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池上彰の大岡山通信 若者たちへグローバル時代に学ぶ(中)
時代の行方 自ら判断

池上彰の大岡山通信 若者たちへ グローバル時代に学ぶ(中) 時代の行方 自ら判断
authored by 池上彰東京工業大学特命教授

 今回も一般の高校生や大学生などを対象に、立教大学で行った講演の一部を取り上げます。グローバル時代の学び方や生き方について、米国と中国による「貿易戦争」や大国の対立を話題にしました。さあ、一緒に考えてみませんか。

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池上氏は「問題意識を大切に」と呼びかけた(10月21日、東京都豊島区の立教大池袋キャンパス)

 10月初め、米国のペンス副大統領による講演が大きな関心を集めました。覇権を強める中国に対し、米中関係の現状やこれまでの対中政策の失敗、米国への内政干渉などを批判したのです。関税問題に続き対立の構図が浮き彫りになりました。

 発言を要約すると、東西冷戦後、多くの国々が民主化を進めた。中国も経済が豊かになれば変わるだろうという期待があった。歴代の大統領は支援を惜しまなかったが、それは失敗だったというものでした。もう支援はしないという対決姿勢をむき出しにしました。

 これは経済的に急成長を遂げ、軍事力を増強し続けている中国に対する危機感の表れです。副大統領という要職にある人物の発言だけに、メディアはこぞって「米中による新しい冷戦の始まり」と位置付けたのです。

 10月中旬には米中関係を巡って「国際郵便」が話題になりました。トランプ米政権は、国連専門機関の万国郵便連合(UPU)からの離脱手続きを始めると発表したのです。中国側への不満を直接ぶつけるものでした。

 UPUに加盟する国の郵便事業者は、重さや量に応じ、相手国側に料金を支払う仕組みがあります。ところが中国は経済大国になっても、新興国や発展途上国のような割安な料金のまま。特に軽量品の料金の差が大きく、米国は損失を被っているというものです。

 ただし、「離脱」という短いニュースを見ているだけでは、米国政府の狙いは見えてきません。その背景について書かれた新聞記事などを選び、しっかり読むことが大切です。

 第2次世界大戦後、トルーマン米大統領は社会主義陣営に大きな影響力を誇示していたソ連の「封じ込め政策」を唱えました。ソ連への危機感をあらわにしたのです。

 やがて米ソ両陣営が対峙する東西冷戦が終わり、核の脅威から解放されるはずだったのに、いま再び危機が強まっています。米国が旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄することを表明したからです。歴史は再び繰り返すのでしょうか。

 米国は自らの利益を最優先する「米国第一主義」を掲げています。以前、コラムで指摘しましたが、米国はそもそもこの価値観を持つ国でした。20世紀、2度の大戦の惨禍を体験し、多くの国々が重視してきた国際協調が揺らいでいます。

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 日本の新聞やテレビ、ときには海外発ニュースに触れてください。世界史は、現代のニュースを理解する上で欠かせない知識です。

 日本は第2次大戦後、米国中心の資本主義陣営の一員として復興を遂げました。日本と米国は同盟関係といいますが、今後の外交は順風満帆とはいかないでしょう。

 グローバル時代を理解し、生き抜くということは、時代の行方を自らの頭で判断できるようになることだと思います。その答えは人工知能(AI)が探してくれるわけではありません。まずは君たち自身が考え、浮かび上がってきた問題意識にかかっているのです。

[日本経済新聞朝刊2018年11月5日付、「18歳プラス」面から転載]

※大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「現代史を歩く」「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。

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