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アメリカ南部奮闘記(10)研究テーマは浄水器のデザイン
自分で大学に申請して研究資金をゲット!

アメリカ南部奮闘記(10) 研究テーマは浄水器のデザイン 自分で大学に申請して研究資金をゲット!
authored by 香山葉子米ワシントンアンドリー大学

 いつも連載をお読みいただきありがとうございます。日本で高校を卒業した後、アメリカ南部の大学で学んでいる香山葉子です。レキシントンはすっかり寒くなっています。

カメルーンでのキャンプ経験で水の大切さを実感

 アメリカではいろいろな大学の博士課程出願締め切り日が差し迫ってきているところです。私はヨーロッパの修士課程いくつかとアメリカの博士課程いくつかに出願する予定です。今現在、まだオランダにある学校の1校にしか出願しておりませんが、出願を遅らせているのには理由があります。それは自分の研究のペーパーをまだ書き上げていないことが原因です。

物理・工学部主催のイベントで夏の研究について話をした

 アメリカでは特に自分の研究が発表されたかどうかが、入試にかかわってきます。というわけで、私はまさに、今の今までずっと急ぎ足で研究を進めていたのです。今回は自分がずっと研究し続けている課題についてお伝えしたいと思います。

 2017年の夏、私は機会に恵まれ、カメルーンにて友人二人と、エンジニアリングキャンプやキッズキャンプ、ミニスーパーの開設などさまざまな活動に取り組みました(第3回「想定外続きのカメルーン研修、中高で学んだ計画力で乗り切る」を参照)。

 その経験がきっかけで、きれいな水の貴重さを学ぶことになりました。その後、私からテーマを提案して、ワシントンアンドリー大学のエリクソン教授と浄水技術について研究をはじめることとなりました。学生が自主的に研究を提案できるのは、小規模なリベラルアーツならではの特権です。

 「研究」ときくと、いきなり実験室でなにかをするイメージがありますね。自分もはじめはそう思っていましたが、実際は違います。最初は文献をインターネットで探し、自分が決めた研究テーマについてひたすら自分を教育するところから始めます。2017年の秋学期、私と教授は現存する技術の最適な組み合わせで家庭浄水器をデザインすることを目標とし、研究を進めました。色々なジャーナルを読み漁りました。そして、教授が過去に率いたプロジェクトの体験談と自分がカメルーンの農村地域で暮らした実体験をもとに、より現地の条件に適したデザインを構築することを目標に設定しました。

研究室にて凝集剤の効果を確かめる

 色々な文献を読んでいくうちに、今、社会にある技術で、低所得な発展途上地域でも水を存分にきれいにできることがわかりました。しかし、多くの場合、そのような技術を導入する際、または維持する際に問題が起きるのです。自分の研究では、そのような障害を乗り越えられるような技術の組み合わせを探求しました。そして、たどり着いたのが、日本ポリグル社が開発した凝集剤とコンクリ―トフィルターの組み合わせです。

 コンクリートを用いたフィルターは安価で簡単に作れます。また、ポリグル社の凝集剤は東南アジアやアフリカの一部ですでに普及している実績があり、安価で安全、その上少量で効果てきめんという理由で選びました。私の提言はというと、この二つの技術をばらばらで使用するより、一緒に使用したほうが浄水時に効率的だという内容です。

大学の夏季活動基金に応募して研究資金を獲得

 去年の秋、エリクソン教授はネットでコンクリートフィルターに関する研究の要約を見つけたましたが、実験のレポート詳細が掲載されていなかったので、私にその研究の責任者であるブリンクマン教授に連絡するよう促しました。私はグーグルでブリンクマン教授のメールアドレスを入手し、連絡に至りました。その後、その教授から返信があり、スカイプでコンクリートフィルターの詳細について教えてくれることになりました。

水に含まれる大腸菌(左が処理前、真ん中と右が処理後)

 そこから私とブリンクマン教授の関係が始まり、メールのやり取りをしているうちに、研究室への招待をいただきました。こうして、私はコンクリートフィルターについて、そして浄水技術についてもより深く学ぶ機会を得ました。また、実験の際に急に必要になった機器を付近の大学から借りることとなり、その大学の教授の助けあって、自分の実験に対する理解が深まりました。

 この機会を得てから、私はワシントンアンドリー大学の夏季活動基金に研究活動を行うための資金を申請し、三千ドル弱をもらいました。こうして私はなんとか研究所現地での食住と往復の交通費をまかなうことができたのです。

 同じバージニア州に所在しながらも、研究先のスィート・ブライアーカレッジ(略してSBC)はワシントンアンドリー大学よりさらに広い敷地を所有しており、その割には生徒は300人程度しかいないため、とても空間の余裕を感じました。SBC で私同様、夏季の研究に励んでいる女生徒数人と仲良くなることができ、退屈しない研究期間を過ごしました。

「大学院は絶対都市が良い!」

 この経験を通じて感じたことは、研究は自分が思った以上に楽しいということです。大学一年時の自分は決して研究の道を歩もうとはしていませんでした。それはまともに研究することを知らなかったうえでの誤算だと、今は思います。もっと早い段階で研究する経験を得ることができたら、とも考えましたが、自分が一番興味をもっている学術分野で研究する機会を得るのは大変難しいことです。

フラタニティ(学生の社交団体)のパーティで友人たちと

 なので、今回ブリンクマン教授や実験機器の貸し出し先の教授にお世話になれたことも非常に「ラッキー」な出来事の一環だと認識しています。しかし、レキシントンよりも人里離れた土地での研究期間を経て、私は思いました。「大学院は絶対都市が良い!」。スーパーマーケットへのちょっとした買い物も車なしじゃままならない田舎生活は自分には合っていないのだとより一層思いが強まった期間でした。

 現在はその研究の続きもワシントンアンドリー大学でひと段落し、私は集めたデータを元にレポートを書いている最中です。この研究成果がどこかのジャーナルで発表できるよう、最善を尽くそうと思います。また、この先も博士課程において関連分野の研究を引き続き行うことができたら、と願いつつ大学院の願書を書いています。