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就活教室 自己分析(1)自己分析で「やってはいけないこと」

就活教室 自己分析(1) 自己分析で「やってはいけないこと」
authored by 渡辺茂晃日経HRコンテンツ事業部長・桜美林大学大学院非常勤講師

 自分の強み(長所や能力)は何なのか? 自分にはどんな仕事が向いているのか? これらを把握するために必要になるのが自己分析です。ここでは自己分析について「注意点」「強みの見つけ方」「企業選び」「選考での生かし方」の4回に分けて紹介します。

 就職活動を始めると、誰でも1度は自己分析をするように言われるでしょう。これは自分のことを知らない相手(採用担当者)に対して、自分がどのような人物なのかを説明するために必要だからです。なかには「自分のことは自分がよく知っているから、わざわざ分析なんて必要ない」と考える人もいるかも知れません。

自己分析で注意すべき点は4つある

 学生同士が友達として付き合うのなら、名前や趣味、LINEで連絡先を交換すれば、すぐに友だちになれるでしょう。そして気が合わなければ、友だちをやめればいいだけです。でも就職活動の採用はそんなお気楽なものではありません。

 企業が新入社員1人を採用するのにかかるコストは平均53.4万円(マイナビ「2018年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」)、入社したら毎月平均21万1039円(労務行政研究所「2018年度新入社員の初任給調査」)の給与を支払います。仮に新入社員の能力と仕事が合わなくても簡単に解雇することはできません。このため、採用担当者は「自社で活躍できる人材か?」「本当に自社で働きたいと思っているのか」などを見極めようとします。

 採用担当者の厳しい目に対して「この学生は入社したら活躍できる」と思ってもらえるように自分について丁寧に説明し、納得してもらえるような証拠(過去の経験や実績)が必要になります。その準備として自己分析があるのです。

 2018年春から総合商社で働き始めたAさんは、大学生活では「他人に誇れるような成果の出る経験は特になかった」と言います。Aさんは自己分析によって導き出した、「過去の経験が大学生活での活動にどのようにつながっているのか」「自分のベースとなる価値観やコンプレックスがあるから、このように考え、行動してきた」ということを丁寧に説明したと言います。その結果、採用担当者からは「よく考えて行動している」という評価を得て内定を得たのです。

 Aさんのように輝かしい経験が少ない人でも、自分の良さを採用担当者に伝えられるようになるのが自己分析です。それでは自己分析を始める前に、これはやらないほうがいいという注意点をご紹介しましょう。

注意点1 自己分析を目的にしない

 まずは自己分析そのものを目的にしないこと。自己分析の目的は①自分の強み(長所や能力)とその裏付けを明確にすること ②自分に合った仕事を探すこと の2つです。この点を見失ってしまい、自分の過去を生まれたときからずーっと振り返ることに一生懸命になってはダメです。

 「幼稚園ではこんな子だった」「かけっこが速かった」「好き嫌いがなく、なんでも食べる子だった」といった情報は、成人である学生が自分の強みを話す上ではほぼ必要のないこと。今の自分に大きな影響を与える出来事であれば必要な場合もありますが、今に結びつかない昔話はいりません。

 この傾向はマニュアル本を使って自己分析をする人に多く見られます。幼少期のことを書き込ませるシートが大量にあるため、全てのシートを埋めようとしてしまいがちです。真面目に取り掛かると何週間もかかってしまうでしょう。これではいつまで経っても就活は進みません。自己分析は就活をする上で必要なプロセスの1つであって、就活そのものではありません。これを忘れないように。

注意点2 1回で終わらせない

 私は自己分析をする期間は「最初は長くても1週間。1日1、2時間程度」に抑えるようにアドバイスしています。これを定期的に何度か繰り返すのです。例えば、インターンシップの選考前に自己分析し、そこで分かった強みをインターンシップで確認する。インターンシップ後に、気づいた強みがあれば、自己分析で過去の経験と結び付ける。

インターンシップは自分の強みを確認する機会でもある(「2018年内定者調査」日経HR、n=234)

 本番選考での面接も自己分析になります。面接担当者は「学生生活に力を入れたこと」や「自己PR」などで話した内容について、「そう思った理由は?」「なぜそんな行動をしたの?」といった質問を繰り返してきます。これらの質問に対して自分の過去を振り返りながら答える、また、面接の場で答えられなければ、終わってから考えてみる。これも自己分析です。

 就職活動がうまくいかない場合もあるでしょう。そんなときも自己分析をやってみてください。つまずいた時などには1、2日の短期間で自己分析をやり直し、もう1度自分の強みと、それを証明する経験を整理することです。強みと経験がうまく結びついていないから、採用担当者に良さが伝わらなかったといったことに気づくかも知れません。

 このように就活全体を通して、常に自己分析が必要になる場面が出てきます。それまで気づかなかった自分の強みに気づくこともあるでしょう。1回ですべてが終わると思わず、就活中はいつでも自己分析するものだと思っていてください。

注意点3 マイナス面に目を向けない

 3つ目は自分の短所・欠点ばかりを見ないようにすること。これはマジメで、控えめな人、もしくは自分に自信のない人がはまりやすいです。マニュアル本などには「短所も調べる」などとあるために、マイナス面を探し出し、その理由についても考えます。そこに目が行き過ぎると、「なんであんなことをしたんだろう?」「なんて自分はダメなんだ」と、自己嫌悪に陥ってしまいます。

 最後には「自分にできる仕事はないかも...」「社会人として働くのに自信がない...」などとなってしまいます。これでは自己分析の意味がありません。自己分析は自分の強みを把握し、それを裏付ける経験を探すことが目的です。

 分析中に短所ばかりが目につく時には、「消極的⇒慎重・用心深い」「考えが浅い⇒すぐ行動に移す」などと発想を逆転させ、前向きに捉えるようにしましょう。マイナスなことを根掘り葉掘り思い出して悩む必要はありません。

注意点4 求める人材像に合わせない

 最後は企業の求める人材に自分を合わせて、本来の自分を見失ってしまうことです。第一生命保険が先日発表した「サラリーマン川柳」の番外編に、就活生が詠んだ川柳がありました。

「自己分析 出した結論 僕は誰?」

 こんなことにならないように注意してください。例えば、説明会や企業のホームページなどに書いてある「求める人材像」に、「チャレンジ精神が旺盛な人」とあったとしましょう。過去を振り返って何かにチャレンジした経験を探してもなかったとき、話を作ってしまう、話を盛ってしまう。ところが、面接で「なぜ? どうして? どのように」と深掘りされてボロが出てしまった、なんてことのないようにしてください。

 また、それほどでもない経験を強引にアピールして失敗することもあります。「一人暮らしに挑戦した」「大学受験にチャレンジした」など、一般的にはチャレンジとは言わないようなことを無理にアピールしてしまう。自分を過大評価する人、能力や経験の意味がわかっていない人と思われるだけです。あくまでも自分自身を正直に伝えるツールとして、自己分析を使ってください。

 今回は自己分析の注意点として「自己分析を目的にしない」「1回で終わらせない」「マイナス面に目を向けない」「求める人材像に合わせない」を説明しました。次回は自己分析の具体的な進め方です。