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大学生が見たカイシャ(10)東急電鉄~快適な「電車の時間」と豊かな暮らしを提供

大学生が見たカイシャ(10) 東急電鉄~快適な「電車の時間」と豊かな暮らしを提供
authored by 国学院大学学生キャリアサポーター

 交通事業として私たちの生活に馴染み深い「東京急行電鉄」。交通のみならず多岐にわたるグループ会社と連携し、その中核として「町づくり」「企業づくり」「人づくり」に取り組んでいます。地域に密着した事業は長きにわたって人々の生活の基盤を築き、そして今も支え続けています。今回は持続可能な成長を目指して常に進化する「東急電鉄」の広報部広報企画課の加藤千咲さんにお話を伺いました。

「朝の選択肢」を増やし、快適な通勤をサポート

―――人がよく利用する駅周りのビルや商店街などの「沿線価値」についてどのような調査を行っているか教えてください。

 「沿線価値」などをはかる基礎研究は東急総合研究所というインハウス研究所で定期的に実施しています。実際の事業では、そのような基礎となる情報だけでなく「お客さまの声をいかに汲み取るか」ということを大切にしています。当社は電車をはじめとするサービスをご利用いただくお客さまと対面できる場が多く、そこで伺うお客さまの声を理解し、反映することが、まず大切なことだと考えています。お客様センターにいただくお声も各事業部にしっかり伝えられ、貴重なご意見として参考にさせていただいています。また、これは当社に限ったお話ではないと思いますが、開発や新規事業などを行う場合はその目的に合った調査を都度行い、戦略を立てています。

―――満員電車への対策としてどのような活動を行っていますか?

入社6年目の加藤千咲さん(28)

 これまで、特に田園都市線の混雑対策としては、大井町線の溝の口駅~二子玉川駅の延伸や、急行7両化など、ハード面での取り組みを行ってきています。それにとどまらず、現在は「グッチョイモーニング」という施策に力を入れています。これはお客さまに「乗車時間」「働く場所」「移動手段」を選んでいただき、ラッシュを分散させるという、「ソフト面からの」混雑緩和策です。

 1つ目は「乗車時間の選択」です。電車が混雑するラッシュ時間を避けていただき、早朝に乗ってくださった方にはクーポンなどの特典を差し上げています。2つ目が「働く場所の選択」。当社は沿線の各地にサテライトシェアオフィス「NewWork」を運営しています。契約していただいている法人様で勤務する方は、例えばラッシュ時にはご自宅近くの「NewWork」で業務することでラッシュを避けて通勤できます。

 「グッチョイモーニング」の3つ目は「移動手段の選択」です。当社の田園都市線の最混雑区間である三軒茶屋駅から渋谷駅までの当該区間の定期券をお持ちの方には、並行する国道246号を走る東急バスを電車の代わりに無料で利用していただける仕組みとなっています。このように選択肢を広げ、快適な電車の利用に役立てていただいているのです。

「渋谷のスクランブル交差点」を眼下に一望できる施設を整備

―――近々開催される東京オリンピックやその際に訪れる外国の人に向けて活動していることはありますか?

 当社でもインバウンドのお客さま向けの施策をいろいろと行なっています。鉄道事業では外国の方が不便なく鉄道を利用できるように、券売機を英語だけではなく中国語や韓国語などの7言語対応で操作できるようにしています。 また、東急線全駅でiPadを使った通訳サービス「SMILE CALL(スマイルコール)」を導入し、駅係員が5言語でお客さまとコミュニケーションがとれるような体制にしています。その他にも鉄道の工夫として案内板に各国の言語を表示することはもちろん、渋谷駅のハチ公入り口で表示しているイラストのように、文字を読まなくても場所が伝わるような表示の工夫もしています。

 都市開発では、渋谷において大規模な再開発プロジェクトを多くの関係者と協力して推進しています。2019年秋に開業する「渋谷スクランブルスクエア」では、世界的観光名所であるスクランブル交差点を眼下に望める屋上展望施設が設置され、街の新しいシンボルとして渋谷の圧倒的なダイナミズムを体感していただける場となります。また同時に谷地形となっている渋谷においては、宮益坂方面から道玄坂方面を繋ぐスカイデッキや、アーバンコアの整備も進めており、より便利に楽しんでいただける街に進化していく予定です。

 一方、渋谷以外の東急線沿線の街にも、インバウンドのお客さまに楽しんでいただける魅力的な場所が沢山あります。そういった街へのご案内として、地域になじみのある日本人が、外国人旅行客の要望を聞き、一緒にプランを考え、ご案内する「TOMODACHI GUIDE」というサービスを株式会社Huber.と連携して提供するなど、ガイドブックには書かれてない隠れた魅力の発掘、発信にも力を入れています。

―――グループ企業と連携してどのような活動を行っていますか?

 東急グループは交通事業を基盤に、不動産、生活サービス、ホテル、リゾートなどお客さまの生活に密着した様々な事業を幅広く展開しており、220社8法人(2018年3月末現在)から成っています。その時代のお客さまの潜在的なニーズを捉えて多様な機能を組み合わせたり、新事業を始めるなどしており、最近も「東急パワーサプライ」という電気・ガスの小売り企業や、民営化空港を運営する「仙台国際空港」などの新会社が設立されています。

 グループが一体となることで相乗効果が生まれるため、相互に「出向」して人材交流をすることも盛んです。例えば、東急電鉄の社員が東急不動産や東急百貨店などのグループ会社に出向したり、その逆もあったり。新会社設立のタイミングでは、もともとその事業の立ち上げに携わった社員がそのまま出向するケースも多いです。

 渋谷や二子玉川などの大規模開発では各社が一丸となってプロジェクトを進めていますし、今年が初年となる当社の中期3か年経営計画では、「リテール事業の再構築」を重点施策の1つに掲げており、東急グループの百貨店、商業施設、スーパー、駅ナカ施設など、それぞれを運営する会社のEC、リーシング、仕入などの機能連携強化や、ハイブリッド型店舗、売場を作ることによって、より効率的にその場その場のお客さまニーズを満たす形で施設を構成し、サービスを提供しよう、という取り組みがなされています。

―――女性社員へのキャリアサポートにはどのようなものがありますか?

 まず出産については産休、育休の取得はもちろんのこと、復職する際に休暇中のブランクを感じず、安心して仕事に戻れるよう、セミナーを開くなどのフォローをしています。復職後は時短勤務などの関係で業務出来る時間に制限があるものの、業務のレベルは下げず、出産前同様責任ある仕事を任せてくれることも、実は大切なことだと先輩社員からよく話を聞きます。この風土は、出産後も仕事を辞めずに働き続ける人の多さに繋がっているのではないでしょうか。

 「残業がない」「職場の雰囲気が良い」という働きやすさだけではなく、「自分の思いを伝えて仕事ができる」という「働き甲斐」があることが重要で、それこそが育児と両立しながらでも、仕事を頑張るモチベーションになるのだと思います。また、女性活躍推進に関しては外部からも高い評価をいただいており、女性活躍推進に優れた企業が選ばれる「なでしこ銘柄」は当社とKDDIさんだけが6年連続で選定されています。

 現在の女性社員比率は約16.3%と決して高くはないのですが、最近の新入社員の男女比率はほぼ半々、出産などが理由で仕事を辞める社員はほぼいないという状況ですので、女性比率は上がっていっています。また、女性管理職は約5.5%とまだ比較的少なく、キャリアイメージをしづらい状況を改善するべく、若年層に向けて、現在の女性管理職が仕事や、プライベートとの両立などについて話す機会が設けられるなど、多方面から女性活躍推進が進められています。

駅係員やスポーツクラブ・スタッフなど研修で現場を経験

―――加藤さんの入社後の研修についてお聞かせください。

 入社してから最初の10カ月ほどは「顧客最前線研修」を行いました。これはお客様さまと直接対面する現場で勤務することで東急グループのお客さま、また現場について学ぼうという研修です。私の場合はまず初めの3ヶ月は東急スポーツシステムというスポーツ施設の運営などを行うグループ会社のスイミングスクールで実際にお子さまや親御さまと関わった後、駅係員業務を半年ほど経験しました。

 現場の方のお仕事は想像以上に大変で、経験できたことで、聞いただけでは分からない現場の考え方や、当社の根幹である鉄道の「安心安全」の重要性を理解できたと思います。その後の業務でも、研修当時は想像しなかったようなタイミングで、研修が生きているなと感じることが多く、今後も現場の意識は常に頭に留めなければと思っています。研修後は本配属でグループ会社の東急ストアに出向し、その後2年間人事の採用業務を担当し、現在は広報部で報道を担当しています。

―――現場で働いた経験が本社にいる際に役立ったことはありますか?

 はい、まず社内では本社にも駅などの現場出身の社員は多くおりますので、共通の用語や認識が根底にあることはそもそものコミュニケーションを円滑にし、業務のスピードや質が上がります。また研修時代の話は会話の種になり、初対面の方とでもざっくばらんに打ち解けるきっかけにもなります。

 現場の状況や事情を想像しやすいため、気を付けなければいけないポイントが予めわかっていることも、業務に役立っているように感じます。勿論、対お客さまでも同様で、このように様々なステークホルダーのことをリアルに想像しながら仕事ができているのは、研修の成果だなと感じています。

―――現在の仕事の中で、学んだことはありますか?

 現在は広報、報道の仕事に携わっていますが「信頼される」ことがいかに大切で、難しいかということを日々実感しています。報道の仕事は「攻め」と「守り」の両面があり、「攻め」としては事業や会社を効果的にPRするために様々なメディアにアプローチしていくこと、「守り」では、天災や事故などの際には盾になって傷を最小化する役割を担います。どちらの場合も、私の対応1つで、私だけでなく会社全体の信頼を作ることもできるし、壊してしまう可能性もある、常に「社外との窓口」として「自分への信頼が会社への信頼を作る」という意識を持っています。

 そのため、普段からテレビ、新聞、WEBなど様々なメディアの方と接しますが、それぞれ異なるニーズを汲み取り、「この人は誠実だな、わかっているな」と頼っていただける関係性を築くよう心がけています。おかげさまで、今では多くのメディアの方と良い関係が築けており、それによって日々の各事業担当からのPR相談に対する提案の幅が広がったように思いますし、逆にメディアの方から「一緒にこの企画を考えたい」と相談をいただける際には、日々の思いが形になっているようで嬉しく感じています。

「総合的にお客さまの生活や街を豊かにする」

―――「従業員一人ひとりが共有すべき価値観と求められる行動」として掲げられている「東急バリュー」のためにしていることは何ですか?

 「東急バリュー」とは「従業員一人ひとりが共有すべき価値観と求められる行動」として2005年に策定されたものです。持つべき価値観は3つあり「顧客価値」「共創」「挑戦」、そして、その実現のために「考える」「すばやく動く」「対話する」「やり抜く」「学習する」の5つの行動が求められています。行動は何となくイメージしやすいかと思うので、3つの価値観について簡単にお話させていただきます。

 「顧客価値」という点では、どのような事業を行う場合にも、お客様にとっての価値を重視するという文化があるように感じます。1つの事業でいかに利益を上げるかというより、総合的にお客さまの生活や街を豊かにし、その結果選んでいただく街づくりをする、という考え方がわかりやすいのかもしれません。

 その「顧客価値」を実現するために、残り2つの価値観が重要になってきます。まず、当社は事業が幅広いこともあり社内外、様々な方と「共創」することで、より良い価値創造に繋がっていきます。そして、より良い価値創造のためには「挑戦」も不可欠で、「社内企業化育成制度」という制度があるように、制度としても社員の挑戦を支援する土壌があります。この制度は社内の誰もが応募でき、企画が通ったら会社のフォローを受けつつ、自分でその事業を実施できるというものです。

 改めて考えてみると、確かに私も現在の仕事をする中で、お客さまにどのような情報を届けたいのか(顧客価値)、そのためにはどのような関係者が必要で(共創)、どのような発信の仕方が最適なのか(挑戦)、という思考をしており、受け身ではなく自分から戦略を立てる姿勢は「東急バリュー」なのかなと感じました。普段からガチガチに意識するようなものではないと思いますが、社員の中に何となく共通の意識があることは、仕事をする上でも動きやすく、良い形で機能しているのかもしれません。

―――最後に学生に向けて一言お願いします。

 今、学生の皆さんは就職活動について考えている時期だと思います。この時期は自分の人生の中でもしかしたら1番、自身とゆっくり向き合える時間かもしれません。今までは進学も、部活もサークルも、ある程度決まった範囲での選択だったという方がほとんどだと思いますが、初めて、世の中全体を見て、沢山の選択肢がある中で、自分が本当にしたいことは何か、考えるタイミングになると思います。周りを見ると何だか焦ってしまう気持ちもよくわかるのですが、まずは焦らずにゆっくり自分と向き合ってほしいと思います。

 その際、1つだけ気を付けていただきたいのは、自分自身より先に、世の中や企業の方をみてしまうことです。先に魅力を感じる相手に出会ってしまうと、自分の強みや弱み、やりたいことなどを、ついその相手に自分を寄せて考えてしまいがちです。それはミスマッチに繋がるとても勿体ないことなので、自分はどのような場合に頑張れる人間なのか、何が好きで何が苦手なのか、などをしっかりと整理した上で初めて、色々な企業や世の中を見て下さい。

 そして何か魅力を感じたら、何故なのか、自身のどこに刺さっているのか、1つ1つしっかり言葉にしてください。皆さんが、働いて楽しい、やりがいがあると思える場所を見つけられることを応援しています。 がんばってください!

(取材:小宮千穂、須藤愛)

※「大学生が見たカイシャ」の連載は今回で終了します。

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