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新体操のほっち(9)勝負の地 ギリシャで舞ったフェアリー
~ついにつかんだ五輪への切符

新体操のほっち(9) 勝負の地 ギリシャで舞ったフェアリー~ついにつかんだ五輪への切符
authored by 坪井保菜美新体操元日本代表

 みなさんこんにちは、新体操の坪井保菜美です。すっかり秋も深まってきましたが、みなさんどうお過ごしですか? ハロウィンは終わってしまいましたが、まだまだイベントが盛りだくさんな秋を楽しみたいですね^^ ご飯も美味しいし♩

 さて連載第9回目となる今回は、競技について触れていきます。私たち団体の目的、それは2008年に行われる北京オリンピックに出場すること。そのために結成されたフェアリージャパン。

世界選手権が近づき5人のレギュラー発表

 前にもお話ししましたが、オリンピックに出場するためにはまず、オリンピックの前年度2007年に行われる世界新体操選手権大会で、オリンピックへの切符を勝ち取ることが大前提。また、世界選手権に出場するのも、5人のレギュラーに選ばれなければ出られない。コーチは、試合ギリギリまでどのポジションに誰を選ぶかを言わない。選手側としてはこの位置が絶対と思って練習したいが、そうとは限らないこの繰り返しが精神的にも苦しかった。どこの場所でも踊れるよう入れ替わりながら、進みが悪ければすぐに交代。

 レギュラーとして使われるのは、周りをよく見られる選手、手具の対処がうまい選手(ミスをミスに見せない扱い方)、気持ちの切り替えが早かったり、チームの雰囲気を盛り上げられるなど。技術的なことはもちろん必要だが、チームを乱すような選手はいらない。また、団体ならではのものである手具の交換や5人の息が合わなければ崩れてしまうような連携技などの相性も、何度も何度も人を入れ替えながら組み合わせて決めていく。そのため、一つの技を完成させるのにかなりの時間が必要。だから長いんです、練習時間・・笑

 そうして完成した演技を試合で踊れるのは、たったの2分半。そのために毎日何時間も試行錯誤しながら練習を行うんです。それに耐えられる選手が最後は残る。

 この世界選手権にかける想いは、メンバー、コーチ、そして日本の新体操界からの圧もかなり大きかった。プレッシャーというんですかね。かなり感じました。正直、楽しむことはできなかったです。怖さが先にありました。世界選手権までにも、ワールドカップという世界の試合に何度も出場してきたのですが、試合は慣れるものではありませんね。ミスなく踊れる試合の方がほんとに少なくて。。。コーチをよく泣かせていました。辛かった。コーチの悔し涙は、自分が泣くよりキツイもの。

 世界選手権が近づき、メンバーが発表された。補欠を含め6人が海外へ向かうこととなった。世界選手権の1ヶ月前にヨーロッパへ行き、最後の調整を含めワールドカップに2試合出場してからギリシャ入り。2007年 世界新体操選手権大会は、ギリシャ・パトラスで行われた。メンバーが決まってからの練習は、限られた時間の中でどうまとめるかが大切で、質より量だった練習は、量より質を高めるための練習となった。自分のポジションが決まってからは、短時間の練習にもより集中して取り組むことができ、メンバーの雰囲気も良くなった。現地入りしてからの成長は大きなもので、それは自分たちでも感じられた。

重圧の中、突然メンバーの1人が泣き出した

 本番と同じ会場での練習を最後に、ついに明日が本番! 試合の前日はいつもみんなでイメージトレーニングをするんです。スピーカーを囲い、みんなで輪になって手を繋ぎます。実際と同じように号令や掛け声をかけながら、交換や手具のキャッチができたら隣の手をぎゅっと握ります。力強い手の感触は、みんなと繋がっている、一人じゃないんだという安心感があり、不安を減らしてくれました。団体ってすごい。改めて、仲間の存在が大きいものだと気付かされます。

 ついに迎えた当日。練習中、突然メンバーの1人が泣き出した。緊張のあまり、頭が真っ白になったと言う。これも初めての経験だった。逆に私は、やっとこの日がきた!と気持ちが高まり、楽しささえ感じていた側だったので、同じようにやってきたメンバー内にこうした違うパターンが現れるのかと学ばされました。試合は何が起こるかわからない。怖いところでもあるが、それが面白かったりもする。大丈夫だよと、みんなで慰め、カバーし合いながらも試合は近づいてくる。どんな状況であろうとやらなければならない。

 本会場へ向かう途中、決まって私たちがいつもやること。ルーティーンと言うんですかね。大声を出すんです。急に叫ばれて、周りはびっくりですよね。笑

 せーの、「あーーーーーーーーーーーー!!」これで発散させるんです。

 そして本番直前になり、私たちはエンジンを組みます。お互いの目を見て最終確認。これだけやってきたんだ、大丈夫!!自分たちを信じ、最後に思いっきり腰を叩き気合いを入れる。

 「JAPAN」コールがかかった。曲が鳴るまでの緊張はすごいが、それ以上に集中もすごい。あとは鳴ってしまえばもう踊りきるだけ。身体で覚えている演技を脳で指令していき、一つ一つの技をクリアしていく。ミスの許されない競技の緊張感と、オリンピックが掛かっているという重圧。日本の国旗の重みを一番に感じたのは、この世界選手権でした。

 私がこれまでやってきた新体操というのは、自分のためというよりかは常に周りの人に喜んでもらいたい、感動を与えたい、そういう思いが力となり続けてこられた部分が大きいんです。結果ももちろんだけど、気持ちを込めた演技にはそれと比例する結果が結びついてくるものだと感じています。踊りながら、日本のハチマキを付けた家族や応援してくださる方々の姿を見て、逆にこっちが感動を受けました。

 あぁ、演技で返さなきゃな、と。

余韻に浸る間もなく...内心は「休みた~い」

 世界各国から多くのチームが出場している中、私たち日本の新体操団体は北京オリンピックへの切符を獲得することができました。出場が決まったのです。コーチの喜ぶ姿も見ることができ、とっても嬉しかった。試合後、ギリシャまできてくれた家族に少しだけ会う時間がありました。みんな嬉しそうにお話をしていました。ほっとしたんだろうなぁと。もちろん私も( ´∀`)

 でもこれはほんの一瞬のことであり、いつまでも余韻に浸ってはいられません! 私たちの戦いはここからが本番なのです。←・・と、カッコよく言ってみましたが、これはコーチから言われたことでもあり、内心もっと休みた~いなんて思ってたんですよね。笑

 さて次回は、オリンピック出場権を得たフェアリージャパンですが、世界選手権(ギリシャ)から帰国し、その後どうなっていくのかをお話させて頂きたいと思いますっ! 次回も引き続き、新体操の坪井保菜美をどうぞよろしくお願いします。