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トビタった!私たち(20)デンマークでのファームステイ体験
~英国で動物の生体機能学ぶ礎に

トビタった!私たち(20) デンマークでのファームステイ体験~英国で動物の生体機能学ぶ礎に
authored by トビタテ!留学JAPAN

 みなさん、はじめまして。京都大学農学部資源生物科学科3回生の橋本貴也と申します。「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」(以下トビタテ)9期生として現在、イギリスのシェフィールド大学で動植物の生理学を学んでいます。

新入寮生歓迎飲み会

 私がなぜ留学したかというと、幼いころから自分が住む文化と全く異なる文化が世界にあることに興味を持っていたからです。しかし、経済的な理由から留学は諦めていました。なので、少しでも留学生と多くかかわりたいと思い、RA(レジデントアシスタント)として、留学生寮に住むことを決めました。この方法なら、賃料を安く抑えることが出来て一石二鳥でした。寮での生活は刺激的で楽しく、本当に多くのことを彼らとの共同生活で学ばせていただきました。

 そんな中で、やはり自分も留学に行きたいと強く思うようになり、費用が最も抑えられる交換留学の枠に合格。結果的に、浦上奨学会とトビタテから支援していただけることになり、僕の留学計画によりマッチしたトビタテを受給させていただくことにいたしました。

大暴れするリャマの爪切り・糞尿の掃除...

 私はイギリス留学前の2018年8月30日~9月20日、デンマークの商業用リャマの飼育をするビート夫妻の農場で、3週間のファームステイをし、リャマの世話や庭仕事のお手伝いをしました。

早朝のリャマ

 農場の朝は4、5頭のリャマに薬を施すところから始まりました。そして投薬が終われば次は、各個体の状況に合わせて爪を切ります。この作業、皆さんが想像しているよりはるかに困難を極めます。リャマは、爪を切られることを極端に嫌い大暴れします。特別な設備で固定したうえに1人が頭を抑え、もう一人が切ります。

 リャマは大量に唾液を吐きだし、鳴きわめきますが心を鬼にして毎朝この作業に取り組んでいます。それが、終わればリャマ・アルパカを小屋の外に誘導します。30頭弱のリャマ・アルパカの糞尿を掃除します。シャベルと鍬を用いて猫車に糞尿を移し、dung heap(堆肥置き場)まで運びます。毎日、4 往復程します。

 掃除が終われば、餌の時間です。彼らは干し草を食べるのですが、この時間になると自然と集まってきます。干し草を十分量与えた後は、給水用のバケツを掃除し、水を足します。これが、最低限毎日必要なリャマ・アルパカの世話です。

次は、その日によって異なることをします。雑草処理であったり、木材・土の運搬であったり、ウールの仕分け作業をしています。農場での仕事の多さ・大変さに驚かされる毎日です。

第一次産業で社会を支えている人たちに改めて感謝

お世話になったホームステイ先で

 私は、元々は世界一幸せな国と言われるデンマークに、何故彼らが幸せでいられるのかを探りに行こうと思っていました。もちろんここで、幸福感に関する文化の違いを感じることもあります。しかし、それ以上に、第一次産業で社会を支えている人たちの大変さと充実感を感じました。

 世界中の、そして特に、日本で私を支えてくれていた農家や漁師に改めて感謝しています。ここでのホストマザーが「イモはスーパーで収穫するのではなくて土になる」と冗談めかして教えてくださいました。他人の仕事、特に農家さんへの感謝を思い出させてくれる良い教えです。

 ここで働くことの大変さと充実感、また自分をここまで支えてくださった人達への感謝を感じながら、「では、自分は将来どのような形で社会に貢献できるのか」自分と向き合っています。

デンマークからイギリスへ、研究生活が始動

 デンマークからイギリスに移動し、2019年6月まで、生物学において世界のトップ大学であるシェフィールド大学Department of Animal and Plant Sciences(動植物科学科)で動植物の生理学を学んでいます。化学/生理学・医学など生物学に関する分野で 6 人のノーベル賞受賞者を輩出した、生物学において権威ある大学で動物の生体の機能とメカニズムを学びます。

 私は、生き物が進化の過程で発達させた特徴が、人の生活の質を上げる薬品やサプリメントに応用できるのではないかと考えています。京都大学でも同様のことを学んでいましたが、ここイギリスで生理学を学ぶことでより多角的にこの学問を見ることができ、まだ誰も至らなかった発想を持つことが出来るのではと考えています。また、将来有望な海外の研究者たちと交流を深めることで、この分野における日本と世界の懸け橋になれると信じています。

寮生がタイで仏道修行を始めるときの断髪式

 留学は始まったばかりですが、自分が大きく変わったと思えることが2つあります。まず第1に、英語の能力が格段に上がったと思います。日本にいて勉強していた時も、留学する身としてそれなりに必死に勉強していたつもりでしたが、ここでの言いたいことが伝わらないという経験がさらに自分の脳を追い込んでくれるように感じます。火事場の馬鹿力というのか分かりませんが、自然と向上心が沸き上がってきます。

 そして、第2に、精神的な耐久力が付いたように感じます。ここにきて、文化の違う人たちに囲まれ、日本のことをアジアの国の1つ程度にしか知らない人(犬を食べるのかと聞かれたこともあります)とも話をしなければいけない場面もありました。始めは、馬鹿にされているように感じることもありました。日本にいたときは、嫌いな人と関わることは全くといっていいほどしないタイプだったのですが、ここではそういう人たちにもきちんと向き合い話していくことでお互いに理解しあえたと思っています。

 嫌なことに対面した時、ふさぎ込んでネガティブに考えるのではなく少しの努力を持って、ポジティブに考えることが出来るようになりました。これは、かなり大きなプラスの変化なのではないかと思っています。なぜなら、ポジティブ思考を習得したおかげで将来訪れるであろう困難に対して恐れることがなくなりました。ポジティブ思考は、経験と努力で身につくものなんだなぁと実感しています。

大文字山ナイトハイク

日本の良さを伝え、周囲を幸せにする仕事がしたい

 将来日本に帰った後はボランティアとしてか、仕事としてするかまだ分かりませんが、cool japanを知ってもらう活動に従事できたらいいなと漠然と思っています。どんなことを仕事にするのであれ、身の回りの家族・友人、そして少しでも多くの人達が幸せになるお手伝いが出来たらいいなと思っています。また、ここにきて、日本人という自分のアイデンティティに立ち返り、もっと世界の人に日本を知って欲しいと願うようになりました。そのような活動にも参加出来たらいいなと思っています。

 これから、留学を考えている人たちに知ってほしいのは、「留学はお金持ちの人のためだけじゃない」ということです。確かに、交換留学に行くためには語学のスコアを取らなくてはならないし、支援していただく奨学金を探すのも書類を作成するのも自費で行く資金があれば必要ない手間かもしれません。しかし、努力すれば必ず留学に行けると僕は思います。

 そして、そうして積み上げた努力は決して無駄にはならないと思います。私の場合、奨学金に申請する際に、先輩方に協力してもらいながら何度も文章を練り直したことで自分の拙い作文力を少しは改善出来ましたし、なによりトビタテ9期生の仲間達と出会えたことは本当に大きな財産であると思います。

 そこには、自分の力で自分の日本のそして世界の未来を切り開いて行こうとする同年代のライバルが大勢いました。彼らと共に朝から夜遅くまで行った事前研修では、彼らの力強さに驚かされました。同時に自分も彼らの様に輝きのある人になりたいと向上心をさらに高めることが出来る良いきっかけになったと思います。

プロフィール
橋本 貴也(はしもと・たかや) 1996年広島県福山市生まれ。趣味は1年半前に始めたウェイトトレーニング。たまにランニングもします。勉強して、疲れた時は休むのではなく積極的に運動してリフレッシュしています。その他、RA(レジデント・アシスタント)として留学生寮に住み、26カ国75人もの訪日留学生と親交を深めました