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新体操のほっち(11)五輪本番、あふれ出した感謝の気持ち
~夢や目標を持つ大切さを伝えていければ

新体操のほっち(11) 五輪本番、あふれ出した感謝の気持ち~夢や目標を持つ大切さを伝えていければ
authored by 坪井保菜美新体操元日本代表

 みなさんこんにちは、新体操の坪井保菜美です。 "平成" の次は何になるんでしょう。そんなことをふと考えながら、この連載のついに最後を書かせていただいております。早いもので、これまで10回の連載を書いてきました。不慣れな文章ではありますが、いつも読んでくださって本当に感謝しています。

 さて前回に続き、今回は主に北京オリンピックについてのお話をさせて頂きたいと思います。実際に私たちが北京入りしたのは、オリンピックが始まり中盤に差し掛かった頃。なので、開会式は日本のテレビで見ていたんですよ♩ すでにテニスやバドミントンなどの競技は終わっており、スーツを着た日本選手団の方達が帰国するところに、私たち新体操は現地入りをしました。

"ありがとう" の気持ちを込めて精一杯踊る

 オリンピック期間中、私たちが過ごしていた選手村は、各国の選手団が宿泊するマンションが一つの街のようにずらりと並んでおり、それぞれの建物に国旗が付いていました。食堂はとても広く、色んな国の料理を食べることができたり、中でもマクドナルドやコカコーラのカラフルなドリンクが目立っていました(海外の飲み物って赤とか緑とか青とかあるんですよ)。その中に、お茶を見つけたので飲んだんです。飲んだ瞬間・・めちゃくちゃ甘くて衝撃的だったのを覚えています。汗  イメージしている味と違うものだっただけに驚きました。中国は甘い?んだとか^^;

 続いてこの選手村内で特に印象に残っている事があります。それは、選手の表情。新体操はオリンピック最後にやる競技でした。自分達の試合を控え、その前にどんどん終了していく他競技の選手たち。私たちが宿泊していた4階のベランダから出発していく選手たちをよく応援していたんです。

 試合を終え、笑顔で帰ってくる選手もいれば、そうでない選手もいました。言葉が通じない選手たちからもそれは全身で感じられ、私は笑顔でここに戻ってきたい!と誓った瞬間でもありました。食堂の入り口付近で、首からメダルをかけた陸上競技のウサイン・ボルト選手が、おそらくジャマイカの選手たちとあのポーズ(←両人差し指を斜めに突き上げるあのポーズです!笑)をしながら喜んでいる姿はかなり心に残っています。

 そんな貴重な経験を数多くした北京オリンピックに、自分も選手の1人として活躍できたことを心の底から嬉しく思います。五輪と日本の国旗を身に付ける重みは、私にとって人生一幸せな事に違いありません。

 実際にオリンピックの舞台で踊っていた時の気持ちというのは、まずは兎にも角にも必死!!ではありましたが、やはり一番初めにくるものは感謝でしかありませんでした。自分ひとりの力では決して来られなかった道ですし、仲間であり、良きライバルがいる中、努力なしでは勝ち取れなかったポジション。死にものぐるいで戦うことが出来たメンバーにまずは感謝。そして共に生活しながら心と身体を育ててくれたコーチ、離れているけどいつも繋がっていた家族の存在。家族の支えなしでは私はいません。たくさんのサポート、応援してくださる方達の声。これらがあって毎日を乗り越えることができたんです。

 "ありがとう" の気持ちを込めて精一杯踊りました。

現実は厳しかった

 正直、チームとしての結果は納得のいくものではありませんでした。日本代表としてそれだけが心残りと申し訳なさと。。かなりの時間心に深い穴が空き、ポカーンと魂が抜けたような・・そんな感覚が続きました。

 今までやって来たことを振り返り、これが今の実力なんだと理解もできました。まだまだ力不足だったこと、私たちに足りないものや課題も多く見つかりました。

 悔しい・・この感情は、それまで費やしてきた時間と掛けてきた想いが強ければ強いほど大きいものなんだと思う。自分の想いとは全く異なる現実と向き合う過酷さを身に染みて感じました。1人のミスは全員のミス。団体の難しさも再確認。

 ただ後悔しても腐るだけ。負の感情ではあるが、向上心がなければ湧かない感情。この悔しさを力に変えることができれば、人の成長は驚きを隠せないものへと進化する。

 実は、この北京オリンピックでフェアリージャパンは解散と言われていたんです。しかし、このままでは終われないというチーム全員の気持ちが一つになり、翌年の世界選手権をかけ、再びリベンジすることを決意しました。悔しいという感情は、また新たに私たちを奮い立たせてくれたのです。

 そして翌年の世界選手権では、世界4位という日本初となる快挙を成し遂げ私は引退をしました。北京での悔しさから、『自立』をテーマに戦いました。失敗は確かに失敗だけど、、本っ当に悔しいけど、、でもこの経験なしでは絶対にわからない価値のあるものだと思います。そしてこの感情や記憶はいつまでも心に残り、時間が経てば経つほど良きものに変化します。

 引退後今も尚、何を挑戦するにも新体操で得た経験は生かされ続けています。失敗や悔しさは、私の心と身体を大きく成長させてくれるものでした。

みなさんの夢や目標はなんですか?

 たった一度の人生、失敗も成功もたくさん経験して、何事にも一生懸命になれる時間を増やしたいです。私は引退してから、新体操以外の色んなことに興味を持ちました。色々と経験していく中で、楽しいと思えるものに出会えたり、やり甲斐を感じたり。それが私にとってヨガや、絵を描くことでした。続けていくうちに、新たな夢や目標を持つこともできました。ヨガはすでに今年で10年目を迎え、インストラクターとしてレッスンをしています。もちろん通うのも大好きなので、いろんなクラスを受けながら日々学んでいます。

 実は今、新体操的要素を踏まえた新しいヨガというのを考え中なのです♩

 また絵に関して、昔から絵や物を作ることが好きでしたが、ここまでどはまりするとは自分でも驚きです。弟が東京芸術大学の日本画を卒業しており、私とはまた違ったジャンルで夢に向かって頑張る姿に影響され、私も描いてみようっと、という何気無い感情がきっかけで今に至ります。絵は私にとって完全に趣味ではありますが、今では個展や雑貨など自分のデザインしたものが作品として形に表すことができたらなぁと、絵の時間を大切に過ごしています。

私はこの連載で何度もお話しに出てきたかと思いますが、自分の感情を伝えるのが不得意だということ、そしてお話が苦手だということ・・これは相変わらずです。けれども新体操の経験は本当に大きなもので、今では苦手意識のあるものこそ積極的に取り入れていこうと心がけています。

 自分の経験をもとに、子供達に夢や目標を持つことの大切さといった内容のお話をする機会を増やしています。私の経験が、少しでもみなさんの活力になるのであれば、私もこれまで頑張ってきて本当に良かったなと素直に思えます。あの苦しみはこのためにあったんだと思うと、辛さも幸せに変わります。

 という事で、何事にもまずは行動あるのみ! 色んなことに積極的になり、ひとつでも多くのことにチャレンジしていってほしいと思います。周りの貴重な意見を参考にしながらも、最終的に決断するのは全て自分☆ その決断に責任を持ち、自分自身を受け入れてあげてください。自分がどんな将来を歩んでいきたいのか想像を膨らせながらも、選択肢を増やせるよう経験をたくさんたくさん積んでくださいね! 私も自分に言い聞かせながら、今皆さんと実際にお話ししている感覚です。

自分の気持ちを大切にして、そして信じてあげてください!
自分の1番の味方は自分自身だと私は想っています。

 最後になりましたが、これまで11回の連載を書かせて頂きました。読んでくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんの将来に期待しています☆ 楽しみですね!

ありがとうございました。
新体操元日本代表、坪井保菜美