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やる気スイッチを入れよう(2)松岡修造さんの
日めくりカレンダーが売れるワケ

やる気スイッチを入れよう(2) 松岡修造さんの日めくりカレンダーが売れるワケ
authored by 菊入みゆき明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン
ワーク・モチベーション研究所長

 学生の皆さん、やる気は伝染します。やる気のある人のそばにいるとやる気が上がり、ない人のそばでは低くなります。やる気の伝染には、「知らず知らず」のルートと、「意識して」のルートの2つがあります。

 やる気伝染のメカニズムをうまく使って、自分のやる気もまわりのやる気も上げる方法を解説します。

がんばっている人を見ると、がんばれる

 「もう、疲れたから、このへんでやめちゃおうかな」と思った時、隣の人がまだがんばっていると、「お、そうか。じゃあ、もうちょっとやろうかな」と、つられてがんばることがあります。これは、やる気の伝染です。やる気は、あくびと同じように、ウツルことがわかっています。

 ニュースで、スポーツ選手ががんばっているのを見ると、「よし、自分もがんばろう」と思う。友達が、部活やバイトをがんばってやっていると聞くと、「自分もがんばらなきゃ」と思う。これらも、やる気が伝染していると言えます。

知らないうちにウツッテいる

 実は、やる気は知らないうちにも、ウツッテいます。スポーツ選手や同級生のがんばりを見たり聞いたりして、「がんばろう」と思うのは、自分が意識していることです。でも、それ以外にも、自分で意識していないところで、やる気はウツルのです。

明星大学経済学部のキャリア授業。好きな本を熱心にプレゼンテーションする様子から、聞き手にもモチベーションが伝播してくる

 誰かが隣のテーブルで、「あの授業、すっごく面白いよね、夢中で聞いたよ!」「昨日は、バイト、めちゃめちゃがんばっちゃったよ」「今やっている○○、うまくなりたくてガンガンに練習してるんだ」という発言をしているのが、なんとなく耳に入ってくるだけで、そのあとの行動が、やる気のあるものに変わります。例えば、いつもより集中して授業を聞いたり、スピードを上げて作業をしたり、筋トレをいつもより回数多く行ったり。

 やる気の対象となるものが違っていても、この現象は起こります。バイトでがんばっている話を聞くと、そのあとの授業でがんばる、ということがありえるのです。

 自分では意識せず、「知らず知らず」やる気がウツッテしまっているのですね。やる気を感じさせることばが耳に入ったり、映像を目にしたりすることで、脳内のワーキングメモリの中で、やる気に関係する部分が活性化すると言われています。

松岡修造さんのやる気もウツル

 元プロテニス選手の松岡修造さんの日めくりカレンダーがベストセラーとなっています。松岡さんらしい熱いメッセージで読む人を元気づける、というものです。メッセージの本来の効果の他に、「知らず知らず」の効果もあるのではないかと思います。

 カレンダーの紙面からは、松岡さんの前向きでアグレッシブな声が聞こえてきそう。実際にプロテニス界で努力を重ねた人ですから、がんばる姿もイメージできます。

 こうした総合的なイメージが私たちのワーキングメモリの関係する部分を活性化させるのでしょう。すると、特に意識をしなくても、そのあとの行動が変わるのだと思います。

やる気ウツサレの極意

 やる気伝染のメカニズムをうまく使って、自分のやる気を上げましょう。

極意その1「知らず知らずウツサレル仕掛け」

 自分の身のまわりに、やる気が上がるようなことばや画像、音楽を置いておきます。ふだんから目に付くところに置く、スマホですぐに見られるようにしておく、部屋にその音楽を流しておく、などがおすすめです。いつの間にかやる気になる、という環境を作って、その中に自分を置くようにします。

やる気を伝染させるメカニズムを活用すると、自分のやる気も、まわりのやる気も高めることができる

 ふだんから、やる気のある友達のそばにいることも大切です。そういう人は、日常的にやる気発言をしたり、がんばる行動を取っているので、知らず知らず刺激されます。

極意その2「わざとウツサレに行く」

 「今日はどうしても、ガッとやる気を上げたい」というときは、自分からウツサレに行きましょう。やる気がある友達と会って話をします。その友達が、今一番がんばっていることを聞いてください。

 「最近、部活、どう?」「部活? いやあ、もうすごいことになってるよ」「へえ、どんな感じ?」「俺、○○が苦手だろ? だから毎朝毎晩百回ずつ練習してるんだ」というように、がんばっていることを具体的に、くわしく聞きましょう。 できたら、なぜそれほどがんばるのか、理由や事情も聞いてみます。

 「なんでそんなにがんばれるの?」「うーん、なんでだろ。そうだな、練習はきついんだけど、なにか一個できた、と思うと、すごく自信が湧いてくるんだよな」という感じです。

 相手のがんばる姿や自信が湧いてきたというその気持ちに、自分自身を重ねてみましょう。やる気が伝染してきます。

自分と「ちょっと」似ている人がベスト

明星大学の学生たちと=筆者は右から3人目

 自分と環境や人柄などが似過ぎている人だと、ライバル意識が邪魔をすることもあります。同じ部活のレギュラーメンバー同士だと、なかなか本音を言えないということもあるでしょう。

 がんばる対象は違うけれど、ちょっと自分と似ている人がやる気伝染には良いようです。例えば、自分は今ゼミの活動に集中しているが、同い年の友人がバイトを一所懸命やっている、などです。同い年という共通点があり、且つがんばる対象が違うために、かえって素直に話が聞けて、すんなりとやる気が伝染してきます。

極意その3「逆輸入でウツサレル」

 あなた自身も、やる気の感染元です。よいやる気をまわりにウツシましょう。不満やグチはほどほどにして、「さ、がんばろう!」「面白そうだね。みんなでやろうよ!」というポジティブな発言で、みんなを励ましましょう。そうすると、あなたのまわりの人のやる気が高くなる。まわりの人のやる気が、またあなたに伝染してきます。「やる気の逆輸入」です。

 やる気は伝染し合っています。まわりの人と互いにサポートし合いましょう。

菊入みゆき(きくいり・みゆき) 明星大学経済学部特任教授、JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長。筑波大学の博士課程で、組織におけるモチベーションの伝染について研究中。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBモチベーションズでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。

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