フェスらぶ世代~フェスに集まる若者たち
私たちのリアル(6)
夏到来! 様々な『フェス』という言葉が付くイベント(催し)が目白押しで、フェス戦国時代の感があります。最近のフェス(イベント)は、フジロックやサマソニ(サマーソニック)といった誰もが知る音楽系フェスのほか、運動系、文化系と大きく3つに分かれ、世界中の目新しいフェスが日本で開催されるようになりました。
フェス好きの若者たちが特に注目しているのは、ランニング系の定番になりつつあるカラーランをはじめ、バブルラン、ウォーターランです。『泡パ(泡パーティー)』という名の泡まみれになりながら踊り音楽を楽しむバブルフェスも話題! ちなみにこれらの水系イベントには水着を着用して参加します。今年はAKBの衣装でも使われていた、ブーケのような花びら水着が人気です。
その他、昨年芸能人オンリーで東京にも上陸したフランス発のLe Diner en Blanc(通称オールホワイト)のような色系イベント(ドレスコードとして色が決められているイベントやパーティーのこと)も続々と開催されています。さらに、肉フェスやタイフェスなど食べ物がフォーカスされた文化系、フリマとコラボしたファッション系等。エレクトロニクスZOOというNY発の「動物みたいにクレイジーになっちゃえ!」というファッションも注目される音楽イベントも今年日本に上陸しました。
週末は「よよこう」「おもはら」で
また、この時期毎週末、代々木公園で世界各国のイベント、フェスが開催されます。若者が集まる場所として、今、「よよこう(代々木公園)」と「おもはら(表参道と原宿の間のエリア)」はホットスポットなのです。
「よよこう」や「おもはら」へ行く際、彼女達は原宿駅の参道口、明治神宮前、表参道駅を好んで使います。原宿と言えば竹下通りですが、完全に観光スポットとなったために東京の女の子たち(中学生以下を除く)が原宿駅竹下口を使わなくなりました。「竹下通り=観光客と小中学生のための場所」というイメージが強くなり、ネタで(面白半分で)たまに行ってみるくらいだそうです。
代わって、行く場所に迷ったら「よよこう」で行われているタイフェスやハワイアンフェス等に行って、普段はなかなか食べられない異国フードを食べてみたり、ショーを見てみたりと、フェスを楽しんでいるようです。イベントがない時でも、流行りのカフェやスイーツショップで手に入れたお菓子やドリンクを手にピクニック気分でふらっと「よよこう」へ行くこともあるとか。
インスタにフェスファッション
さて、なぜ彼女達はフェスに行くのでしょうか?
今のJK、JDの生活の半分はSNSといっても過言ではありません。そんな彼女たちは常に何かを発信し、見られているという意識があります。大人からすればストレスを感じそうに見えますが、そんな見られている感も楽しみの一部のようです。そして、フェスやイベントに挙って行く理由の一つに、"SNS映えする画"があります。
SNSに投稿した時に映える、イイ感じに見える画像を指します。そんなSNS映えする写真を求めて様々なイベントに参加し、「楽しい」を追っています。もちろん本人たちは単純にフェスって楽しそうだなと思い、繰り出すわけですが、無意識にSNSに投稿するネタになりそうという思考が頭の片隅にあるようです。
そこで、さらに注目されたのがフェスファッション。インスタグラムから海外のフェスファッションスナップがたくさん登場し、目を付けた日本の若者が真似しはじめたという感じです。フェスに行くために、事前におそろの洋服を買うなどの準備をして向かうのが流儀。特に去年の夏頃から流行っているのが「お花の冠」。「お花冠などおソロなものを付けるとフェス感が出て、テンションが上がる」と、フェス好きの大学生Aさんは言います。お花冠ブームはフェスだけでなく、街中に広がりました。さらに、今夏のフェスファッション注目アイテムは一昔前に流行ったタトゥーシール(フラッシュタトゥー)だそうです。
新しい仲間作りも楽しみの1つ
ただ、フェスへ行く理由は、"SNS映え"意識だけではありません。
フェスをきっかけに、友達の幅が広がるのです。フェスは"盛り上がる"が一番大事なポイントなので、大人数になればなるほど良いと思っています。TwitterやFB等で「○○フェス行くことなった~うぇーい」などと投稿し、それに対して反応した友達をさらに誘う......といったループが繰り返されるため、当日には友達の友達の友達まで集結します。そんな新しい仲間つくりも一つのフェスの楽しみのようです。
番外編でご紹介したいのが、JKの新定番「水風船と水鉄砲」。フェスに比べれば規模は小さいものの、自分たちで『水風船合戦』を企画して楽しんでいます。高校生Tちゃんは「素材も弱くて割れやすい100均で買ってきた水風船をあえて選び、学校や公園で水を入れて落書きしたり投げ合ったりして遊んでいる。割れやすい方が盛り上がる」と言います。ウォーターランも水風船を使ったフェスですが、JKたちは2~3年前からこのようにお金をかけずにプチフェスのような遊び方をしています。
「リアルな場所」へのシフトが始まった
「人が集まるところが好き」は、SNSネイティブ世代で皆共通しています。元々はTwitterやFacebook、Instagramなどみんなが集まる「ネット上でコミュニケーションの場所」を探していましたが、ここ最近はそれが徐々に「リアルな場所」へシフトしてきています。
世間ではSNS疲れという言葉をよく耳にするようになりましたが、彼女たちを見ていると、SNS疲れも束縛されている感もなく、誰かと繋がっていることで安心しているのだなと感じます。それは、常に繋がり続けるのが当たり前の環境で育ったからでしょう。
一人になった時にはSNSを通して繋がりを求めますが、誰かと一緒にいる時はリアルなコミュニケーションをより楽しんでいるように見えます。SNSが完全に定着し生活の一部になったことで、リアルに人が集まって盛り上がり、かつSNSも盛り上がる"フェス"に関心を抱くようになりました。そして、ネット上とリアルな生活の楽しみ方のバランスを自分でコントロールできるようになってきたようです。
ブームプランニング社長。山口県出身。1986年に企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を発足、女子高生ビジネスを立ち上げる。88年、株式会社ブームプランニングを設立し、女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。現在、未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦、シニア層まで全国1万人以上ネットワークを広げ、様々な業種で企業の商品開発にかかわる。活動に関係した女子高生は10万人。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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