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liberal arts-大学生の常識

【MBAの基礎知識】(1)MBAとは何か、
何を学ぶのか?

【MBAの基礎知識】(1) MBAとは何か、何を学ぶのか?
authored by 鶴岡公幸宮城大学食産業学部教授

 MBAとは、Master of Business Administrationの略称で、経営学修士号を意味します。ビジネススクールと呼ばれる経営大学院で、通常1~2年の間に必要な単位数についてある一定以上の成績を修めることで取得できます。人文科学の大学院の場合、MA(Master of Arts)が与えられますが、これらが研究者を養成するアカデミックスクールであるのに対して、ビジネススクールは法律の実務家を目指す人のためのロースクールや医者を養成するメディカルスクールと同様にプロフェッショナルスクールに分類され、実務家を養成することを目的としています。ハーバード大学ビジネススクールがその代表例で、日本の大学のようなレクチャーばかりでなくケースメソッドという事例研究をディスカッション形式で進めていきます。

 ビジネススクールの発祥は、学部レベルでは1881年ペンシルバニア大学の金融・経済学部であり、大学院レベルでは1900年に世界で最初にダートマス大学にGraduate School of Managementが創設されたのがスタートです。その後、ハーバード大学ビジネススクールが1908年に設立されるなど、1910~30年代前半に多くの有力大学でMBAプログラムがスタートしました。ただし、MBAがビジネスエリートの称号のように思われはじめ、海外からもたくさんの留学生を受け入れはじめたのは、60年以降です。ヨーロッパも英国を中心として100校以上のMBAプログラムがあり、ロンドン・ビジネススクール、INSEAD、IMDなど有力校があります。

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 MBAというのは経営管理を学ぶ修士課程の総称ですが、個別にはMBAとは異なった名称で修士を授与している大学もあります。たとえば、MITスローンスクールでは、経営学をサイエンスの視点で捉えるという発想から、MBAではなくMSM(Master of Science in Management)という名称であり、イェール大学は、公的機関や、非営利団体のマネジメントを視野に入れていることから、MPPM(Master's in Public and Private Management)という称号、また通称サンダーバードで知られているサンダーバード・アメリカ国際経営大学院ではMaster's in International ManagementすなわちMIMという学位を授与していました(最近同校はMBAという学位に名称を変更)。

 ビジネススクールでは、そのビジネススールに多額の献金をした事業家の名前が冠されている例が多く見られます。日本の大学とは比較にならないほど、その運営自体がビジネスとの関連が強いということが言えます。具体例としては、MITスローンスクールは、アルフレッド・スローンGM会長に、UCBハススクールは、リーバイストラウスのハス会長、ニューヨーク大学スターンスクールはレンタカーの大手Hertzのスターン会長、USCは電気機器のマーシャルの会長の名前に、それぞれちなんで命名されています。

経営に必要な知識とスキルを全般的に学ぶ

 MBAでは経営に必要な幅広いテーマを学ぶことができます。ビジネス社会を動かす経済力学を理解するためのマクロ、ミクロの経済学とそのルールを規定するビジネス法、その中に存在する企業とヒトの行動を理解するための組織行動学、組織にとっての経営資源であるヒト(人的資源管理)、カネ(ファイナンス、会計)、モノやサービス(オペレーション、マーケティング)、情報(インフォメーションシステム)、そしてそれらの経営資源を数量的に把握するための土台となる数量的分析、さらにそれらをどのように組み合わせて成果をあげるかといった戦略(ストラテジー)といったマネジメントに関する全般的な内容でMBAプログラムは構成されています。さらに海外でどうビジネス展開していくかという国際ビジネスといった科目があります。

 

 MBA(特に米国)プログラムで学ぶ内容は環境変化が激しいビジネスに直結しており、常に顧客である学生と企業のリクルーターらにとって魅力的な存在であるために、そのプログラムを時代のニーズに遅れをとらないよう更新、改良を日々重ねています。このカリキュラムの更新、改良こそMBAが社会的に価値をもち続けている所以です。ビジネススクールによって多少違うものの、通常は1年目がコア科目あるいは必修科目と呼ばれる共通科目の履修が義務付けられ、2年目が選択科目という構成になっている場合が一般的です。また2年目になると自分の専攻を決め、その分野を深く学ぶ機会が多くなります。

 なお、大学によっては、芸術、病院、ホテルやレストラン、スポーツやエンターテインメントのマネジメントを専門に学ぶプログラムを集中的に学べるスクールもありますので、こうした内容を学ぶことがはっきりしている方にはそうした学校に行くことをお勧めします。たとえば、コーネル大学はホテルやレストランのマネジメントに関して優れたコースをもっています。コア科目と選択科目はビジネススクールによって、また年次によって毎年少しずつ異なりますので、あくまでも参考として以下に示します。

●コア科目の例
◦数量的分析(Quantitative Analysis)
◦ビジネス経済学(Business Economics)
◦財務会計(Financial Accounting)
◦組織行動学(Organizational Behavior)
◦人的資源管理(Human Resources Management)
◦ストラテジー(Strategy)
◦クリティカル・シンキング(Critical Thinking)
◦管理会計(Managerial Accounting)
◦ファイナンス(Finance)
◦マーケティング(Marketing)
◦オペレーション管理(Operations Management)
◦情報システム管理(Information System Management)
◦国際ビジネス(International Business)
◦ビジネス法(Business Law)
◦ビジネスコミュニケーション(Business Communication)

 

●その他の選択科目の例
◦産業運営(Industrial Administration)
◦保険(Insurance)
◦起業研究(Entrepreneurial Studies)
◦非営利組織経営(Not-for-profit/Non-profit Management)
◦不動産(Real Estate)
◦税金(Taxation)
◦企業価値分析(Valuation)
◦テレコミュニケーション(Telecommunications Management)
◦リスクマネジメント(Risk Management)
◦ビジネスネゴシエーション(Business Negotia-tions)
◦ヘルスケアマネジメント(Healthcare Mana-gement)
◦環境マネジメント(Environment Management)


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鶴岡公幸(つるおか・ともゆき) キッコーマン株式会社、財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会、KPMGあずさ監査法人を経て、現在、宮城大学食産業学部教授。経営学修士(インディアナ大学)。
 この連載では、そもそもMBAとは何か、何をどう学ぶのか、学んだ結果としてどんなスキルが身につくのかといったごく基本的なことについてわかりやすく解説します。本連載は、「鶴岡公幸著『Q&AでわかるMBAハンドブック』日本経済新聞出版社」から一部を抜粋して再構成したものです。

[日経Bizアカデミー2012年5月30日付]

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