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誰も行かない所へ行こう(4)まだまだ延びる秋芳洞!
~巨大な新支洞の先は? 調査最前線

誰も行かない所へ行こう(4) まだまだ延びる秋芳洞!~巨大な新支洞の先は? 調査最前線
authored by 山口大学洞穴研究会

 こんにちは!洞穴研究会60代の金清です。僕は大学3年生なのですが、洞窟に入ってばかりで卒論やら就活が全然進んでいません。私の人生が破滅に向かっている今日このごろですが皆様はどうお過ごしでしょうか。

 今回のテーマは秋芳洞調査最前線です。まず秋芳洞について説明しないといけませんね。特別天然記念物、秋芳洞は日本を代表する大洞窟です。洞内は観光開発されていて、一般の方でも照明でライトアップされた洞窟を楽しむことが出来ます。観光地としても有名ですから中国、九州に住んでいる人は修学旅行等で行ったことのある人も多いと思います。まだ行ったことのない人は是非行ってみてください。きっと楽しめると思います。

最新調査では11kmを超えるとされている

殊勝殿に登る竪穴を15mほど登ったところ©Takeshi Murase

 秋芳洞の長さですが最新の調査では11kmを超えるとされています。秋芳洞に行ったことのある人は「あれ、そんなに長かったっけ?」となったかもしれませんね。それもそのはず秋芳洞は一般公開されているのは1kmほどで、それ以外は非観光洞部、つまり一般の方は立ち寄れない場所なのです。

 そんなに長い洞窟ですから前回の記事でお話した測量調査も大変です。とはいっても秋芳洞はとっても有名な洞窟ですから古来から現在までさまざまな調査が行われてきました。その結果、2000年ごろには大体9kmくらいだということが分かっていました。

 時は2014年、秋吉台カルスト洞窟学術調査隊(洞穴研究会も加わっています)が秋芳洞の調査を始めます。この目的は主に、秋芳洞の再測量でした。というのも以前に行われていた測量はかなり昔に行われたもので、測量方法も古典的ですから誤差が大きいと考えられていたのです。そこで現在の測量技術(前回の記事で装備が古い散々と言ったばかりですが、レーザー距離測定器など新しくなっている部分もあります)でキチンと隅々まで測ってやり、もし以前の調査で測量されていない所があれば、追加で測量しようというわけです。これでついに秋芳洞もついに10km超えの洞窟になるんじゃないか・・?という希望を持ちながらプロジェクトが開始されました。

殊勝殿へ登る20mの竪穴を登りきった場所。円状の空間が見える©Takeshi Murase

 僕も初々しくも大学1年生のときに、観光洞部(一般公開されている部分)の再測量をやったことがあります。なんにしても観光洞部ですので、一般の方がたくさんいるのですが、その中をヘルメットをかぶって三脚(測量に使う装備です)を担いだ、泥だらけの男共が歩いて測量していくわけです。あのとき、私達は何者だと思われていたのでしょうか。工事の人? 猛烈な洞窟マニア? 変態?・・・いずれにしても目が痛かったです。

再測量調査で巨大な支洞発見、2017年夏に記者発表

殊勝殿。青黒い部分はコウモリの糞の影響©Takeshi Murase

 そんなことをしながらどんどん秋芳洞の測量を進めていきました。さらに非観光洞部でも同様に調査をしていきました。非観光洞部では、調査されていない場所が多くあったため、探検も多かったように覚えていきます。

 すこし話が変わるのですが非観光洞の中には「山」があります。「洞窟の中の山」なんて全然イメージできないかもしれませんが、非観光洞部の特別開けた場所にできている山で、僕たちは「須弥山」と読んでいます。ちなみに須弥山というのはどうやら仏教用語らしく、須弥山の他にも秋芳洞のいろいろな場所で仏教用語の名前がついています。昔の人も秋芳洞を見て感極まり、思わず仏の存在を垣間見たのかもしれませせんね。

 その須弥山の頂上付近で天井を眺めると、豚の鼻の穴のように2つの穴が空いています。その片方は「風穴」といって相当前から外に繋がっているのが分かっていたのですが、もう片方は長らく未探検でした。皆、「あの先には何があるんだろうか・・・」とは思っていたのですが何しろ50mほどの高さのある天井にぽかんと空いた穴だったので、どうやって行くのかもわからず、探検の難易度が高いので誰も行っていなかったのです。

須弥山。国内の洞窟で2番めに大きい空間©Takeshi Murase

 2016年の年末、ここを初めて探検しようという計画が立ち上がりました。隣の穴である風穴から探検できるという目処が立ち、最新の探検手法を使えば安全に探検できそうだということが分かってきたからです。残念ながら僕はその計画には参加できませんでした。というのも、未探検部でしかも探検難易度が極めて高いとなると洞窟技術のプロフェッショナルでないと到底たどり着けないのです。そのため参加メンバーは日本でもトップレベルの人を集めました。洞窟探検のゴールデンチームですね。

 その調査の結果、この支洞(最奥に向かって延びるルートを主洞、そこから延びるルートを支洞と呼んでいます)がかなり続いていることがわかりました。大体、こういった支洞の調査はすぐに支洞が終わってしまって泣く泣く帰るというパターンが多いのですが、この調査ではまだまだ支洞が続いていて時間が足りなくなって帰ってきました。嬉しい誤算ですね。後日、調査に参加した先輩に話を聞いたところ「めちゃくちゃ熱い探検やった!」と興奮気味に語られたのを覚えています。

 こうした再測量調査によって、10kmを超えたこと、さらに新たに巨大な支洞が発見されたことを発表しようということで2017年の初夏に秋芳洞科学博物館で記者会見をしました。様々なメディアの方々に興味を持っていただいて、記事や番組の中で本会のことを紹介していただけました。本会が少し有名になって嬉しかったのを覚えています。

 このあとも継続してこの支洞の調査を行い、現在では秋芳洞は11kmを超えることが分かっています。この洞窟はどんどん延びています。成長期ですね。

ほかの洞窟と繋がっている可能性が

 さて「秋芳洞調査最前線」と銘打ちながら「全然、最前線の情報がないじゃないか!」という怒りに震える方がいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。ここから本邦初公開の情報です。

 実は新支洞の測量調査を続けているとその支洞が、ある洞窟と極めて近くなっていることが分かってきました。秋芳洞エレベータ口(秋芳洞にはいろいろな入り口があります)から直線距離で150mほどのところに「無名穴(むみょうあな)」という洞窟があります。「無名」という「名前」がついているという矛盾を孕んだ洞窟ですが、この洞窟は秋芳洞と繋がっているかもしれません。洞窟自体の特徴は秋芳洞新支洞と無名穴とかなり似ています。もともとは同じ洞窟であったと推測出来ますが、おそらく天井が崩れて埋まってしまったのだと思われます。洞窟では結構こういう事があるんです。

ZEROの間。現在の秋芳洞新空間の最奥部に当たる場所。鍾乳石が多い。ここよりまだ洞窟は続いている©Takeshi Murase

 記事作成時から一週間後の調査でいよいよこの連結を確認する調査が行われます。洞窟には気流がありますから秋芳洞新支洞側から煙を出して無名穴側で煙が確認できれば、晴れて「連結確認!」ということです。気流調査と僕たちは呼んでいる手法です。「なんだか原始的だな」と思われるかもしれませんが、2014年に秋吉台にある洞窟の一つで大正洞(天然記念物)が気流調査によって近くにある犬ヶ森の穴という洞窟と繋がっていることがわかったなど、意外と信頼と実績のある調査なんです。今回の無名穴の調査でも良い結果になるといいですね・・・

 というわけでつらつら秋芳洞について書いて見ましたがどうでしょうか。観光地としての秋芳洞の裏では僕たちが暗躍して秋芳洞を伸ばそうと尽力しているのです。前回の記事で洞窟の調査ってやっぱり地味じゃん!と思った方も、これを聞くと少しは楽しそうだなと思っていただけたなら幸いです。とりあえず来週の調査頑張ってきます。

 というわけで次回は連載最終回ということで、気合い入れて書いてきます。次回もお楽しみに!!!

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山口大学洞穴研究会OBで洞窟写真家のTakeshi MuraseさんのSNSです。ご覧下さい。
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