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liberal arts-大学生の常識

真実とイノベーション(1)「学び方」をアンラーニングする術を
学ぼう!

岩佐大輝 authored by 岩佐大輝株式会社GRA代表取締役CEO
真実とイノベーション(1) 「学び方」をアンラーニングする術を学ぼう!

 勉強を続けることでステップバイステップにコツコツと能力開発していく過程は素晴らしく、人生の中でもっとも重要でしかも難易度が高い作業ではないかと思います。小学校から大学を卒業するまで私たちは16年間も決められた枠組みの中で決められた科目を学び続けます。中には落ちこぼれてしまい人もいるでしょうし、優秀な成績でいわゆるエリートとして社会人をスタートする人もいるでしょう。

 そのような中でとても不思議なことですが、優秀だったはずの彼、彼女がビジネスパーソンとして社会に晒されて数年たつと、まったく力を発揮できなくなり、厳しい挫折と敗北を味わい、時に再起不能なまでに落ち込んでしまうことがしばしばあります。

16年間の「学び方」のクセを修正する

 その理由の多くがアンラーニングの技術、つまり学び忘れの技術を習得していないことにあります。実社会で成功するには16年間の長期間にわたって身に着けて来た学び方のクセを残念ですが敢えて完全に忘れる必要があるのです。なぜなら実社会において「真実とイノベーション」は常に混沌の中に存在し、整理された環境における積み上げ式アプローチではたどり着けないことが殆どだからです。したがって、16年間の「学び方」のクセを修正していかないと実社会では成果を残せないことが多いのです。

 ではどうやったらアンラーニングの技術を学べるのでしょうか。実はその方法論は体系化されていません。私たちは何年も学ぶのに、不思議なことに学び忘れ方は少しも学ぶ機会がないのです。これは大問題です。もちろん、できることはいくつかありますので、今日は代表的な訓練法を紹介します。

インドでの事業立ち上げメンバー

混沌と不可解を楽しむ

 まずは、どうしても理解できない相手、一緒にいて疲れる相手と敢えて付き合う時間を多くすること。なぜその人といて疲れるのでしょうか? それは自分の心の中の整理解釈の範囲を超えているからなのです。その人を無理に解釈しようとせず、ゆったりと混沌と不可解を楽しんでください。そして次に、それまで全く縁のなかったコミュニティーに飛び込んでみることです。混乱と不均衡を楽しみながら、混沌の中から解を自力で導き出す訓練をするといいでしょう。

 私は日本および海外で6つ以上の会社や組織を経営しています。そのひとつにGRAという農業生産法人があります。24歳の時に最初の会社をスタートしてからずっとIT業界に身を置いていたのですが、2011年3月11日の東日本大震災で故郷の宮城県山元町が壊滅的打撃を受け、町を何とか復興させたいという想いで作ったのがGRAです。日本およびインドで先端施設園芸に取り組んでおり、設立からまだ3年ですが日本でもっとも先端的な技術とブランドを持つ農業法人の一つに成長しました。中でも私たちの生産する「ミガキイチゴ」は東京の百貨店でひと粒1000円の値がつくこともあります。

大学院をやめたK君の場合

 そのGRAのインド事業の立ち上げメンバーで、今ではGRAの正社員のK君をアンラーニングに成功したモデルとして紹介します。彼は仙台の大学在学中にGRAの国内インターンに参加し、大学院に入学するも入学と同時に休学し、今度はGRAの海外インターン(しかもインドの貧困地域における農村開発)に参加しました。インドでは、イチゴの栽培チームリーダーを務め大変な成果をあげてくれました。帰国後、K君は突然大学院を辞め、GRAに新卒社員として入社。今では数億円を投じて建設した先端園芸研究施設の運営リーダーを務めています。

 もちろん彼も数年前までは、いわゆる勉強のできる優秀な学生だったのですが、一気に脱皮して、一皮も二皮もむきながら、今では同年代の多くが太刀打ちできないほど優秀なビジネスマンに成長していると思います。

 彼の急成長の理由はいくつかありますが、それまでの環境に頓着せずに新しい環境に思い切って飛び込むことが早い段階でできたこと、そしてインドという混沌とした場所で、最初は猛烈にもがき苦しみ、大きな挫折を経験しながら、混乱と不均衡を楽しむ術を学んだからだと思います。そういった意味でK君は、整理された環境におけるステップ論での学び方をインターンという荒療治によって一気にアンラーニングできたひとりです。

ひと粒1000円の値がつくこともある「ミガキイチゴ」

「真実とイノベーション」は混沌の中に

 繰り返しになりますが、実社会において、「真実とイノベーション」は常に混沌の中に眠っています。整理された環境のおけるステップ論ではたどり着けない場合が多いのです。思い切って学び方をチェンジするため、混乱と不均衡の世界を楽しむことから始めてみましょう。

 あ、大事なことを書き忘れるところでした。学業で落ちこぼれてしまった方、優秀な成績を残せなかった方、受験に失敗してしまった皆さんには朗報です。皆さんはアンラーニングにかけなくてはならない労力と時間が随分少なくて済みます。偉大な結果を残した先人たちが必ずしも一般的な学業において優れていたとは限らないという話はよく聞きますが、その理由は彼ら彼女らが最初から脱ステップ論で挑戦できたからなのです。過去にとらわれず、前だけを見て「真実とイノベーション」に挑戦していきましょう。

岩佐大輝(いわさ・ひろき) 株式会社GRA代表取締役CEO。1977年、宮城県山元町生まれ。日本、インドで6つの法人のトップを務める起業家。2002年にITコンサルティングを主業とする株式会社ズノウを設立。2011年の東日本大震災後は、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的に特定非営利活動法人GRAおよび農業生産法人株式会社GRAを設立。先端施設園芸を軸とした「東北の再創造」をライフワークとするようになる。イチゴビジネスに構造変革を起こし、大手百貨店でひと粒1000円で売れる「ミガキイチゴ」を生み出す。2012年11月にはインドのマハラシュト州タレガオンに先端イチゴハウスを建設。同年、グロービス経営大学院でMBAを取得。2014年に「ジャパンベンチャーアワード」で「東日本大震災復興賞」を受賞する。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)がある。

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