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[ liberal arts-大学生の常識 ]

ロボットが変える未来(2)W杯優勝チームを破ろう!

浅田稔 authored by 浅田稔大阪大学教授
ロボットが変える未来(2) W杯優勝チームを破ろう!

 ロボット研究の第一人者、大阪大学の浅田稔教授が中心となって、ルネサンス期の巨匠、レオナルド・ダビンチそっくりのアンドロイドを開発しました。ロボットにどんな夢を抱きながら、研究に取り組んでいるのか。浅田教授に、教育や仕事という視点を交えて語ってもらいました。

人間とロボットがサッカーの試合

 私はかつてロボットの国際大会「ロボカップ」を創設した中心メンバーの1人です。人間が操作せずに自分で判断して動くロボットを競う大会で、ロボットがサッカーなどの競技に取り組みます。実は、私は阪神タイガースの熱烈なファン。ロボットに野球をやらせたいくらいなのですが、ルールが複雑すぎて、自律的に動かすことが難しい。それでサッカーを選んだのです。35年後の2050年には、人間のサッカーのワールドカップ優勝チームに勝てるような自律ロボットのチームをつくることが夢です。

 人間と真剣に対戦するとなると、ロボットの表面は柔らかくないといけない。表面が人間の肌のように柔らかいと、ぶつかった時に人間を傷つけないし、ロボット自体も壊れにくい。ハード、ソフト両面で人間に近づける必要があると考えています。

ロボカップのヒューマノイドリーグは人工知能を搭載したロボットが競技する(ロボカップ日本委員会提供)

 このロボカップには、子どもを対象にしたジュニア大会もあります。ロボットを通じて、啓蒙活動を広げたいと考えるからです。ダビンチのアンドロイドをつくったのも、ひとつには、子どもたちに科学への興味を持ってほしいからです。

子どもの成長とともに薄れる関心

 子どもへの教育ということでいうと、私はさまざまなロボット教室にも協力してきました。少し困っているのは、小学生のころは盛んに参加していても、中学生、高校生と成長するに連れて、顔を見せなくなってしまうこと。受験勉強が忙しく、ロボットどころでなくなってしまうのです。受験一辺倒という現状には疑問を感じますね。「大学生になったらもう一度、ロボットをやりたい」と言ってくれる高校生もいます。でも、今度は「成績が足りず、浅田先生の大学には進学できません」なんてことになってしまう。

子どもも興味津々な様子……。浅田教授らが開発したダビンチ・アンドロイドを9月、イタリア・ミラノのレオナルド・ダビンチ国立科学技術博物館で展示した

 ちなみに私には息子が2人います。以前は、私がアドバイスできるように、同じ科学者の道を歩んでほしいと思ったものでした。でも実際には、2人とも違う進路を選びました。いまになって思うのは、科学者としては積極的に研究に取り組んでいる私でも、親の立場になると、つい保守的な姿勢になってしまうこと。息子たちが親の希望通りになれば、などと考えたことを反省しています。

人間がやりたい仕事をつくっていこう

 子どもの教育の問題に続いて、大人になってからの「働く」ということについて考えてみましょう。サッカーのワールドカップ優勝チームを破るロボットチームが誕生する世の中になれば、かなりの仕事がロボットに置き換わっている可能性があります。よく、人工知能(AI)が進化すれば、現在の人間の職業の多くを奪ってしまうだろう、という議論があります。

浅田教授の研究室にはドラムセットが置いてある。研究の合間に楽器に向かって気分転換(大阪府吹田市の阪大)

 でも、ロボットは人間をアシストする存在です。人間がやりたいと思える仕事を奪ってはいけないでしょう。私たちは、自分たちが従事すべき人間らしい仕事をつくっていくことが必要です。

 一方で、高齢者の介護のように、ロボットが活躍する分野もあるでしょう。例えば、自動排泄ロボットなどは、高齢者が「他人には見られたくない」という羞恥心を傷つけない役割が期待できそうです。

 ロボットは将来、宇宙や原子力プラントなどの極限作業、監視・警備、交通システム、農作業や建設作業、災害救助、そして介護・介助といった各分野で、活躍するのではないでしょうか。

(聞き手は村山浩一)

浅田稔氏(あさだ・みのる) 大阪大学教授、大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻。滋賀県出身。1982年大阪大学大学院基礎工学研究科後期課程修了。 1989年工学部助教授。1995年同教授。 1997年工学研究科知能・機能創成工学専攻教授。 工学博士(大阪大学)。1986年から1年間米国メリーランド大学客員研究員。 ロボカップ創設者の1人であり、認知発達ロボティクスの第一人者。

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