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僕ら流・社会の変え方(1)ゴミ拾いはこんなに「かっこいい」

横尾俊成 authored by 横尾俊成NPO法人グリーンバード代表/港区議会議員(無所属)
僕ら流・社会の変え方(1) ゴミ拾いはこんなに「かっこいい」

横尾俊成の僕ら流・社会の変え方(1) 

 街中で派手な格好をしてワイワイ騒ぎながらゴミを拾っているグループを見かけたことはありませんか? 私もその一人です。全国で「ゴミ拾い」活動を展開しているNPO法人グリーンバード代表(東京・港区議会議員)の横尾俊成です。このたび、この連載を担当させていただくことになりました。

 様々な調査によると「社会のために役立ちたい」「(ボランティアなどの活動に)機会があれば参加したい」と考えている人は、日本人全体の6割にもなるそうです。2011年3月の東北地方太平洋沖地震以降は、それが7割になりました。残りの3割のうち、2割が既にボランティアなどの経験をしたことがある人。

 そして1割は、「そんなの偽善だ。関係ない」と思っている人たちです。この連載は、「自分の力を社会のために還元したい。でもどうすればいいか良くわからない」7割の人たちに読んでもらいたいと考えています。

「ビジネス」と「ソーシャル」の交差点

 普通のビジネスパーソンからNPOの代表、そして政治家に転身した僕がこれまでの経験の中で感じたこと、気づいたこと、ビジネスセクターとソーシャルセクターの両方を経験した自分だからこそ分かる公共との接点の持ち方、それに「社会を変える」のはじめかたを、ありのままに伝えたいと思います。

 「政治家や専門家だけに任せるだけでは解決できない社会課題がたくさんある」と気づいてしまった、「自分のできる範囲の中で、自分の住むまちや社会を良くしたい」と考えている――。そんな人たちも大勢いるでしょう。

 このコラムを通じて、自分の身近な場所で行動をはじめ、社会に対して気軽に意見やアイディアを言いやすくなったり、社会の仕組みや制度を変えることで世の中の様々な課題を解消する方法を身につけたりしてもらえれば幸いです。

 初回ですので、まずは平凡な大学生だった僕がどのような経緯でまちや社会と関わるようになったのかという、ちょっとした自己紹介からはじめたいと思います。

NPO法人グリーンバードでごみ拾いをする若者たち

僕が20歳だったころ~9.11の衝撃と無力感

 私がちょうど20歳だったころ。自分にとって転機となる事件が起きました。「9.11」――そう、アメリカ同時多発テロ事件です。私はこの事件で、大切な友人の親戚を亡くしました。アメリカへの留学から帰ってきたばかりの頃でした。

 それまでろくに勉強もせず、頭を金色に染めて毎日飲み会ばかりしていた私は、自分の近しい人を亡くしているのにも関わらず、「国際問題」「テロ」という自分とはあまりにも遠い存在に、どうすることもできませんでした。

 とてつもない無力感に苛まされました。長い間悩み、仲間とも議論しましたが、すぐに解決策は見当たりませんでした。そして、圧倒的な知識のなさを補うべく、就職は辞め、大学院に進んでもう一度勉強し直すことにしました。イスラム社会学を学ぶためでした。

 同時に、「頭で考えてばかりでなく、とりあえず動いてみよう」と国際問題の解決に取り組む様々なNPO・NGOの活動に参加しました。仲間と学生団体を立ち上げて、イラクやアフガニスタン、イスラエル、アメリカ、中国や韓国など紛争地域に住む若者を日本に呼び、議論を重ねるイベントも行いました。

 動いてみたら、様々な反響を得ました。テレビや新聞の社説などにも取り上げていただき、続いて動く若者がたくさん生まれました。また、イベントをつくる過程で更に多くのNPO・NGOに出会い、日本にも凄い団体がたくさんあることを知りました。

動いてみたら、見えてきた世界。

 再び就職活動の時期を迎えた時には、自分が社会の中で成し遂げたいことがはっきり見えてきました。これまで出会ってきたNPO・NGOの活動自体は素敵だけれど、どこかダサい。世の中の多くの人(とりわけ、僕みたいにぼうっと過ごしていた学生)にはその活動が伝わっていない。「せっかくのいいこともそれを伝える努力をしなければ、小さな運動や自己満足で終わってしまいます。

 人とお金を集めれば多くの人の命を救うことができる。それには、プロモーションの力が必要だ。」―自分なりにNPO・NGOの問題点を考えた結果、コミュニケーションという「武器」を持ってこの分野を盛り上げようと広告会社の博報堂に入りました。

 博報堂で広告を学びつつ、今で言うところの「ソーシャルビジネス」を志向する傍ら、現場で若者の社会参加のハードルを下げるような活動を行いたいと思い、後輩とともにNPO法人グリーンバードの「赤坂チーム」を立ち上げました。まちの人に「よそ者」扱いされるのではないかと、はじめはかなり躊躇していましたが、動いてみたら予想以上に町会や商店会の方々が受け入れて下さいました。

ゴミ拾いから、まちを変える。

 グリーンバードとは何か。ここでどんな活動をしている団体か、ちょっとだけ紹介したいと思います。

 グリーンバードは、北は北海道から南は沖縄まで、それに海外のパリとスリランカ、ガーナ、シンガポール、アメリカを合わせて全部で60のチームを持ち、各地でまちのゴミ拾いをしたり、まちづくりのサポートをしたりしているNPO団体です。会員制度はありませんが、活動の呼びかけをすると各チームともだいたい30〜40名が集まり、年間3万人近くが参加してくれています。

 ゴミは、拾っても、拾っても、なかなかなくなりません。拾っているだけだとすぐにまた捨てられ、イタチごっこになってしまいます。ゴミを「捨てる人」を減らさなければ、まちは一向にキレイになりません。

 では、ゴミを捨てる人を減らすにはどうすればいいのか。それは、①ゴミを拾っている人をまちの中で目立たせることです。ゴミ拾いをしている人が目立っている場所では、人はなかなか捨てられません。そしてもう一つ。②「ゴミ拾いを一度でもしたことがある人は二度とポイ捨てしないの法則」を大いに利用することです。一度でもゴミ拾いをした人は拾う人の気持ちが分かるから、二度とポイ捨てしません。

 だから、まちでとにかく目立ち、普段捨てそうな人をも巻き込んだ活動にしていくこと。ナイキのビブス、タワーレコードの軍手、そしてコカ・コーラのゴミ袋を身につけ、カッコ良さを一番の売りにして、僕らは一年中、毎日どこかで活動しています。今では、グリーンバードのあるまちは、ないところよりもキレイで、カッコいいと自負しています。

横尾俊成(よこお・としなり) NPO法人グリーンバード代表/港区議会議員(無所属)。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に、『「社会を変える」のはじめかた』(産学社) HP:http://www.ecotoshi.jp Twitter: @ecotoshi

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