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AIの未来(4) 「仮想世界」で生きることが普通の世の中に

AIの未来(4)  「仮想世界」で生きることが普通の世の中に
authored by 人工知能研究会/AIR

 人工知能研究会(AIR)の運営委員の古屋俊和です。第3回では、今後どのような人工知能技術が出てくるかをご紹介させていただきましたが、第4回では人工知能普及後の未来について、どう社会が変化していくか、お話出来ればと思います。

AIの発展で雇用減、安心して生きていける社会制度が必要

 現状のAIの発展速度より、おそらく今後10年ほどでこの世の中の多くの作業がAIで技術的に可能になることが予想されます。一般的にパターン化出来る多くの仕事は代替されていく方向になります。ただ、法律が追いつかず、技術的には可能でも法的に問題があり技術が普及しない状況が長く続きそうです。技術を普及させるにはまず、仕事を失っても安心して生きていける新たな社会制度が必要です。

 AI技術の進歩は大幅な雇用の削減を生んだとき、人類が皆、やりがいを持って、安心して生きていける社会の仕組み作りが、今後の社会課題になりそうです。その社会課題の解決策として、例えば、ベーシックインカム(就労や資産の有無にかかわらず、すべての個人に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付するという社会政策の構想)などの社会保障制度の充実などが必要になるでしょう。

 ただ、ベーシックインカムはその予算をどう捻出するか議論になります。それを解決する方法が仮想世界です。仮想世界で暮せば、ほとんどお金や資源を使わずに暮らすことが出来ます。仮想世界はオンラインゲームの世界がより現実に近づいたものだとイメージして貰えるとわかりやすいかもしれません。

本当にやりたい事に時間を注げる「仮想世界」

 私達は出来るだけ社会資源を浪費しない生き方をすることを求められ、「仮想世界」での生活が広く普及するはずです。

 今でもネットスーパーで買い物をしたり、LINEで会話したりなど、直接出向かずに必要な要件を済ませることが可能ですが、「仮想世界」ではさらに私たちの日常生活が実現されるようになります。毎日会社に行かずとも仕事ができ、学校に行かずとも勉学、友達と遊ぶことができるようになります。

 実はそのようなサービス(second life=3DCGで構成されたインターネット上に存在する仮想世界)は以前からありました。しかし、従来のサービスはゲームの世界の延長と見られて、リアリティーが乏しく広くは普及しませんでした。

 しかし、近年の技術の進歩で、例えば、仮想現実(VR)で視覚や聴覚、ハプティクス(触覚)技術で触覚、AIで味覚や嗅覚を作り出す技術が生まれており、人間の五感は仮想世界で再現出来るようになりつつあります。さらに、5Gなどネットワーク技術の進歩、AI技術でより現実に近い「仮想世界」を作れる技術が生まれつつあります。今後より現実に近い仮想世界で、私達は人とコミュニケーションを取ったり、仕事が出来るサービスが広がってくると考えます。

AIが人類のインフラを作る時代に

 AIが今後人類の仕事を奪うことが危惧されますが、もし上記のような「仮想世界」で生活出来るようになれば、ほとんどお金を使わずに生活することが可能になり、ベーシックインカムで支給されるお金の範囲内で充実した生活を営むことが出来ます。

 そのとき、仮想世界で生きることが普通の世の中になるのかもしれません。それは怖いことではなく、2000年代前半にIT(情報技術)が徐々に普及したときのように自然とゆっくり受け入れられるものになると思います。