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ハラケンの「政治を動かす」(2)若者たちよ、仕掛けよう
日本が危機から脱するために

ハラケンの「政治を動かす」(2) 若者たちよ、仕掛けよう日本が危機から脱するために
authored by 原田謙介NPO法人YouthCreate代表

 52.66%――。低投票率が予想されていたとはいえ、この数字を目にした時に私はどうしようもないやるせなさを感じました。過去最低の投票率となったこと自体に対してではなく、2年連続で過去最低を更新したことに対してです。連載2回目は、12月14日に投開票が行われた衆議院選挙の振り返りと共にお伝えします。

 今回の投票率は2年前の59.32%をさらに5ポイントほども下回り戦後最低を更新しました。2009年の衆議院選挙(69.28%)からわずか5年で、15ポイントも下がったわけです。2012年、当時過去最低の投票率を記録した際に、政治行政・メディア・有識者そして私の周りの友人などから低投票率を問題視する声は上がっていました。

 しかし、2年たっても低投票率を打破するどころか、更に低い水準にまで落ち込みました。どういうことか。問題を解決するための有効な手段が全く行われないまま2年間が経ったということです。

 選ばれる側である政治家・候補者、選挙を執行する行政、伝えるメディア、民間で政治参画のための活動をしている私のような立場の者、そして2年前に低投票率を問題視した有権者自身などの誰もがこの2年の間に有効な解決策を作り出せなかったままであるということです。もしかしたら、解決策を作り出す気がなかった人もいるかもしれません。

政党へTwitterを通じて質問を行うASK NIPPON 2014サイト

投票率が何%でも、止まらない日本の危機

 選挙は民主主義国家の根幹を支える仕組みです。日本は国民主権の国であり、国民の主権の行使による選挙を通じて信を得た人が、市民に代わり政治を行う正統性を持つといえます。しかし、より多くの人がこの根本の仕組みに参加しない状況があります。

 私は投票率が低下することによって2つの危機感を覚えています。1つは政治全体の正統性が失われていくこと。もう1つは、国民が政治を他人事と捉え、主権者としての意識が希薄化していくことです。このままだと、この2つが相まって「負のスパイラル」に陥っていく可能性があります。

有権者レーダー作成ワークショップにて話をする原田氏

 しかし、投票率が何%であろうが、少子高齢化・人口減少は進み、社会保障費の増大や、国債の増加も止まりません。日本の国家予算は約55兆円の歳入に約40兆円の国債を発行することで作られています。借金をする政治を続けた結果として、国の債務は1000兆円を超えています。

"現実的"な未来を語れない政治

 今回の衆院選の世代別投票率はまだ発表されていないので、若者の投票率がどのような結果になったかはわかりません。私は全体の投票率が下がったとしても若者の投票率が上昇する可能性を捨ててはいませんが、その実現の可能性は低そうです。

 私は各党の政策を見た時に、「"現実的"な未来を語っていなのではないか」ということを感じました。「現実的な未来」というのは、「理想の未来」でも、「きれいごとの未来」でもありません。日本の現状を踏まえ、未来の予測を基に、どのような政策を行い、未来をどう作っていくかということです。

有権者レーダー作成ワークショップの様子

 そのためには、少子高齢化・人口減少、1000兆円の債務などにきちんと向き合う必要があります。今の窮状は、年金・医療などの社会保障費の支出を削り、増税をして歳入を増やすなど、国民の負担を増やすことなくしては解決できません。

 もちろん、国民の負担を増やす政策を掲げることは国民の反発を招く可能性もあり、政治側にはリスクです。しかし、言いにくいことを言わず、バラ色の未来を描く政策を信じるほど若者も馬鹿ではありません。予定通り来年消費再増税をするべきだとのマニフェストを掲げる政党がいなかったことは非常に残念です。

 「政治家は耳障りのいいことだけ言っていて未来のことを考えていない。結局将来世代にツケを先送りにしているだけだ」。そう若者が感じて、棄権するという選択肢を取った人もいるのではないでしょうか。

若者よ仕掛けよう、そして政治家をジレンマから解放しよう

 必ずしも政治が未来のことや、将来世代のことを考えていないわけではありません。むしろ、多くの政治家はしっかりと考えています。各党の政策には、財政健全化への言及や年金制度の改革、子育て支援政策なども明記されています。実際の政策を見てみても、近年では子ども手当や高校の学費無償化や保育所の拡充などが進められています。

 しかし、その一方で高齢者向けが主となる社会保障費の抑制には本格的に手を付けられていません。財政健全化のためのロードマップも描かれていません。投票率が高く、人口も多い、いわば「お得意様」である高齢者からそっぽを向かれることを怖がっているからです。

獲得議席数と投票率の推移

 「将来世代のための政治をしたい。けれど、多くの票を持っている高齢者の機嫌を損ねると、そもそも当選できない。さあ、どうしよう」――。政治家たちはそんなジレンマに陥っています。しかし、ジレンマのもとに生まれた色々な世代・層の有権者に配慮した政策は皮肉にも、高齢者にも受けが悪く、2回連続で最低投票率を更新するという現状につながっています。

 では、この負のスパイラルを打破するにはどうしたらいいのか。私は、若者からの仕掛けでそれが可能だと考えています。そのためには"現実的"に未来を捉える若者が政治に関心をもつこと、そして投票に行くことが必要です。

 若者からの応援があり、得票をあてにできると考えれば、社会保障費を中心とした支出の削減や増税の必要性から逃げずに主張を行う政治家も増えてくるでしょう。未来にツケを回さないために、「今なすべきこと」についての議論が本格化してきます。お得意様の高齢者であっても、この主張に同意する方は多くいるはずです。

 世代やイデオロギーを問わず、日本の未来を考えることを念頭においた国会での議論を実現させるのは若者です。将来、子どもに胸を張れる世の中を一緒に作っていきましょう。

【ハラケンの「政治を動かす」】
(1) 「どうせやったって変わらない」と思っている、あなたへ
(2) 若者たちよ、仕掛けよう 日本が危機から脱するために
(3) 「アウェー」の場に乗り込もう
(4) インターネットと政治① ネット選挙運動解禁まで
(5) インターネットと政治② 「投票日告知プロジェクト」の成否は...
(6) 統一地方選挙で選ぶ側の立場を体験しよう!
(7) 「都知事候補だけど質問ある?」~有権者が候補者にツイッターで質問
(8) 2016年を「若者が動き出した」年にしよう!
(9) 政治を身近な位置に置く方法~まずは質問から始めよう
(10) 参院選までに準備したい2つのマイ争点(上)~少子高齢化に注目
(11) 参院選までに準備したい2つのマイ争点(下)~自分の興味・関心から探す

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