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NPOの虎の穴(1) 世界中の学生が集まる
石巻のNPO団体とは?

立花 貴 authored by 立花 貴公益社団法人MORIUMIUS 代表理事
NPOの虎の穴(1)  世界中の学生が集まる石巻のNPO団体とは?

 東日本大震災の震源地に最も近く、津波で建物の8割が流され、人口の8割が流出して1,300人にまで減少した宮城県石巻市雄勝町。私が代表をしている公益社団法人「sweet treat311」は、震災後から雄勝町で活動して4年になります。sweet treat311には、インターン生として国内外から大学生が定期的に1カ月から半年の期間で1、2名来ています。東大・京大院生、慶応大学、早稲田大学、東北大学、オーストラリア国立大学や米国、イギリスなどなど、参加している国や大学は様々です。

 起業家の育成や大学生の長期インターンシップなどを手がける「ETIC」の宮城治男代表理事からは、「NPO業界の中で、ある意味一番過酷で成長負荷のある団体」「NPO業界の虎の穴」という、名誉あるあだ名を付けていただきました。

 インターン生は、日々の業務を事務局員と同じように行います。事務局員とともに共同生活をし、こどもたちの農林漁業体験の受入・サポートだけでなく、インターン期間中に達成するテーマを決め、自身で推進していきます。現在は、今年夏にオープンするこども向け複合体験施設「モリウミアス ~森と海と明日へ~」の立ち上げにも関わることができます。

雄勝活動のプレゼンをするインターン生

平日で約10名の社会人が滞在

 年間を通じて、sweet treat311の拠点である雄勝アカデミーやモリウミアスを訪れる企業の方々がいます。たとえば、Googleやマッキンゼー、ロート製薬、三菱商事など首都圏を中心とする大手企業の社員が、企業研修やオフサイトミーティング、個人参加でやってきたり、海外からの視察にやってきたりします。6月から5週間は全省庁の5%の新入省行政官研修もあります。平日は10名前後、週末になると30名前後の滞在来客があります。

 インターン生という立場でありながら、普段は会えないような大企業の社長や会長、経営層の方々と膝を突き合わせて話す時間があり、卒業したインターン生たちは「得難い経験や人と人とのつながりがあるのがいい」と言っています。ちなみに、昨年はインターン生のうち2名がsweet treat311を応援してくださっている企業に入社しました。

 私を含め、sweet treat311の理事はすべて元社長など経営経験があり、企業や行政、大学などで講演活動をしているメンバーです。そのような方々と生活を共にしているので、何かを吸収しようと思えば、何でも聞け、アドバイスをもらえるという特典もあります。

地域の一員として暮らすインターン生

 インターン生と言いながらも、事務局員と同じような業務をし、生活をともにする。その意味では大学生のうちから、社会人生活へのいい助走というか、自主トレ・筋トレにもなるでしょう。インターン生を卒業した後、sweet treat311を就職先として選んだ慶応大学生は主力メンバーへと成長しました。

 インターン生は私たちの拠点、雄勝町内にある雄勝アカデミーで生活します。過疎地域で暮らすということは地域の一員として暮らすことを意味します。浜の漁師さんたちやおじさん・おばさん、お爺さん・お婆さんと、人と人、個人と個人の関係を作っていくことが求められます。

学び場づくりツアー「モリウミアス」

 地域の人々と話すと、「なんでこんなにぶっきらぼうに物事を言うのであろう......」と思うこともあるかもしれません。しかし、家族のような、親戚のような小さなコミュニティーであるからこそ、何でも言い合える関係になります。浜の漁師の作業が忙しいときには、sweet treat311の事務局員は進んで早朝3時から手伝いに船に乗り込み、水揚げを手伝ったり、深夜1時の荷卸しを手伝ったりもします。

 そのような、作業を共有することで、漁師の方々、浜の方々との人間関係もでき、また学ぶことも多くあります。基本的に漁師さんは指示をしません。見て覚える、よく見てやってみる。ただし、生死にかかわるような危険なミスをしてしまったら、「こうしたほうがいい」というアドバイスをくれます。一人ひとりがチームのリーダーとしての意識を持ち、全体の動きの中でボトルネックを探し、誰からの指示もなく進んでそのボトルネックに入り、円滑に且つ最大限の省力化した身体の動きで全体の作業をしていくことに注力します。

見て覚える漁師の世界で、主体性を培う

 このチームワークは、指示されることに慣れて親しんで育った私たちに、ある意味衝撃をもたらし、会社や学校で敏感に感じて動ける心の瞬発力を養い、主体的かつ自主的に動けるようになるきっかけになります。

 インターン生たちは、来たばかりのころは「水もらっていいでしょうか」「箸を使っていいでしょうか」と、何かと許可や指示を求め、少し頼りない感じですが、日々の生活から1カ月もすると見違えるほどたくましく成長します。この変化には、ご両親が一番驚き、そしてご両親から感謝されるところでもあります。

 自分のこどもも、あと数年でインターンとして受け入れることができます。どこの団体より厳しくも、貴重な成長の機会、人と人の繋がり、そして自身の人間力を高めることができる私たちsweet treat311でインターン生になることは、将来に繋がる得難い経験となることでしょう。

インターン生希望のお問い合わせ先 info@moriumius.jp

こどもたちの漁業体験プログラム