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キャンパスドリーマー(4)人生を変えた途上国での衝撃 インドの貧困と向き合う北大生

キャンパスドリーマー(4) 人生を変えた途上国での衝撃 インドの貧困と向き合う北大生
authored by Co-media
所属:北海道大学経済学部経営学科4年
名前:相川 雄哉(あいかわ ゆうや)さん
現在はインド・デリー大学に留学中で、半年間滞在する予定です。生粋の道産子なのですが、なぜインドという未開の土地に来るようになったのかお話しできればと思います。

――相川さんはどんな学生生活を送られていたのですか?

 大学ではサークルでオーケストラをしていました。北海道大学交響楽団で演奏しており、幼いころはサックスを演奏していました。周りの人からは「海外に興味があるんだったら海外のボランティアサークルとかいいんじゃないの?」と言われることもあります。ですが、僕がインドに来るキッカケとなったのは、考え方の根本に、僕が小学校1年生の時に父親が亡くなってしまって、その時から音楽が僕の心の支えであり、無くてはならない存在であるという事実があるんですね。音楽が僕が色々と考えていく中で必要だったという事です。大学を通してオーケストラをしているというのが僕のバリューなんです。

 社会問題国際プレゼンコンテストというのが昨年開かれたのですが、8月のコンテストで優秀賞を頂きまして、それに加えて、4月末~5月にかけて開催されるG20というサミットの日本代表団の一人として参加させて頂くことになりました。G20は大学から公募が出ていて、大学から推薦を出してもらい、それからG20の本会議に履歴書を送って、審査が通ったという形です。

途上国への旅で人生が変わった

――なぜインドを留学先に選ばれたのでしょうか?

 大学1年生の時にニュージーランドへ語学研修に行ったこともありましたし、ぼんやりと留学は考えてはいました。ニュージーランドは気候が良くて、すごく住みやすいので有意義な経験ではあったのですが、それが僕の長期留学の意識をより具体的なものにする体験ではありませんでした。そして、2年生になった時に授業に行く意味を見出せなくなったんですよね。ただ単位を取って、大学を卒業して就職するということに嫌気がさしましたし、授業受けて単位を取る事自体が目的になってしまっている気がしました。

 その後、企業のインターンシップにも参加したのですが、「自分のやりたい事ではないな」と思うようになって、楽器を弾くなど、自分のやりたい事にかける時間を増やしていきました。ちょうどその時にアマルティア・センさんの「貧困の克服」という本に出会いました。アジア初のノーベル経済学賞受賞者なのですが、彼の本や論文には「幼い頃のインドでの経験が自分の人生を変えた」とい綴られていたんですよね。僕はそれに感銘を受けて、途上国と言われる地域を自分で実際に見てみようと思い、カンボジアやラオス、タイ、ベトナムといった国々を、2700kmという距離をバスや電車や徒歩で移動しました。

 それは日本やニュージーランドなどの先進国とははるかに異なる景色でした。その景色に大学に入って始めて心を動かされまして、今まで勉強する意味を見失っていたのですが、「自分が納得するまで現実を正しく見るために経済学を勉強し直そう」と思うようになりました。実際にインドに行って勉強して、これからのインドを背負う若者と一緒にアマルティア・センさんが実際に住んだインドの教育現場を肌で感じたいというのが留学した理由の一つです。

――他にも留学した理由はあったのでしょうか?

 そうですね。僕は小さい時から「人と違う事をしたい」と常に考えていて、きっかけは父親が僕が小学1年生の時に亡くなって、「父親が亡くなってかわいそうだ」と思われるのがすごく嫌で、なるべく自分が人と変わらない生活を送っているんだと思い込んでいました。ですが、中学生になるとその思い込みを自分の中で克服してきまして、人と違う環境の中で生きる事は自分にしかできない個性を作ってくれるものだと考える事ができるようになってきました。それぐらいから人と違うことがアイデンティティになって、もっと人と違う事をしたいという欲求が芽生えました。それがもう1つの理由ですね。

日本とは大きく異なるインドの環境

――インドへの渡航前後でギャップなどはありましたか?

 途上国には行ったことがあったので、だいたいイメージはできていました。フィリピンやラオスを観ていたので、貧困の現場はある程度予想のとおりでした。インドに来て何が一番違ったかというと、極端な経済発展ゆえに、貧困層と富裕層が混在しているというところです。BMWに乗っているお金持ちがいる一方で、その隣には足を悪くして全く動けない人がいるという状況がありました。スターバックスがあって店内はお金を持っている人がいて、日本と全く変わらない状況なんですが、スターバックスの中と外では全く違う景色でした。それが一番精神的に辛かったです。貧困層と富裕層の混在が顕著でした。

 インドの大学に来て感じたのは、学生のエネルギーがものすごいですね。日本のような豊かな世界に住んでいた人はほとんどいないわけで、自分の力をつけようとする意欲といいますか、授業を遮ってまで質問したり、わかるまで質問したりするパワーはすさまじいものがありました。

 僕も彼らと僕たちと同じ寮で生活して、一緒にを食事をして、色んなことを議論していく中で彼らとの壁がどんどんなくなっていくのを感じている最中ですね。
貧困を解決したい

――相川さんの今の活動は大学の授業がメインなのでしょうか?

 そうですね。授業は詰め込み型ですね。教科書の厚みは日本の2倍ぐらいで、もちろん英語でひたすら覚えてすごくきついのですね。(笑) こういう詰め込み型の教育が創造性を潰しているという批判がある一方で、インド人独特の「自分の考えを自信を持ってガンガン言う姿勢」は詰め込み教育による膨大な知識からきているのかなと思います。

 あとは、インターンとして農業をしていました。インドでは人口の約6割が農業に従事しています。ですが、賃金が低水準です。工業化ばかりが注目されがちなのですが、農家の6割の人を見捨ててはいけないと僕は思っています。僕の活動としては主には農業の技術指導と市場調査をしています。インド農業を変えるためには適切な技術革新が必要だと思っています。安定した栽培を行うためには農家の人々がより豊かに過ごすにはどうすればいいかをインターンを通して探していますね。

 マクロ的にただ大規模投資をしても変わるわけではなくて、一つ一つの農家に寄り添うことが貧困の解決につながると思っています。


――今後の予定をお聞かせください。

 引き続き大学の勉強がメインになると思います。経済学を自分が納得のいくまで勉強したいので大学院に進学して、開発学にも取り組みたいと思っています。このインドでの経験を通して、開発学においては「机上の空論」と言われることもあると思うのですが、アマルティア・センの言葉でいう「理論と実社会との接点」を見つけて、貧困を一つでも解決に導けたら幸いです。
(Co-media2015年4月23日掲載)

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