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日本経済新聞「未来面」
学生から大和ハウス工業社長へ提案
「どこへでも行ける家」

日本経済新聞「未来面」 学生から大和ハウス工業社長へ提案 「どこへでも行ける家」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。今回は大和ハウス工業社長・芳井敬一さんからの「ワクワクドキドキ 帰りたくなる家とは?」という課題について、学生の皆さんからの多数の投稿をいただきました。

【課題編】「ワクワクドキドキ 帰りたくなる家とは?」

芳井敬一・大和ハウス工業社長

芳井敬一・大和ハウス工業社長

 「芳井さんにとって家とは何ですか?」 この質問は建設現場で近隣の方から私が実際に受けた質問です。とっさに「自分がほっとできる場所です」と答えたのを覚えています。家に帰って自分をリセットし、翌日また頑張れるようにする空間が私は家の価値だと思っています。

 では、どんな家ならほっとできると思いますか。もちろん家族の存在も重要ですが、家の機能でいえば、私の場合、音楽や舞台が好きなので、音楽を聴ける場があることがほっとできる条件となります。今も昔のレコードを取り出してよく聴きますが、当時の歌に耳を傾けると、その時代に戻れるから不思議です。

 世の中には家に帰りたくないという人もいるようです。それは恐らく家の中に自分の居場所がないからだと思います。昔は家が狭く、子供たちがなかなか帰ろうとしなかったので、大和ハウス工業創業者の石橋信夫は庭に勉強部屋をつくることを提案しました。子供たちは自分の基地ができたことを喜び、それから早く家に帰るようになりました。

 そう考えると、これからの家づくりで大切なことは「ほっとできる空間」「自分をリセットできる空間」をどう提供できるかだと思います。

家の価値を考える

 人工知能(AI)やセンサー技術の進化により、最近のスマートホームでは顔認証などで扉が自動的に開いたり、部屋の温度を調整したりできるようになりました。自分が普段行っている家の操作をコンピューターが代わってくれるわけです。ただやり過ぎると不快に感じます。

 私はこうした技術を「先回り」と呼んでいますが、本当にほっとできる場所は、適度に選択の余地を残しつつ、自分が望むことを自然に提供してくれる家だと思います。例えば壁にかけた絵画や天井の照明などが四季や時間帯に合わせてさりげなく変わってくれたら、とても気持ちがいいと思いませんか。これは日本人が持つ「おもてなし」の精神にも通じるところだと思います。

 それから最近のファミリー世帯から感じるのは、自分が住みやすいように家に手をかけて育てていこうという発想です。欧米では昔からある考え方ですが、日本でも最近は「自分に合った家に住みたい」「趣味の部屋を持ちたい」といった需要が高まっているからでしょう。

 当社は音が周囲に漏れない「奏でる家」という防音室を提供しています。従来の防音室より安価なこともあり、とても人気です。楽器を演奏したり、音楽を聴いたりするのに適しているからだと思います。

 さて今度は私から皆さんに質問させてください。皆さんにとって「ワクワクドキドキする帰りたくなる家」とはいったいどんな家でしょうか。私たちの家づくりに生かしたいと思いますので、アイデアやご意見をぜひお寄せください。たくさんのご投稿をお待ちしています。

(日本経済新聞2019年1月7日付)

◇ ◇

【アイデア編】

| どこへでも行ける家

 加藤 優芽(法政大学経営学部3年、21歳)

 青く輝く海へ行くことも、エベレストの頂上に行くこともできる家がほしい。床から天井まで全面がディスプレーとなっていて、高性能のスピーカーや、その場所を肌で感じられる空調設備も備えている。私たちは「~に行きたい」と言うだけでいい。音声に反応して、床と壁、天井に私たちの見たことのないものが高い解像度で映し出される。スピーカーと空調設備が、設定に合わせて街の喧騒から凍りつくような吹雪まで忠実に再現してくれる。しかもこの風景はセンサーで捉えた私たちの動きに合わせて移り変わる。

 こうすることで、マンハッタンを歩くことも、パリでアフタヌーンティーを楽しむなんてこともできる。自転車があれば、古都京都をサイクリングするのも趣があっていいかもしれない。私たちは家に帰ることを、一日の終わりと考えてはいないだろうか。帰ってから何かが始まる。そんな家なら、ワクワクして帰りたくなる。

| お母さんが怒らない家

 小牟田 朱里(北九州市立ひびきの小学校2年、8歳)

 ワクワクドキドキして帰りたくなる家は、お母さんもそう思う家です。ということは、お母さんが怒らない家です。そうなれば私も嬉しいです。

 家の中に素敵な色があると、とても気持ちが晴れます。だから家の壁の色は、オレンジとか明るい色がいいです。

 床はバスケットボールの試合の時みたいに、何かの映像が映ったりしたら面白いなと思います。それから、玄関に置いてあるマットに乗ると、マットが自然に動いて移動させてくれたら楽しいし、楽になると思います。買い物袋を両手に持ったお母さんも、台所までマットで移動できます。

 2階に上がる階段は、一段一段がピアノのようになっていて、一段のぼるたびにけん盤のように色々な音が出ます。そういう家は、私もお母さんもワクワクドキドキして帰りたくなると思います。

| 気候に応じて変化する家

 金子 聖佳(法政大学経営学部3年、21歳)

 気候の変化に応じて家の内壁・外壁が変わる家であれば、帰り道に今日の家はどうなっているかを想像しながら帰宅できると思う。洋服をコーディネートする際に、暑いから涼しげな色を取り入れようと思うように、家自体の色が変われば、四季の移り変わりを目で楽しむことができるようになる。

 太陽光の熱や紫外線に反応して色が変わったり、雨に反応して模様が浮き出てきたりする壁紙や塗料を外壁に利用すれば、自然に模様替えができる。

 さらに、外での変化が家の中にも伝われば、内壁も変えることができるのではないだろうか。外からの影響を受けやすい窓の周り、玄関先に気温・湿度に反応する壁紙を利用すれば、家の中に居ながら季節の移ろいを実感できる。気候が変わるたびに家自体が様々な表情を見せることで、帰る楽しみができ、家に帰りたくなるだろう。

◇ ◇

【講評】芳井敬一・大和ハウス工業社長

 私は「家」に必要なのは「ほっとできる場所」「やすらぎの場」「気分転換できるところ」だと思っていましたが、皆さんの思いも同じだなと安心しました。昭和の時代によくいわれた「一家団らん」を今の若い人たちも求めているのだと改めて気付かされました。

 中でも一番はっとさせられたのが8歳の小学生からいただいた「お母さんが怒らない家」です。家に帰れば笑顔で出迎えてもらえるという安心感は、何よりの癒やしとなります。そう考えると、普段から家を守って出迎えてくれる人の満足感こそが、実はそこに住まう人全員がほっとできる大切な要素なのかもしれません。

 「家に帰ればどこへでも行ける家」というアイデアもなるほどと思いました。家に帰ってリセットするだけでなく、家に帰っても物語の続きが見られるということはとても大事ですね。家の壁が大型のスクリーンになって、まるでマンハッタンを歩いているような気持ちになれたら、確かに家に帰りたくなります。

 「気候に応じて変化する家」にも共感を覚えました。家づくりではとかく内装にこだわりがちですが、外装こそ住んでいる方の主張が表れるところであり、家の顔でもあります。私たちもプロジェクションマッピング技術を使って外装を変えられる家を検討していますが、そうした個性ある家づくりを今後も目指したいと思います。

 皆さんのご意見はどれもお客様の貴重なご提案です。ここではご紹介できませんでしたが、家づくりの工事の一部にお客様自らが参加していただくのも、今後の新しい家づくりの手法だと思います。今回の皆さんのご意見をぜひ私たちの家づくりに役立てさせていただきたいと思います。

(日本経済新聞2019年1月28日付)

【「未来面」からの課題】
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