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[ career-働き方 ]

理系女子が起業したら(1)「人と同じ」じゃなきゃダメなの?
私が就職しなかった理由

高橋祥子 authored by 高橋祥子株式会社ジーンクエスト代表取締役
理系女子が起業したら(1) 「人と同じ」じゃなきゃダメなの? 私が就職しなかった理由

 はじめまして。私は、東京大学大学院の農学生命科学研究科博士課程2年在学中の2013年に、個人向けの遺伝子解析サービスを提供するジーンクエストを起業しました。提供しているインターネットを活用した遺伝子解析サービスは、郵送されるキットに唾液を入れて返送すると、DNA情報を解析して、病気のなりやすさや体質などがわかるというものです。

 いま、街を行き交う就活スーツの学生たちを見ると、自分が進路に悩んだ就活時代を思い出します。私は結局就職せずに起業したのですが、自分の想いを実現する手段として、私にとっては起業が最適だったと思います。起業というとハードルが高いような気がするかもしれませんが、理系の研究知識を生かして挑戦する起業という道も、選択肢のひとつとしてご紹介していきたいと思います。

「人と同じ」じゃなきゃいけないのか?

 私は幼少期を京都で過ごしましたが、小さい頃から真面目な性格で勉強が好きだった一方で、会話が苦手で社交性の低い子どもでした。親の仕事の都合で、5歳からの約2年間フランスのナントで生活しました。現地の幼稚園と小学校では、日本人だからという理由でいじめられることは一切なく、みんな好意的に興味を持って接してくれて、異文化の違いが受け入れられる環境でした。幼いながらに人と違うということが素敵なことなんだと感じ、自由に振る舞い、友達もたくさんできました。

 しかし、小学校2年生で日本に帰国し、大阪の小学校に転校すると環境が一転します。人と違うことが好まれたフランスとは違い、日本では「人と同じ」ことが求められます。初めて接する「女子グループ」という文化が理解できず、自分が浮いているなと感じていました。

 毎週金曜日に上級生と一緒に行うクラブ活動では、スムーズに会話ができず、なじめませんでした。同じ班の6年生たちは、私を見るたびに「気持ち悪い」「うわ、こっち見てきた」「服だっさ」と嘲笑しました。私は顔を赤くして下を向くだけで何も言えませんでした。持ち物が隠されたり、無視されたりすることもあり、辛くて毎週クラブのある金曜日は泣いて家に帰りました。

 毎朝「うん、今日もかわいい」とやさしい笑顔で私を送り出してくれる母のことを思うと、いじめられる自分が情けなくて申し訳なくて、誰にも打ち明けられませんでした。半年間のクラブ活動が終わると、上級生とも会うことはなくなり、いじめもなくなりました。でも今でも誰かが笑っていると、自分が笑われているのではないかと思ってしまうことがあり、女子会などの女子グループもどうしても苦手です。

「自分の世界を持て」

 私の人格形成は少なからず父親の影響を受けています。小学校高学年のとき、普段寡黙で厳格な父親が改まって私に言いました。「他人の評価は気にせず、自分の世界を深く持て」。何だかしっくり腑に落ちて、その言葉を書いたメモを常に筆箱に入れて持ち歩きました。その言葉のおかげで、「人と違っていてもいいんだ」と思えるようになりました。

 周りに迎合しないマイペースさと、自分の世界を深く豊かにしたいと考えるようになったのは父の影響だと思います。起業するとき、周囲の人からの反対や批判があっても、心の底では父の言葉に納得していたから、案外気にせず前に進めたのかもしれません。

 私も含め理系の人はよく、「コミュ力がない」「コミュ障」などといわれがちですが、本当に大事なことは、空気を読んで人に合わせることにエネルギーを使いすぎてしまうせいで、自分の世界を見失っちゃいけないということです。就活をしている皆さんも、周囲に流されすぎず、自分だけの「強み」を生かして、やりたい仕事に挑戦してください。そして、就職してからでも、人と違う新しい課題に挑戦し、それを事業にしていきたいと思った人は、「起業」という新しい道も考えてみてほしいと思います。私の経験から、起業という選択肢について、みなさんにお伝えしていこうと思います。

高橋祥子(たかはし・しょうこ) 1988年生まれ。2010年京都大学農学部卒。13年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めることを目指す株式会社ジーンクエスト(https://genequest.jp/)を設立。専門は分子生物学。15年、同学博士課程を修了し、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科博士研究員、科学技術振興機構統合化推進プログラム研究アドバイザーも務めている。

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