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デジタル社会の光と影(9)建築家、隈研吾さんが語る建築の未来とは

デジタル社会の光と影(9) 建築家、隈研吾さんが語る建築の未来とは
authored by 小川和也アントレプレナー、フューチャリスト

小川和也のデジタル社会の光と影(9)

 テクノロジーそのものの進化はさることながら、テクノロジーと交わることで進化するものが世の中にはたくさん存在する。そのひとつが建築で、テクノロジーによってこれから様相を大きく変えていく分野であると考えている。

家が知能を持つ時代も

 日本を代表する建築家の一人で、東京大学教授の隈研吾氏とテクノロジーがもたらす建築の新たな可能性について、最近対談をする機会があった。隈氏は現状でも複雑な曲面や部材配置などを設計するためにコンピュータを多用し、テクノロジーを活用することでクリエイティビティ溢れる建築を実現している。

 しかしこれから、テクノロジーがもっと建築の世界を変えていくであろうことは、互いの共通認識だ。モノのインターネット化(Internet of Things : IoT)は建築物にも影響を与え、インターネットと接続することで建築物が新たな機能を持つ。それは照明やエレベーターのコントロールのレベルにとどまらず、建物内の壁などの空間操作にまで及ぶ可能性がある。さらには建築物が人工知能と融合し、「家が知能を持つ」時代も訪れるのではないかと考えている。住人が便利で快適に過ごせるように家が知能を持ち、生活をアシストするのだ。

 隈氏は建築家でなくても、3Dプリンターで家をつくることができるようになる斬新な未来をも予見する。まるで夢物語のように映るが、それはさほど遠くない未来の話であろうと隈氏は言う。もちろん現状においては、技術的、法的な問題が高い壁として立ちはだかっているものの、もはや時間の問題だと捉えているのだ。

3Dプリンターで家づくり?

 隈氏は対談の中で、次のように語っている。

 「完全にバーチャルの中にあるものというより、模型的なものをつくるというのは面白いんですよね。模型なんかはつくっていると結構入り込んでしまう。3Dプリンターによって、模型づくりもしやすくなっていますしね。学生たちが興味があるのも、実際の建物より小さなパビリオンづくりだったりします。なぜならパビリオンだと自由に楽しいものがつくれるからなんですね。建築の法規では使えない材料をどんどん使ってみたり、3Dプリンターで単位となる部品をつくってそれを組み合わせたりと、まるでバーチャル建築なんです」

 様々な制約を外して、3Dプリンターで自由につくれるパビリオンだからこそ、学生のクリエイティビティも発揮できるということなのだろう。それがパビリオンだけではなく、多くの制約なしに実際の家まで自由につくれるようになったときには、そのクリエイティビティが新しい建築の可能性を切りひらくに違いない。3Dプリンターで家をつくることができるようになる未来で物を言うのは、柔軟な発想力だ。

 だからこそ、隈氏は「試せる環境」が重要であると言う。自由に試し、たとえ失敗してもそこから学び、新しいものを生み出すことに挑戦できる環境こそが未来を築くという考えだ。

 それはベンチャービジネスの世界においても然りで、最初から答えが見えているようなことや既成概念にとらわれていては、イノベーションなど起こせない。多くの人が「きっと無理だろう」「そんなことうまく行くわけがない」と思うようなことに挑んでこそ、先入観や前例主義の枠の中では成し得ないことを成し遂げられる。

 テクノロジーによって、いまはあり得ない多くのことが当たり前になる時代が来るだろう。その時代において、リスクがあるから試さない、挑戦しないということは、むしろ反対に最大のリスクになってしまうかもしれない。

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