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若者と寄付を考える「共感の連鎖」を体感して社会課題を解決
~ 今、学生には寄付を始めるべき理由がある

若者と寄付を考える 「共感の連鎖」を体感して社会課題を解決~ 今、学生には寄付を始めるべき理由がある

 皆さんは、クラウドファンディングで誰かの活動を応援したことはありますか? ネット技術の進歩によって生まれたこのシステム、実は昔からある「赤い羽根共同募金」やコンビニレジ横の募金箱などと同じ寄付を募る仕掛けです。寄付は私たちの生活に大きく関わっています。それは大学生にとっても同じ。11月に出版された「寄付をしてみよう、と思ったら読む本」(日本経済新聞出版社)の2人の著者、コモンズ投信会長・渋澤健さんと日本ファンドレイジング協会代表理事・鵜尾雅隆さんに「大学生が寄付を始めるべき理由」について聞きました。

◇ ◇ ◇

 お二人には12月4日に開かれた出版記念イベント「『寄付をしてみよう、と思ったら読む本』をあなただったらどう読む?」の会場で話を伺いました。

参加者同士も寄付について熱心に意見交換した

 若い世代に人気のあるコワーキング・スペースの「WeWork アイスバーグ」(東京・渋谷)に約40人が参加して、寛いだ雰囲気の中で二人の著者との交流が進みました。

 毎年12月は「寄付月間」。今年で4年目になる全国的活動です。英語での表現は「Giving December」となります。NPO、大学、企業、行政などで寄付にかかわる関係者が幅広く集まって、キャンペーンを展開しているそうです。イベントは「欲しい未来へ、寄付を贈ろう」という寄付月間のキャッチフレーズを紹介することから始まりました。

 ディスカッションではさまざまな質問や意見が出ました。「日本と欧米で寄付の思想がまったく違う」「キャッシュによる寄付とクレジットカードによる寄付ではどちらがやりやすいか」「良い寄付先がわからないんですけど」などなど。著者のお二人には、イベントが終わったあとに「大学生が寄付をすることの意味」について話していただきました。

ワンコインからでOK 継続して1つの活動を支援する

渋澤健さんの話 

渋澤さん

 大学生の皆さんは是非、1つの活動や個人に対する継続的な寄付をやってみてください。寄付の1つのキーワードは「つながり」だと思います。お金を投じることで、自分と世の中とのつながりができます。

 寄付はお金がたくさんないとできないと思っている人が多いけれど、そうでもありません。私のやっている長期投資の世界と似ています。

 ファンドで投資をするというと、何百億円単位などの大きなお金をイメージされることがあります。しかし長期投資では、色々な分野の投資信託で毎月少額ずつをコツコツと数千円からつみたて投資を始めることができます。

 学生もクレジットカードを持っていると思いますが、月1000円で自分の良いと思っている団体や人に寄付してみてください。選ぶ視点は「この人だったら自分のロールモデルになる」「この人には共感する」などで良いでしょう。貧困の問題でも環境問題でもよい。「この人とだったら、一緒に社会的課題に取り組んでいける」と思えるかどうかです。きっかけさえつくれば、そこから自分のフィールドがドンドン広がります。新たな世界が見えてきて、いろんな可能性が広がっていきます。

 寄付すると寄付者の気持ちがわかるわけです。すると、学生が自分たちで寄付を募る時に役立ちます。自分が寄付することによって「この人たちを応援して一体感を得た。もっと入り込んで寄付を続けたい」となるでしょう。あるいは「寄付しても何の連絡もなくて、しらけてしまった」ということがあるかもしれません。社会的課題についてクラウドファンディングをやる立場になったときに「どのように伝えた方が良いのか」というのをきちんと考えるうえで、とても参考になるはずです。

 最初は少額で構いません。バイト代のほんの一部。1千円でも、ワンコインの500円でも構いません。ただし、募金ではなく寄付をしましょう。募金は「チャリン」で終わりです。でも、定期的に寄付をしていると、その団体からどのようなメールが来るか、手紙が届くのかがわかります。クラウドファンディングで千円出したら、運営者がどんなリスポンスをするのかを自分を試せるわけです。

クラウドファンディングで卒業生が現役を応援

鵜尾雅隆さんの話

鵜尾さん

 世界を見渡せば、大学と寄付には深い関係があります。まず、奨学金という軸があります。アメリカやヨーロッパを中心に「ペイ・フォワード」という発想に基づいた制度が普及しています。例えば大学4年生が、卒業前に0Bから寄付を集めます。集まった資金を1年生のための奨学金に充てるわけです。また、大学の学びの中で、お金の教育、つまり金融教育の一環として寄付教育をしています。日本では貸与型の奨学金が主流なので、若干事情が異なりますが。

 日本社会に根付いている寄付を見てみると、次世代への継承を目指しているものがとても多いですね。若い人たちのことを考えてサポートする寄付です。典型例は、交通事故遺児を支援する「あしなが育英会」や子どもの社会的孤立をなくそうとする「PIECES(ピーシーズ)」があります。

 大学では、学生を応援する目的で新しい形態の寄付が広がり始めました。京都大学では、2015年から「京大生チャレンジコンテスト(SPEC:Student Projects for Enhancing Creativity)」を開催しています。コンテストをパスした学生のアイデアに対し、京都大学基金が寄付募集を行い活動資金として支給する仕組みです。

 4回目を迎えた今回は、学術的な調査のほぼ行われていないパプアニューギニア南部を探検する「パプアニューギニア 未調査エリアへの探検」や、着物に込められた思いをはじめとする日本文化を次世代へと引き継ぐための「Kistory ~ 思いをこめて次世代へ ~」など6つのプロジェクトが選ばれています。プロジェクトの内容はウェブ上で公開し、2019年1月31日まで寄付を募っています。

イベントの最後には全員で記念撮影

 東京大学には部活動を応援する寄付プロジェクトがあります。OBらに、東大スポーツ振興基金運動施設へ寄付を呼び掛けています。卒業生には、大学自体に寄付するのでなく、「アメフト部に寄付したい」とか「サッカー部を応援したい」という気持ちを持つ人が多いのです。ロイヤルティの高い人たちに上手く訴えかけているのです。

 寄付のベースにあるのは「共感」です。共感の連鎖を産み出すという点からみると、大学生は共感のハブになりやすいという特徴があります。友達が多いとか、インターカレッジのつながりがあるとか。我々もイベントをやるとき、大学生が入った方が共感の連鎖が起こりやすいことを実感しています。学生の皆さんも寄付に関心を持ってください。アクションを起こせば、共感の力を実感できると思います。

寄付をしてみよう、と思ったら読む本

著者 : 渋澤 健, 鵜尾 雅隆
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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