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食べる幸せ 広げたい!(5) 正装のエプロンでお出迎え
~集大成の学園祭、食が人の輪を繋ぐ

食べる幸せ 広げたい!(5)   正装のエプロンでお出迎え~集大成の学園祭、食が人の輪を繋ぐ
authored by お茶の水女子大学 Ochas

 ここは東京・文京区のお茶の水女子大学。毎年11月に行われる学園祭は、今年で69回目を迎えました。正門を進んで厳かな講堂の前に行くと、ピンクのエプロンが目に鮮やかに映えています。このエプロンが、私たちが食に関わっているという自己紹介代わりの正装であり、「Ochas」であることの自負かもしれない――13期Ochasが今まで届けようとしてきた「食べる幸せ」、それがこの「徽音祭(きいんさい)」に詰まっているのです。

独自レシピ・企業とのコラボ...想い詰まった商品ばかり

 徽音祭の名前は講堂の「徽音堂」に由来し、「徽」は美しい、「音」は声を意味しており、2つを合わせた「徽音」で美声を表しています。名前の通り立派な講堂は、有形文化財に指定されているほど由緒ある建造物。木目張りの廊下を奥まで進むと、一室の前にあるこじゃれた看板と食欲をそそる香りが出迎えてくれるのですが、これこそ私たちが出店する「Ochas Café」の入り口。毎年恒例のCaféと名のついた模擬店は、学校の中なのにイートインが利用できる雰囲気の良さ、そして提供する食品のクオリティにこだわり、お洒落な空間を演出しています。

 これが食に関わってきたサークル・Ochasとしてのプライドで、他団体とは一線を画すような模擬店を目指しているのです。Caféのコンセプトや装飾、さらに何十人ものメンバーや何百個もの商品を管理するため、運営方法やマニュアルまで全て自分たちで作りあげるから大変! 「Ochasって会社みたいだよね!」という話も聞こえてくるほどに様々なことを自らの手で運営しており、100人規模で積極的に活動してきました。

 そんなOchasの一年間の集大成として、この徽音祭ではOchas Caféと題した模擬店を開き、商品の販売とおもてなしをお客様に届けることが恒例となっています。また、少しでも多くのお客様に商品をお届けできるよう、目につきやすい講堂の前にも販売テントを設置し、2か所でOchasの商品を販売します。

 販売する商品はOchas のメンバーがレシピから考えたもの、また有名企業・近辺のお店・地方などとコラボしたもの...というように、自発的に生み出したものや学生の枠を飛び越えた本格的なものが揃っています。企画・開発・試作のように、何度も工夫を重ねて完成した商品は、どれも他には真似できないクオリティを目指した自慢の品ばかり。

 ネコ型クッキーは近くのショコラティエと共同開発し、お茶の水女子大学にいるネコをモチーフに。タルトやパイは企業とコラボし、季節感を意識した秋の味覚に合わせて上品に。コッペパンは広い世代に受け入れられるようなマイルドなカレー、そしてゴロゴロ入ったさつまいもで満足感たっぷりの味に......と、コンセプトがしっかりと決められた、見た目も味も魅力的な商品の数々。ラッピング方法や販売用のPOP・メニューのデザインまで自分たちで考え、多角的な面から食をプロデュースするOchasとしての強みが窺えるようです。

私たちにしかできない価値を形に

 また、Ochas が手掛るのは商品開発や案出しにとどまらず、商品の発注から会計など、色々な管理を自分たちで行います。そのため、企業との取引、作成すべき資料の締切、企画運営や当日のシフトなど、事務的で運営を円滑にするための事項など、慣れないことへの対応に苦戦することもありました。特に担当者の責務は大きく、また代々続いているOchasとしての自負もプレッシャーとなり、忙しい学業の傍らに合間を縫ってOchasの仕事をしてくれたメンバーも。販売を行う以上、そこには「おいしい・楽しい」だけでは済まないビジネスや金銭面が関わってくるため、どうすればOchasと企業、そしてお客さんとwin-winの関係を築けるか?と考え、少しでも多くの人に満足して頂けるよう、学生なりに工夫を凝らしてきました。

 販売員は勿論必要だけれど、こうやってメインで仕切ってくれたリーダーや裏で支えてくれているメンバーの努力があってこそ、Ochasの模擬店は成り立っていることを忘れてはなりませんよね。準備もギリギリまで時間をかけて、ひとつひとつの商品に妥協せず、大切に価値を作り上げていく。たったひとつの食べ物にも、誰かの協力、かけた労力や時間、そして食ベる幸せを感じてほしいと願う想い...数え切れないひとりひとりのストーリーがいっぱい詰まっている。そんな商品を、少しでも多くの人に届けたい。自分たちでやってみて初めてわかる、食べることの幸せやありがたみ、食を通して繋がる縁、「かわいい!」「おいしい!」の気持ちを生み出し、伝えることができるのかな・・? 不安と期待を胸に、13期Ochasの集大成は幕を開けたのです。

 開門と同時に、正門の前に並んでいた沢山のお客様が流れ込む。一生懸命作った商品にお客様が足を止めるたび、商品の背景にある原料のことや、コラボ先としてお世話になった企業やお店のこと、試作で食べたときのおいしさ......伝えたいことが溢れ出してくる。商品の魅力を一番わかっている私たちだから、お客様にも自信をもって魅力を伝えたい。皆の想いが詰まった商品を、一人でも多くの人に買ってほしい。食べたときに嬉しくなる気持ちを、幸せな瞬間を分かち合いたい。私たちが目指している「食べる幸せ」を直接広めることができる、Ochas13期としての最後の時間を大切にしたい―――なだれこむ想いを声にして、買ってくださったお客様に感謝を伝えます。

 「ありがとうございました!」の先で、お客様が写真を撮ってくれていたり、家族や友達、大切な人と一緒に食べてくれていたりするのを見ると、「おいしさ」に加えてもうひとつ「食べる幸せ」という価値を生み出せた気がして、こちらまで嬉しくなってきます。普段は見過ごしてしまいがちですが、目の前に広がるこの瞬間こそ、Ochasが望んでいた光景だったのだなあ、食べることの持つ力って凄いなあ...と改めて気づかされたのです。

 きっと、Ochasの一員でいられたからわかったのだと思うのです。使ってきた時間、労力、知恵、関わってくれた人たちと仲間、みんなの想い。何か一つでも欠けていたら、この商品も光景も実現しなかったかもしれない......大人数というアドバンテージを持ち、その熱意を持ったメンバーが集まったOchasというサークルだからこそ、この一瞬の価値を生み出すことができたのだと、曇りのない想いで言える気がします。食べることが幸せに変わる、その瞬間の架け橋になれた記憶は、きっと私たちにとっても、Ochasが教えてくれた「食べる幸せ」の一ページとして深く残り続けるでしょう。

「食べる幸せ」を探して

 Ochasはこの一年間も、ひたすらに走ってきました。食べることから始まり、レシピ作成、食育、社会貢献、商品開発および販売、食糧生産の原点を辿る、プレゼン、イベント...たくさんの経験を思い返せば、そこにはいつも誰かとの関わりがありました。食が人の輪を繋ぎ、気持ちを分かち合い、感謝する中でたくさんの幸せが生み出されたのです。

 食の機能は「栄養」「おいしさ」「生体調節」の一次機能から三次機能が言われていますが、Ochasが伝えたかったのはそれだけではなく、四次機能――いわば「食べる幸せ」。色々な形で広めていくなかで、私たち自身も食べる幸せを再発見する日々の連続だったように思います。私たちは、Ochasに関わると同時に、Ochasに育てられていた。そんなOchasが大好きなんだ、と実感しています。来期以降のOchasも、きっとたくさんの食べる幸せを生み出し、幸せが多くの人に広がっていくことだろうと願っています。