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ハーバードと日本の架け橋(9)茶道・華道を共に体験
~受け手から“発信者”になる

ハーバードと日本の架け橋(9) 茶道・華道を共に体験~受け手から“発信者”になる
authored by HKIC

 HKICは「米国ハーバード大学と慶應、東大を始めとする日本の大学との交流をもっと盛んにしたい」という想いから、HCJI(Harvard College Japan Initiative)の支援を受けて、2015年に創設されたハーバード大生と日本人学生による少人数の合宿型国際交流プログラムです。今回は本番で行われたプログラムのうち、日本文化体験として行われた株式会社TeaRoomの方との茶道の裏千家体験と、いけばな小原流の方との華道体験の様子をお伝えしたいと思います。

―― 日本の「茶」で「和」を創る

茶道体験後にみんなでお薄茶を立てている様子。細かい泡を立てるのに苦労していましたが、みんな自分で立てたお茶をおいしくいただきました

 1日かけて行われた日本の文化体験では、まず午前中に松聲閣(しょうせいかく)にて株式会社TeaRoomの方のレクチャーの下、茶道の裏千家の体験を行いました。礼儀を重んじる茶道において、お茶をいただくという時間には、和室全体にピンと張りつめた心地よい緊張感がありました。それまでは松聲閣の美しい日本庭園や初めて見る和室に心を躍らせていたハーバード生も、目の前の1杯のお茶に対する姿勢は真剣そのものでした。お辞儀の仕方やお茶碗をとる動作の一つ一つに相手を敬う心が込められ、お茶を点てる側とそれをいただく側の双方で時間と空間を作り上げる茶道はハーバード生だけでなく、日本人参加者にとっても非日常的な体験でした。

 お茶会終了後に行われたお薄茶を点てる体験では、任意だったのにも関わらず全員が体験を希望し、綺麗な細かい泡を作るのに悪戦苦闘しながらも頑張っていました。また、印象的だったのがお茶を通じてハーバード生と日本人参加者との間にたくさんの会話が生まれていたことです。まさに"日本の「茶」で「和」を創る"という体験を共有できた時間でした。

―― お花と自分に向き合う瞬間

 続いて場所を移動し、小原流会館にていけばな小原流の華道体験を行いました。実際にいけばなを行う前には、小原流の先生がいけばなの心得や魅力を教えてくださいました。華道において扱うのは生きたお花で、その生きたお花と向き合うことで、私たちはお花からエネルギーをもらうことができる、というお話から始まりました。続いて、茶道や武道に挙げられるような日本の伝統文化には"道"という文字が入っており、これは精神的な側面を映していることをお話してくださいました。もちろん華道も例外ではなく、お花を生けている時間は目の前の生きたお花と自分に集中することで、日本文化の根底を流れる"道"の精神を感じ取ることができる、とのことでした。

いけばな小原流の方による華道体験での1枚。言語や人種の違いを越えて、同じ文化を共有しながら、一人一人が目の前のお花と自分に向き合い、黙々と作品を作り上げている姿が印象的でした

 こちらについては例として先生のいけばな教室に通う社会人の生徒さんが、日頃の疲れを抱えて教室に入ってきても、作品を通じて自分にも集中する時間を設けることで、帰る時には目に見えてすっきりした表情で帰っていく、というお話が挙げられました。さらに、華道の作品には正解というものが存在せず、だからこそ、その作品の細かいところにまで、いける人の性格が表れることに特徴があるということも教えてくださり、華道を体験する前から、その魅力に惹きこまれていきました。実際にお花をいけている時の様子を見ていると、ハーバード生と日本人参加者との間でも、作品にどことなく違いがみられたほか、お花の扱い方にも先生のおっしゃるような、その人らしさが出ていてとても興味深かったです。

―― 私たちがやるべきこと

 華道の体験後には事前学習を元に設定していた、「日本でいけばなを普及させる方法」と「アメリカで今後いけばなを広めていくためにできることは何か」という2つの課題に対するディスカッションとプレゼンテーションをグループごとに行いました。どのグループも限られた時間の中で、華道をどう広められるかという課題について、同じ時間・文化を共有し、それぞれが感じた視点を活かして活発に議論を交わしていました。

今回華道体験をさせていただくにあたって大変お世話になったいけばな小原流の先生。私たちに世界に誇れる、守るべき華道という日本の伝統文化の素晴らしさを教えてくださいました

 ここでは全てのグループの案をお伝えすることはできませんが、私たちにとって最も身近なツールであるSNSを有効活用した案や、いけばながもたらす経済効果を考えた案、教育や政策的な観点からの案など、どのプレゼンも非常にレベルの高いものばかりでした。中でも、華道という日本文化が書道や茶道と比べてまだ有名になっていないという現実問題がある中で、幼いうちからいけばなに親しんでもらうために、レゴブロックといけばながコラボレーションするという案は斬新でおもしろかったです。

 今回は単なる文化体験として終わってしまうのではなく、日本の伝統文化である華道が直面する問題に対して当事者意識を持ちながら臨みました。華道体験を行う前と後に行ったアンケートでは、伝統的という印象はそのまま、敷居が高いと思っていた人たちから、親しみやすさを感じるようになったという意見が多くみられました。華道は私たちのような若い世代にもその魅力が伝わるものであり、他の失われつつあると言われている日本の伝統文化と同様に、私たちが実際にその魅力に気が付き、発信していく必要があると強く感じました。

HKIC2018では2つの日本文化を共有し、日本人としても普段はなかなか機会のない価値観に触れることができた、貴重な時間でした。参加者の皆さんには、今後世界に羽ばたいていく中で、これらの伝統文化の受け手として終わってしまうのではなく、発信者として、その魅力を世界に広めてほしいと思います。