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いい会社の見分け方(2)初任給は高くても……
平均年齢・勤続年数を見極めよう

いい会社の見分け方(2) 初任給は高くても……平均年齢・勤続年数を見極めよう
authored by 松本敏史早稲田大学大学院教授

 「初任給が高いからいい会社」と思っている人はいませんか。求人難だったバブル時代の話ですが、学生を集めようと初任給を高く設定しすぎ、新入社員の給料が先輩の給料を上回るという奇妙な会社が出現しました。
「いい会社の見分け方」連載一覧はこちら

 冷静に考えればわかることですが、初任給だけが高い会社よりも、生涯賃金が高い会社の方が皆さんにとって望ましいのは言うまでもありません。その生涯賃金とは月給、賞与(ボーナス)、手当、退職給付(退職金、年金)の合計額です。さらに社員食堂や社宅、レジャー施設等の福利厚生が充実している会社と、そうでない会社では実質賃金にかなりの差がでてきます。

 それから、従業員の平均年齢や平均勤続年数も気になりませんか。一般論ですが、平均年齢は会社の雰囲気に影響を与えそうですし、平均勤続年数が長い会社はそうでない会社よりも居心地がいいのかもしれません。

ユーホーの従業員の状況を見てみよう

 では、これらの違いは何を見れば分かるのでしょうか。実はユーホー(有価証券報告書)にその手がかりがあります。まず、関心のある会社のユーホーをEDINETからダウンロードしてください。具体的な手続きは前回お話したとおりです。
連載1回目「いい会社の見分け方(1) 「ユーホー」は情報の宝庫」はこちら

 次に、目次を「第一部企業情報 → 第1企業の概況 → 5従業員の状況」と進んでいくと次のような表が出てきます。

(注3本連載では分かりやすくするために便宜上、単独決算の数値を使っています。

 ここでは誰でも知っていると思われる会社をランダムに選びました。これらの大会社の数値は「5従業員の状況」にある「提出会社の状況」(ユーホーの提出会社という意味)に記載されています。

 なお、これらの大会社は多くの子会社や関連会社と一緒にグループで活動しています。それらを統合した「従業員数」は「連結会社の状況」を見てください。

 まず「平均年間給与」ですが、これは、月給、賞与、手当の合計額です。これ以外に退職給付や福利厚生が気になる人はユーホーの「第5経理の状況」に記載されている「連結損益計算書」「損益計算書」「注記」を見てください。どこかに「退職給付費用」「福利厚生費」の金額が載っていれば、それを従業員数で割ります。それによってその会社の給付水準を推定することができます。

製造業の平均給与には注意

 ところで、トヨタの平均年間給与が8,383,314円であるのに対して、野村ホールディングスのそれは15,793,399円と、かなりの差があります。一見すると野村ホールディングスの平均給与が圧倒的に高そうですが、一般的に製造現場で働く従業員の割合が高いと平均給与が低く表示されます。ですから大卒総合職の平均給与に限った場合、両社の数値の差は縮まる可能性があります。

 次に平均年齢と平均勤続年数ですが、両者の間には「平均年齢-平均勤続年数=平均入社年齢」の関係が成り立ちます。上記の会社について計算すると次のようになります。

 これまた一般論で恐縮ですが、ここで取り上げた大会社は基本的に新卒採用です。したがって、平均入社年齢が高い会社は大学院卒のウエイトが高いことが考えられます。これも会社の雰囲気を探るヒントになるかもしれません。

 最後にもう1つ。就職したい業界が決まれば、そこに属する会社について上のような表を作成してください。それによって「給料は高くなくても、居心地の良さそうな会社」や「厳しそうだが、給料が高い会社」など、一歩踏み込んだ姿が見えてくるかもしれません。

※この連載は、松本敏史(早稲田大学教授)、籏本智之(小樽商科大学教授)、山田康裕(立教大学教授)の3人が担当しています。

【いい会社の見分け方】
(1) 「ユーホー」は情報の宝庫
(2) 初任給は高くても...... 平均年齢・勤続年数を見極めよう
(3) ユーホーから離職率を見抜く方法
(4) 売上高成長率で企業の成長度を比較してみよう
(5) 従業員1人あたり売上高~社員が頑張っている会社を調べる
(6) 規模が違っても比較しやすい売上高営業利益率