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どうする? 女子のキャリア(4)「時間を守る人」というブランドを
内定者へ贈る言葉

堂薗稚子 authored by 堂薗稚子株式会社ACT3代表取締役
どうする? 女子のキャリア(4) 「時間を守る人」というブランドを内定者へ贈る言葉

 就活も一段落し、来年の就職まで、あとは学生生活を思い切り満喫しようという4年生もいるかもしれませんね。学生時代は、3、4年になれば朝一番の授業も減って、夜更かししても昼までベッドにいられる日もありますし、単位が取れそうならばずる休みだってでき、何より長い休暇もあります。自分である程度、時間の使い道を考えることができる貴重な期間です。

 ところが、社会人になると、男女や役割に関わらず「時間」というものに縛られるようになります。自分でコントロールできる時間が激減してしまうのです。二日酔いの朝も、大雨の日も、決められた時間までに仕事を始めるのが普通だし、会議やクライアントとのアポ、社内資料の提出期限なども自分ひとりでは決められない予定ばかりです。

 社会人になったら、そんな生活が40年以上も続くかもしれないわけだから、「学生のうちに自由な時間を満喫しておこう」と思う気持ち、よくわかります。でももし今、友人との待ち合わせに30分ぐらい遅刻しても気にしなかったり、気分が乗らなければ土壇場で予定変更したりして、お互い様で済ませているとしたら、学生でいる間から「時間」の概念を強く持つ習慣を心掛けることをお勧めします。「自由に時間を使う」ということと「時間に緩い」ということは全く別のことなのですから。

他人の時間を盗まない

 この設定された時間を守る、という習慣は、実は女性がキャリアを築いていく上で、持っておくべき武器の1つになります。「男女は関係ないのでは?」という声も聞こえてきそうですが、多くの選択肢の中でジタバタしながら仕事人生を歩んでいく女性にとっては、さらに重要度が増すのではないかと私は思っています。

 まだまだ女性には、ライフイベントやプライベートと仕事との関係に悩み続けなければならない、という宿命があります。学生のみなさんがそのような場面に出会う頃には、すっきりと解消されている世の中になっているといいのですが、おそらく現実はそう簡単に変わってくれてはいないでしょう。仕事と大切な何かを両立させていくのか、どちらかを優先させるのか、といった選択をしなければならないときがしばしばやってきます。

 選択した後も、仕事人としてだけでなく、妻や嫁、母の顔、保護者の顔、地域での顔など、果たすべき役割はどんどん増えていきます。つまり、大人になればなるほど、ひとつの役割だけを24時間やっていればよいということはなくなり、時間的な制約は増えるばかりなのです。

 そのように制約が増えたとき、「時間」という概念を強く持てている女性は本当に強い。自分の時間をコントロール、配分し、マネジメントする力は、「時間を守る」という習慣を根っこにして生まれるのではないかと私は思うのです。

 会社員時代、私の尊敬するある上司は、会議に1分も遅れたことがありませんでした。どんな朝も必ず、決まった時間に同じテンションで明るく挨拶しながら、オフィスに現れます。ある時、部署全体が集まる会議で数分遅れたメンバーが何人か入ってきた時、普段は穏やかな彼が厳しい表情で、「今遅れた者は、他のみんなの時間を数分ずつ奪っている。数分とここにいる人数を掛け算したら、どのくらいの時間になるのか考えなさい。その時間があれば、『ああ、後少し時間があったら』などと思わずに済むかもしれない。時間に遅れる者は人の時間を泥棒しているのと同じだ」と言いました。

 会場はしーんとして、全員が背筋を伸ばして姿勢を正していました。誰も「よく言うよ、自分だってよく遅刻するじゃない」なんて思わないきちんとした上司でしたから、余計にみんなの心に響いたのだと思います。時間を守る、ということは、他の人の時間を尊重するということです。そして、この習慣を持っている人と持っていない人では、自分の時間を尊重してもらいたいときに、どのくらい、周囲の反応が異なるか考えてみれば、この習慣の重要性はおわかりいただけると思います。

 あなたがワーキングマザーとなって、仕事と育児を両立しようと考えているとしましょう。私もワーキングマザーになって実感したのですが、こどもはこちらの都合に合わせて行動してくれるなんてことはありません。朝の忙しい時間に牛乳をこぼすわ、玄関で靴を履きながら「トイレ!」と叫ぶわ、保育園に行く道すがら道に落ちているどんぐりが気になったらしゃがんで動こうとしないなんてことも日常茶飯事です。時計を気にしながら、「ああ、まずい...。このままでは、あの電車に乗れない...」と泣きたくなった経験をしたワーキングマザーは多いと思います。

 それでも、遅刻をしてはいけないのです。「子どもが駄々をこねたので10分遅れます」だなんて、会社に連絡できるでしょうか。「気をつけてゆっくりいらしてください」という返信は、「はいはい、またですか」という意味で、鵜呑みにすべきものではありません。

「時間を守る人」というブランド

 そんな突発的な出来事があっても、遅刻せずに出社し、決められた会議のスタート時間にきちんと座っていられる、そんな女性だからこそ、こどもの急な発病などで遅れたり休んだりしなければならないとき、どうしても納期が間に合わないとき、「彼女がこういうなんて、よっぽどのことだ」と認識してもらえて、周囲からの惜しみない心配とサポートを受けながら仕事をやり遂げることができるのです。

 それにはどうしたらよいでしょうか? 実は、決まった時間の10分前に家を出ればほとんどの突発事態に対応できます。電車に乗り遅れても次の電車に乗れば間に合いますし、突然の雨でビニール傘を買ったり、伝染したストッキングを替えたりすることだって、子どものどんぐり拾いにほんの少し付き合うことだってできます。この10分の余裕をつくることを自分の将来への投資と考えられる人は、心強い武器を持てることになります。将来、「時間の制約」によって、何かを選択しなければならないとき、この武器を持っている人にはより多くの選択肢があることでしょう。

 女性は「時間の制約」という呪縛と闘いながら、仕事人生を歩み始めます。学生時代から、友人との約束の時間に遅れない、親とした帰宅時間の約束を守る、出席する授業に遅刻しない、不測の事態に備えて時間の余裕を持つ、といった、簡単なようでいつも必ず守ることの難しいこの習慣をあなたの習慣にするレッスンを始めてほしいなと思います。「時間を守る人」というブランドは、社会人になってからはもっともっと生きてきます。ぜひ今のうちから意識してみてください。
撮影協力:大東文化大学

堂薗 稚子(どうぞの わかこ) 1969年生まれ。92年上智大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材系事業の営業職を経て「就職ジャーナル」副編集長、「リクナビ派遣」編集長、カンパニーオフィサー、ダイバーシティ推進マネジャーなどを歴任。13年、 株式会社ACT3設立。女性活躍支援など、企業の組織開発・人材開発にかかわる調査・企画立案、コンサルティング・研修・講演などを行う。著書に『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(角川書店)。二児の母。

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