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人事部の視点(18)キャリアでの失敗~採用担当者が見つけたモノ

人事部の視点(18) キャリアでの失敗~採用担当者が見つけたモノ
authored by 日経カレッジカフェ×人事部

 こんにちは。エリーパワー人事部で新卒採用を担当しております玉井亜以子です。今まで私がみなさんにお伝えしてきたコラムで、よく出てくるキーワードが「価値観」。人事部の視点(1)では、自分の価値観を知ること、(4)では価値観のブラッシュアップ、(7)では価値観を伝える勇気を持つこと、と実は価値観にフォーカスしているコラムが多いのです。

 価値観のコラムが多いのは、当社の新卒採用では会社と個人の想いを大切にしている、というのもありますが、実は、自分自身のキャリアで失敗した経験が大きく影響しているのです。

キャリアの幕開けは、司法試験

 私も学生時代に就活をしました。しかし、不思議なことに「企業で働きたい」という気持ちがなぜか湧いてこなかったのです。でも、絶対に社会の中で働きたい。しかも、生涯現役で長く働きたいという想いだけがあったため、「一人でも働ける仕事に就こう」と考えるようになっていきました。

 そこで私が考えたのが、「漫画の道」か「法曹の道」に進むということ。漫画は単純に好きで、かなり数多くの作品を読んでいたこと、いつか面白い作品を世の中に出せたらという気持ちがありました。

 しかし、結局選んだのは「法曹の道」。出身が法学部で法曹の道に進む人が多く、「みんながやっているから、自分も」ということ。また、両親や親戚が組織に属さない仕事をしていたので、まわりから理解を得らえると思ったこと。でも、一番大きかったのは、親に「漫画家になりたい」とは言えない、ということでした。

最初の失敗:「みんながやっているから」という理由で失敗

 進路を決めた私は、3年間本気でやろうと期限を決め、司法試験予備校に通い、勉強を続けました。勉強はすごく得意ではなかったけれど、やれば必ず結果が出るし、司法試験もできるだろう、と思っていました。

 しかし、1年を過ぎた頃から、勉強しても、しても、成績が上がらない。今まで成果が出せた勉強の成果が、出ない。段々と「私って何やってもだめ」と思い始め、踏切の音が聞こえる度に「いなくなりたい」と思うような追い込まれた状況になっていきました。

 こういう状況になったのは、私の考えが幼く、メンタルが弱かったこともあると思います。しかし、本当の原因は、自分の人生を決める大切な場面で、自分の想いではなく「社会やまわりがこうだから」という軸で決めていたこと、自分の想いを伝える勇気すら持てなかったこと、なのです。

試験に合格できなかった私は、「面白そうと自分が思えるのだったら、とにかく働いてみよう」と考え、企業で働き始めました。多くのことを学ばせてもらい、私の基礎を築いてくれた会社のことを一度も嫌だと思ったことはなかったけれど、個人的な事情が色々重なり1度目の転職をすることになるのですが、ここでまた、失敗をすることになるのです。

2度目の失敗:自分の仕事に対する思い込みで失敗

 転職先についても1社目と同様に考えていましたが、転職のきっかけが家族のことでもあったため、身近な人が「女性だし、今後のことも考えて、長く働けるワ―クライフバランスがとれる会社もいいんじゃない?」とアドバイスをくれました。「働くことばかりを見て、働くための環境を見ていなかった」と反省し、「女性が働きやすく、ワ―クライフバランスのとれる会社」「人事経験が活かせる会社」にしようと転職先を選びました。

 転職先は、確かに希望通りの会社でした。でも、仕事の進め方や考え方について、上司や他のメンバーと共感できない、価値観が全く合わない会社だったのです。早くも入社後3日目に「間違った場所に入ったのかも・・」と思い始めました。しかし、1社経験しかなかった私は「私の見方が変なのかも」と考えて反証を続けてみましたが、最後まで考えを覆すことは出来ず、深まっていくばかりでした。

どんな人にも居場所が与えられている
~居場所には良い・悪いはなく、自分に合うかどうか

 1社目で充実した仕事をさせてもらっていた私には、「仕事はこういうものだ」という思い込みが出来上がってしまっていました。2社目で、私とは全くかけ離れた価値観で仕事をする人達と接して、「どんな人にもその想いや価値観に合った仕事が世の中に存在する。仕事や会社は良い・悪いじゃなくて、自分と合うかどうかなんだ」ということに気づいたのです。

 ファーストキャリアの選択で「自分の想いを大切にできなかった」失敗をして、転職先で「価値観は会社によって違う、という当たり前に気づけなかった」失敗をした私は、「自分の想い・価値観と合う場所・人達と働かなければ、自分自身を活かせない」という基本的なことを、身をもって学んだのです。

 このように人生の節目で大きな失敗を繰り返した私は、他の人から見れば「うかつな人」かもしれません。しかし、「あの時、違う選択が出来たか?」と振り返っても、やはり、同じ選択しか出来なかった。もしかしたら、同じことを、他の人は成功から学んでいるのかもしれません。しかし、私は、失敗からしか学べなかったのだと思います。

 私は勉強も2社目も、結果3年続けました。「どうせ失敗だったなら、早くやめればよかったのに」と思う方もいると思います。しかし、私はこれで良かったと思っています。というのも、続けなければ、心の底から失敗だと思える結果が得られなかったから。

 私は「始める前から、成功や失敗という未来が決まっているものはない。どんなことも両方の可能性が混在しており、自分の行動や世の中の変化で、どちらかの可能性が削られていくのだ」と考えています。私は、その場所で成功の可能性を試し続けたから、心の底から「失敗」と思う結果を得ることが出来たのです。3年は、その結果を得るために必要だった時間です。

 どのタイミングでどう判断するかは、人それぞれ。時間を掛けなくても、心から失敗だと思える場合もあると思います。重要なのは失敗だと判断した理由に納得ができること。それが出来れば、気持ちよく次に進んでいけるのではないでしょうか。