日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

日本茶に新たな香りを
フランス人、産地巻き込む

日本茶に新たな香りをフランス人、産地巻き込む

 壁一面に茶箱が並ぶ店内に入ると果物の香りがふわりと舞う。来店客は茶箱の表面に書かれた「シャンパン」や「やきいも」の文字を珍しそうに眺める。「絶対うまくいく。若いお客さんが多いでしょ」。ソムリエのような裾の長いエプロンを着て、流ちょうな日本語で話すのは日本茶販売おちゃらか(東京都武蔵野市)の社長、ステファン・ダントン(50)。日本茶産業を振興するフランス人だ。

日本茶に果物の皮や花弁

 ダントンは緑茶やほうじ茶をベースに果物の皮や花びらを加えたフレーバー茶をつくる。「シャンパン」は緑茶にバラやハイビスカスの花びらが、「やきいも」にはほうじ茶にさつまいもチップが混じる。

 都内に2店舗をかまえる。ダントンがつくるフレーバー茶は高評価を得ている。2008年にスペインでの国際博覧会で日本館の公式飲料に採用された。

 「このままでは日本茶産業は無くなるよ」。甲高い声でまくし立てるダントンの危機感は強い。スーパーなどにはペットボトルのお茶が並び、日本茶は一見すると日常生活に溶け込んでいるようにみえる。

日本茶をベースにしたフレーバーティーをフランス人の視点で提供するステファン・ダントン氏(東京・日本橋の「おちゃらかコレド室町店」)

 ただ業界統計によると、04年以降は緑茶消費量が減る傾向にある。「リスクをとって新しいことをしないとダメ」。フレーバー茶は、敷居が高いと思われがちな日本茶に興味を持ってもらう「入り口」だという。

 ダントンは元ソムリエだ。1986年に留学で来日したが兵役義務で1年後に帰国。92年にソムリエとして働くつもりで再来日したが雇ってくれるところがなく、紅茶専門店で勤めた。

 そこで転機がやってくる。結婚式コンサルタントの会社経営者に気に入られ、式場での仕事に就く。地方巡りで静岡県島田市の茶農家が集まる川根町にやってきた。「川根茶」は長年飲み続けてきた日本茶のなかでも格別の味わいだった。