知らないと損! 「確定申告」をすれば戻るアルバイト収入
大学生のためのマネー講座(1)
皆さんは、お金と上手に付き合っていますか? 充実した学生生活を送るためには、お金についての知識と経済観念をしっかりと持つことがとても大切です。大学生活では4年間を通じて支払い続ける多額の学費に始まって、テキスト、通学定期などさまざまな必要経費がかかります。加えてサークル活動や友人との旅行、成人式などでまとまったお金が必要になる機会も多いことでしょう。学生として「これだけは知っておきたい!」というマネーの常識を、ファイナンシャル・プランナーの竹下さくらさんに解説していただきます。連載の1回目は「アルバイト収入と税金」がテーマです。
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アルバイト先から「確定申告はご自身でやってください」と言われて、とまどった人はいませんか。(1)一定金額(年間103万円以下)の収入をアルバイトで得ている (2)収入から税金が引かれている (3)年末調整がされていない――。この三拍子がそろっている人は、確定申告をすれば、払い過ぎた税金の還付(キャッシュバック)が受けられる可能性大。つまり、何もしないでほっておくと還付を受けられず"損"をしてしまうかも。今回は、確定申告のしくみと注意点を確認しておきましょう。
なぜ「確定申告」をしないと損をするのか
お金を稼ぐと、たとえ学生であっても、未成年であっても、アルバイトであっても、納税の義務が発生します。収入があるのに放っておくと、無申告加算税や延滞税がかかることもあり注意が必要です。
納税忘れをしないように、税金を徴収する側も予防線を張っています。税金分を概算額で先に差し引いた上でアルバイト代を支給して、11~12月頃に年末調整を実施して正しい額に計算し直す、という仕組みを多くのところで導入しています。勤務先が年末調整をしていなかったり、他の税金の調整がある場合などは翌年の年初に確定申告をして所得税の額を確定させるという流れです。
なお、先に税金が差し引かれているかどうかは、支給明細書や支払調書、源泉徴収票といった書類に源泉徴収額の金額が記載されているかどうかでわかります。
アルバイトは「103万円」までで働くのが無難
ところで、アルバイトをする中でよく耳にするのは「103万円」の壁ですね。収入が103万円以下の人の場合、計算すると所得税の負担はゼロで済みます。そのため源泉徴収額は還付請求すればまるまるキャッシュバックしてもらえます。ところが、103万円以下の人には確定申告の義務は課せられていないため、年末調整をしない勤務先だった人は気付かずそのまま・・・ということも。ぜひ、確定申告をして、自分のお金を取り戻しておきましょう。
「なんだか面倒くさそう・・・」と思っても、小一時間かけて確定申告書を書き上げれば、アルバイト数時間分に相当する額の還付を受けられるわけですから、しない手はありません。
ちなみに、「源泉徴収額」は少し多めの概算額で算出しています。そのため、年末調整をした直後の12月は、他の月よりも税負担が少なくて済む分だけ給与の振込額が多めになるのが通常です。例えば、年の途中でアルバイトを辞めたために年末調整ができなかった人は、多めの概算額が源泉徴収されたままとなります。確定申告すると還付が受けられるケースが多いです。
なお、年末調整ができる勤務先は1カ所だけなので、2カ所以上でアルバイトしている場合は確定申告をする義務があることは覚えておきましょう。
アルバイトでいくら稼いだかは、親には言いたくないものですね。ただ、給与が103万円を超えるときは、親に一言その旨を伝えておくのがおすすめです。なぜなら、親の所得税について扶養控除が適用できなくなり、結果的に親の税負担が重くなってしまうからです。年10万円ほど納税額が増えたというケースはよくあります。
たいていの親は「うちの子はそんなには稼いでいないだろう」と思っていて、扶養控除を適用して納税しています。ところが、子どもの給与が103万円超となると、税務署から親の勤務先にその旨が通知されて、びっくり仰天。後から追加で税金を納めることになってしまいます。
なお、毎月数万円もの扶養手当を給与に上乗せしてくれる勤務先もありますが、これも、子どもの給与が103万円超となるとストップするところが主流です。月3万円の扶養手当をもらっていれば、親の収入が36万円減るイメージです。つまり、親にしてみれば、子どもの給与が103万円を1円でも超えると、扶養手当の分だけ収入が減る上に、扶養控除が適用できないことで税負担が増える状況に陥ることになるのです。
「今年は103万円を超えるかも」と思ったら、親自身の年末調整に間に合う11月上旬までにひとこと伝えておきましょう。親の収入減や増税の影響が大きいと、年末のアルバイトを制限するよう言われる可能性もありますが、後になってバレて大目玉という事態は避けられます。
ちなみに、1年間の給与が103万円を超えると、その収入を得た本人にも所得税の負担が生じ、翌年には住民税が自動的に課せられます。ただし、19歳以上23歳未満の学生であれば、「勤労学生控除」を適用することで、この「103万円の壁」を「130万円」に変えられます。勤労学生控除は年末調整や確定申告の際に、扶養控除等(異動)申告書に必要事項を記入して提出することで、適用することができます。
「確定申告」をしようと思ったら
ここで、確定申告の手順について解説します。まずは、全てのアルバイト先の給与明細または支払調書、源泉徴収票などをもらってあるか確認することから始めましょう。手元に源泉徴収票が見当たらなかったり、年の途中で辞めた場合も、勤務先に依頼すれば発行してもらえます。
さて、確定申告は、ザックリいえば、確定申告書という所定の用紙に必要事項を書いて、支払調書などを添付して提出するだけの作業です。確定申告書は、最寄りの税務署や市区町村役場(出張所)などで入手できます。家にプリンターがある場合は、国税庁のホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」で入力したものをプリントアウトして税務署へ提出する方法も手軽です。
なお、確定申告書には「A」と「B」の2種類の用紙がありますが、一般的にアルバイトは「A」を使います。書きあがった確定申告書は、住所地を管轄する税務署(税務署のホームページから検索できます)に郵送、あるいは、税務署の窓口に持参すれば完了です。
確定申告は期間が決まっていて、1月1日から12月31日までの1年間の所得を、翌年の2月16日から3月15日頃に行う流れになっています。還付金がある場合は、確定申告書に記入した口座に、1~2カ月程度で還付金が振り込まれます。
ちなみに、確定申告書にはマイナンバーの記入が必要なため、お正月の帰省時などに、親に確認しておくのがおすすめです。
兵庫県神戸市生まれ。慶応義塾大学商学部卒。損害保険会社、生命保険会社を経て1998年にFPとして独立。現在に至る。ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。千葉商科大学大学院MBA課程(会計ファイナンス研究科)客員教授。2児の母。主な著書に「『教育費をどうしようかな』と思ったときにまず読む本」(日本経済新聞出版社)、「奨学金を借りる前にゼッタイ読んでおく本」(青春出版社)。
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