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カップヌードル、6年ぶり
「謎肉」復活で若者開拓

カップヌードル、6年ぶり「謎肉」復活で若者開拓

 日清食品が4月、主力カップ麺「カップヌードル」を刷新した。作り方などの詳細がわからずインターネット上で消費者から「謎肉」と呼ばれている具材を6年ぶりに復活させたのがリニューアルの"目玉"。なぜ謎肉は復活したのか。若い世代を新たに取り込むという狙いに加え、「2つの要因」による即席麺市場の減退懸念に先手を打つ姿勢が浮かび上がってくる。

「一番食べていない世代」にアピール

 謎肉とは1971年9月のカップヌードルの発売時から具材に採用されていた、豚肉や野菜を練り合わせて固めたサイコロ状のミンチ肉「ダイスミンチ」のこと。謎肉と命名された経緯は不明だが、作り方がわからないうえ、完全に湯戻りしていない時の食感が肉っぽくないことなどが理由として考えられている。

 このダイスミンチは2009年春以降、角形の乾燥チャーシュー「コロ・チャー」に切り替わったが、今回の商品刷新でコロ・チャーとの併用という形で復活した。「具材のぎっしり感というカップヌードルが本来持つ価値をアピールしたい」(藤野誠第1グループブランドマネージャー)ためで、改めて訴求する主な対象は若い世代だ。

4月下旬以降に刷新されたカップヌードル

 実は同社の調査によるとカップヌードルを一番食べていない世代は18~22歳だという。高校生以下だと親が購入して家に常備してあり食べる機会も多い。23歳以上で社会人になれば、昼食や夜食に自分で購入することが増える。特定層がカップヌードルを食べない理由は、毎年のように新商品が多く発売され、「自分たちの商品だと思っていないからではないか」(日清食品ホールディングスの安藤宏基社長)。日清食品はここ数年、この世代にいかにアピールするかを経営テーマの1つとしている。

 まず取り組んだのは広告宣伝などのプロモーションでの対策だ。テレビCMは12年から人気アイドルグループのAKB48を起用した「REAL」編、13年からサメが登場するなどの「SURVIVE!」編、14年はテニスの錦織圭選手などを起用した「SAMURAI、FUJIYAMA、CUPNOODLE」編を投入。いずれも若い世代にブランドを身近に感じてもらうことを狙った広告だった。15年は次のステップとして、カップヌードルの本来の価値であるおいしさを若い世代に知ってもらうため、具材の充実という商品刷新に踏み切ったわけだ。

 具材の充実を図る中で、謎肉の復活が決まった。「09年の刷新当時からダイスミンチの復活を要望する声が多かったのは事実だが、コロ・チャーも人気があった」(藤野氏)。ならば、すべての顧客を満足させるために、ダイスミンチとコロ・チャーを併用するという判断だ。刷新前の消費者調査でもダイスミンチとコロ・チャーの組み合わせが最も評価が高かったという。

 カップヌードルの肉の具材は通常の豚ミンチ肉もあるため、従来の2種類から今回の刷新で3種類になった。コロ・チャーが1つの容器に入っている個数は従来品と同じだが、大きさは8ミリメートル角にサイズダウンした。ただダイスミンチが加わった分、肉の具材の合計重量は従来品比2割増え、変更のなかったエビ、タマゴなど他の具材と合わせた全体の具材量は5%増えた。ダイスミンチの大きさは様々だが、「11ミリメートル角だったコロ・チャーより一回り大きい」(藤野氏)ため、湯を入れ3分待ってフタを開けたときの具材の存在感は格段に向上したという。

価格改定と食の安心安全

 謎肉の消滅と復活が目立つカップヌードルの刷新だが、前回と今回を比較すると共通項が2つある。価格改定と食の安心安全だ。09年春の刷新前、08年1月にカップヌードルの税別希望小売価格は155円から170円に上がった。08年10月にはカップヌードルで防虫剤成分の「移り香」騒動が起きた。今回の刷新も、1月に170円から180円に値上げした後で、14年末には日清食品冷凍の冷凍パスタや同業他社のカップ焼きそばで異物混入があった。

 日清食品HDの安藤社長は即席麺市場について「不景気も天候異変も新製品も成長要因になる。マイナスとなるのは値上げと安全性欠落の問題」と語る。実際、値上げと食の安全意識の高まりが重なった08年度の国内即席麺市場の生産量は07年度比1.9%減の52億4500万食だった。08年度は04年度から13年度までの間で最も需要が落ち込んだ年でもあるが、カップヌードル刷新後の09年度の総市場は08年度比2%伸びた。

 共通項が多い15年度に需要が落ち込まないとは限らない。15年の即席麺の出荷価格の引き上げは08年よりも店頭価格への浸透が早いとされるため、販売量への影響がいち早く現れる可能性がある。「1年以上前から今回の刷新を準備しており、値上げ後の刷新はたまたま」(藤野氏)というものの、早めに需要減への対策を打つべく日清食品が動いたとしても不思議ではない。商品刷新が需要を底上げするのは、過去の経緯を見れば必然だからだ。

 日清食品は4月末からカップヌードルのテレビCMも新しい内容に改める。具材の充実と、高校生の学生生活の充実をかけた内容で、商品刷新をアピールする狙いだ。コロ・チャーファンも、ダイスミンチファンも納得するか。即席麺市場の動向とともに、注目だ。
(企業報道部 岩野孝祐)[日経電子版2015年4月29日付]

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