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[ career-働き方 ]

卒業までにやっておくべきこと(3)サントリーの中村曜子さん
「“お客さん”を観察しよう」

authored by 日経カレッジカフェ取材班
卒業までにやっておくべきこと(3) サントリーの中村曜子さん「“お客さん”を観察しよう」

 就職戦線を乗り切って内定を勝ち取った就活生のみなさんに、先輩社員からのメッセージをお届けします。第3回は、サントリービールのプレミアム戦略部の中村曜子さん(28)です。(1回目2回目はこちら)

店頭ウオッチングが日課

――いまはどういうお仕事をされているんですか。

 私の担当は「ザ・プレミアム・モルツ」のブランドマネジメントです。製造から販売や宣伝、広告まで、社内外の多くの人々と協力して、コンセプトや味、パッケージなど、どのようなビールがお客さんに受け入れられるのか、多くの人の力を借りながらブランドを作り上げていきます。

――1日のスケジュールを教えてください。

 朝出社したら、始業前に席で朝食をとります(笑)。それからメールをチェックして1日のスケジュールを確認します。ブランドマーケティングの仕事は、工場や営業、宣伝など社内だけでも数十人の人と意見をすり合わせながら進めるので、昼間は打ち合わせやウェブ会議などが頻繁にあります。お客さんに商品についてグループインタビューをすることもあり、そこでの意見は大変参考になります。

 社内外の人の協力を得るためには、「こういう製品にしたらよいのでは」「こういう売り方が有効そう」という自分の主張と、それを裏打ちする説得力のあるデータや資料をまとめることが必要です。打ち合わせの合間にはこうした作業も欠かせません。

 帰りには、だいたいどこかのスーパーやコンビニなどに寄って、お客さんの様子を観察しています。ビールに限らず、どんな人がどういう飲み物を何と一緒に買っているかを見たり、買った物からどんな生活をしている人なのか推理してみたりします。通勤途中の駅で下りて、周辺の店に入ってみることもあります。先輩にも「24時間商品のことを考えろ」と言われましたが、自然とそういう行動になっていますね。

――どんな学生時代でしたか。

中村曜子さん(なかむら・ようこ) 大阪府出身。神戸大学工学部卒。2009年、サントリーホールディングス入社。人事部を経て、現在サントリービール株式会社プレミアム戦略部に所属。「ザ・プレミアム・モルツ」のブランドマネジメントと新製品開発を担当

 私は工学部で土木工学を専攻していましたが、アルバイトとしてカフェで働きました。接客の仕事はお客さんの気持ちを推し量って、マニュアル以上のサービスができると、その場で反応が返ってくるのが楽しかったです。小さな子ども連れの人にはストローを短く切って出したり、薬を飲もうとしている人には常温の水を出したりして、とても喜ばれたのを覚えています。ときには「あれ、ハズレかな?」ということもありましたが......(笑)。

 そうして得たノウハウは仲間と共有することで、より多くの人に喜んでもらえて、よりよい仕事ができる。人とかかわり、人に喜んでもらえる仕事の楽しさを知って、食品など消費者に接する仕事に興味を持ちました。理系なので周囲は大学院に進む人がほとんどでしたが、私は自分が現場で学びながら成長できる仕事を見つけたと思ったので、迷うことなく就職活動をしました。

仕事を通じて成長したい

――就職先にサントリーを選んだのは。

 食品業界に関心があったのと、サントリーの「やってみなはれ」の精神が、仕事を通じて刺激を受け、成長していきたいと思っていた私の気持ちと通じると感じたためです。

 就職活動では、留学していたり、体育会で全国レベルの活躍をしていたり、といった華々しい経歴の人と面接で一緒になると気後れしてしまいがちでしたが、自分が成し遂げたことの大小より、「自分が何か1つのことをやり遂げられたか、その経験を通じてどう成長したか」の方が重要だと思うようになりました。内定が得られたのも、それが評価されたのではないかと思っています。

――内定が出てからは、どんな生活をしていましたか。

「ザ・プレミアム・モルツ」のブランドマネジメントに携わる

 4年の春に内定を得た後は、会社からは特に何をしておくようにという指示もなく、「今しかできないことを全力でやっておきなさい」と言われていたので、大学で研究室に配属されてからは研究に打ち込みました。専門は地盤工学で、崖崩れの起きそうな箇所を予測するために仮説を立て、土を採って調べたりしていました。アルバイトと研究で知った「想像して仮説を立てて、それを検証する」という楽しさは、もちろん入社後の仕事でも同じですね。

 入社まで、同期とも何度か集まる機会がありました。みんなお酒とお酒の場が好きで、「やってみなはれ」に共鳴した人たちなので、話していてもとても楽しかったです。入社後も、出張先に営業などで同期がいると、商品や販売の状況などが本音で聞けるのはありがたいと思いました。

――入社してみて、どうでしたか。

 営業を希望していましたが、配属されたのは人事部でした。採用や昇進・昇格など、間違いが絶対に許されない仕事で、地味な業務も多いのです。でも先輩に「仕事と作業は違う。"作業"もその目的と意味をよく考えれば"仕事"になるんだ」と言われて、しだいにそれを実感することになりました。

 学生時代は食品メーカーというと、営業とか商品開発ぐらいしかイメージできませんでしたが、会社に入ってみるとスタッフも含めて多くの仕事があって、それぞれの立場でかかわって初めて、商品をお客さんに届けられるのだということがわかりました。学生のときは、「自分の専門を生かしたい」とか、「この会社ならこの仕事でなくちゃ」と決めつけがちですが、仕事を通じて自分が学び、成長することを目指すという点では、あまり希望の配属にこだわりすぎるのはもったいないですね。

――それから今の部署に移ったのですね。

数量限定商品「芳醇エール」の開発から販売まで一貫して関わった

 約5年人事部にいて、今度はもう少し消費者に近いところで仕事をしたいと思い、希望して昨年から今の部署に異動になりました。自分は営業やブランドでの経験がないため不安でしたが、多くの人の協力を得て、数量限定商品の「芳醇エール」というビールの担当を務めることができました。8月の発売日にチームのみんなで店頭に行って、棚に並んだ商品を目の前でお客さんが買っていく姿を見たときには本当にうれしかったです。

英語より、今しかできない経験を

――学生時代にしておけばよかったと思うことはありますか。

 現在の仕事では直接英語は使いませんが、会社がグローバル展開を進めているので、全社的に英語学習が奨励されています。職場でもTOEICをみんなで受けてスコアを競ったりして、英語の勉強は続けていますが、学生時代もう少しやっておけばよかったかもしれません。

――就職を控えた大学生のみなさんにアドバイスがあれば。

 今の話と矛盾するようですが、実は勉強や資格の勉強は会社に入ってからでもできます。それよりは、勉強でも何でも、「今しかできないこと」に打ち込んで、そこから何かを学び取ってほしいと思います。

 もうひとつ、毎日コンビニでお客さんを観察して推理しているという話をしましたが、学生のみなさんも、会社に入る前のまっさらな視点で、入社する会社の商品や業務内容について、商品を購入するお客さんを観察したり、どんな需要があるのか考えてみてはどうでしょうか。どういう人がどんなつもりで商品を買っているのか、何らかの仮説を立ててそれを検証するくせを身につけていくと、どんな仕事にも役立てられるはずです。

連載【卒業までにやっておくべきこと】

(1)全日空の財津弘彬さん「英語学習と生活リズム維持を」
(2)大和ハウスの康乗佐知さん「幅広く資格や体験を」
(3)サントリーの中村曜子さん「"お客さん"を観察しよう」
(4)大和証券の水村茉菜さん「経済の勉強を。仲間も大切に」
(5)大塚製薬の大竹悠さん「ボランティア、いまに生きる」
(6)JTBの田中奈津子さん 「5回の卒業旅行で学ぶ」
(7)NTTデータの八巻絵美さん 「勉強会や交流会に参加」
(8)トヨタ自動車の田宮幸恵さん 「異文化と触れ合おう」
(9)日本航空の村杉汐音さん 「大学の授業を大切にしよう」
(10) 三井物産の中岡壮史郎さん 「目標を立ててクリア」を繰り返せ
(11)楽天の戸田雅子さん 「社会人と話す機会を作ろう!」
(12)東京海上日動の森山大志さん「内定後もOBを訪問」

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