですが、ショートフィルムには可能性が多くあると感じています。より一層、視聴した方に共感していただけるような作品を届けていきたい」そう意気込みを語っていただきました。

台湾高雄映画祭で行われたワールドプレミア上映イベント舞台挨拶

 SSFF & ASIAチーフプロデューサー・諏訪慶は今回のブランデッドムービーを制作するうえで、作品のストーリー性と、ブランドとしてのコミュニケーション・メッセージがきちんと同居しているか、ショートフィルムとしてのクオリティ、視聴者の心を繋ぎ止めておけるような構成や描写、ショートフィルム部分と広告要素のバランスを常に考えながら取り組んだといいます。映画と広告の理想を具現化出来る作品を追究していくのがプロデューサーの仕事です。

 10月28日、「What is REAL?」が台湾の高雄映画祭にてワールドプレミア上映されました。多数の来場があり、現地メディアからの取材も行われました。10月29日からはネスレのオウンドメディアやYouTube公式チャンネルなどを通じて世界に向け配信をスタートしています。

スマホでの視聴にも適したショートフィルム

 世界で最も古い映画祭とされるのは、1932年に始まったヴェネチア映画祭。カンヌ、ベルリンと並び、世界三大映画祭と称され、映画祭での受賞がきっかけとなり、ヒットに結び付く流れは映画好きの方だったらご存知かもしれません。映画祭は、監督やキャスト、映画界の人物が集う華やかなレッドカーペットやプレミア公開の場に、メディアの注目も集まります。いわゆる従来のCMはではなく、ストーリーを用いたショートフィルムだからこそ「映画祭」を発表の場として活用し、プロモーションできるというわけです。

 私たちショートフィルムの映画祭が、積極的に企画・プロデュースに関わることの意義として、ショートフィルムのノウハウを熟知した立場であるということが言えます。短い時間の中で、どんなリズムで起承転結をつくるのか、(あるいは起承転結をあえて壊すのか)、ストーリーとブランドメッセージをどう融合させていくのか。このような知見は、ショートフィルムに特化した映画祭を20年に渡り開催し、国内外の様々なショートフィルムをみてきた映画祭だからこそ持ちえる視点なのです。

 映画祭上映後のネット上での作品公開は定着しつつあるプロモーションです。ネット社会の現代では、スマホでの動画視聴が最も日常に近いメディアへの接触機会になります。2時間の映画をスマホでみるのにはハードルがありますが、10分程度のショートフィルムならどうでしょう? 待ち時間や移動時間、夜寝る前のひと時に手軽に映画体験ができます。ショートフィルムという手法を用いうることで、限りある可処分所得時間の中で、ユーザーとのコミュニケーションを築くことができるのです。

 単に制作するだけではない。単に見せるだけではない。社会に対して「何を伝えていきたいか、何を発信・表現していきたいか」、そしてそれをどんなアクションで実現していくのか。そんなことを考えながら仕事ができるのがショートフィルム製作の世界の魅力です。

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■「What is REAL?」の紹介

 今回のブランデッドムービー『What is REAL?』のメガホンをとったのは、岩井俊二監督の元で助手を務めた後、2004 年『恋文日和』で劇場公開デビューし、数々の作品を手がける女性監督・永田琴さん。出演は、台湾の人気俳優フィガロ・ツェン。映画『もっと猟奇的な彼女』がアジア各国で公開され、2017年秋には中国、台湾、日本で公開予定の日台合作映画『おもてなし』も公開され、国際的にも高い人気を博しています。韓国で人気の藤井美菜さんも加わり、日本を舞台としながらも、インターナショナルな作品に仕上がりました。



https://youtu.be/v45VA24S8ao

【あらすじ】 台湾の青年カメラマン・アトンは、日本人の恋人・ゆりの誕生日祝いに写真を撮る為、サプライズで日本にやって来る。しかし、ゆりの反応は予想外に冷たいものだった。失望したアトンが一人で向かったのは、写真を撮るつもりだったゆりの故郷の山。そこで不思議な男性と出逢い......「大切な人と共に過ごす特別な時間」を描くファンタジー・ドラマです。