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池上彰の大岡山通信 若者たちへグローバル時代に学ぶ(下)
大学で世界知り、議論を

池上彰の大岡山通信 若者たちへ グローバル時代に学ぶ(下) 大学で世界知り、議論を
authored by 池上彰東京工業大学特命教授

 一般の高校生や大学生などを対象に、グローバル時代の学び方や生き方について行った講演の最終回です。若者たちから、科学技術、国際情勢を巡るさまざまな疑問が寄せられました。一部を紹介します。ぜひ一緒に考えてみてください。

◇ ◇ ◇

質問 人工知能(AI)が普及し、無くなる仕事もあるようです。将来、どんな職業を選べばよいでしょう。

池上教授 「AIが人間の仕事を奪う」という指摘が増えてきました。ただ、いまの子どもたちが働き始めるころ、いま存在しない仕事が生まれているかもしれません。

 「どの職業を選ぶのか」ではなく、「どんな働き方をしたいのか」と考えてみてはどうでしょう。興味のある仕事があるなら、アルバイトをしたり職業体験を積んだりしておくのもいいでしょう。起業の道もあります。

池上氏は「自らの人生に問いを立て、その答えを求めて」と強調した(10月21日、東京都豊島区の立教大池袋キャンパス)

質問 選挙の投票は義務化した方がよいと思いますか。

池上教授 投票率を上げるためには法律で投票を義務化した方がよいかもしれません。でも、実際に法律を導入したある国で、投票後に有権者に質問したところ、「誰に投票したのか忘れてしまった」と答えた人が続出したそうです。

 これに対し、米国のように有権者が投票前に自らの権利を登録する仕組みもあります。私たちには投票権があることが当たり前なのではなく、自らの権利として自覚し、行使することが大切なのではないでしょうか。

◇ ◇ ◇

質問 欧州連合(EU)加盟国にとって英国の離脱はどんな影響があるでしょうか。

池上教授 英国は経済規模が大きいうえに、国際金融の重要な役割を果たしています。英国に拠点を置くグローバル企業の欧州戦略や、英国と加盟国との輸出入、金融取引などにも大きな影響があるでしょう。

 ドイツやフランスなどは本音では英国に離れてほしくないのでしょう。再加盟の余地をつくっておきたいのではないでしょうか。一方で、他の加盟国が離脱しないよう、英国には厳しい態度で臨まざるをえないのです。

質問 中国経済が悪化し、崩壊するような事態は考えられますか。

池上教授 一時的に経済成長率が落ち込んでも崩壊することはないでしょう。広域経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)など、海外経済との結びつきも強めています。

 トランプ米大統領が「米国第一主義」を掲げています。世界に対する発言力に関心がないようです。その間隙を縫って、米国が消えた空白を中国が埋めようとしているように見えます。

質問 日本では「報道の自由」が揺らいでいないのでしょうか。

池上教授 日本には「報道の自由」について広く議論できる余地があります。メディアの役割は権力の監視です。心配なのは、権力者やその関係者の顔色をうかがい、厳しい批判ができなくなる事態です。「中立公正」を忘れず、さまざまな視点から伝え続けることが重要です。

 今回、若者たちがAIに未知の可能性と将来への不安を抱いていることがわかりました。自らの人生に問いを立て、その答えを求めるのは君たち自身のためです。大学で学ぶ意味のひとつは、世界を知り、仲間と議論し、経験を積んでいくことだと思います。一緒に考えていきましょう。

[日本経済新聞朝刊2018年11月26日付、「18歳プラス」面から転載]

※大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「現代史を歩く」「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。

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