シンプルを楽しむ「ノームコア風」ファッション女子
私たちのリアル(9)
フライングハロウィンを楽しむ人たちが渋谷に集まり、仮装したまま授業を受けるなんて学生の話も聞きますが、そんな派手派手仮装ウィークがある一方で日常ファッションは、どんどんシンプルになっています。そこで今回は、大学生女子のファッションスタイルについて現役大学生数名に聞いてみました。
4タイプに分かれるファッションスタイル
あがってきたのは次の4タイプ。とはいえ、とにかく平和が大事で、男女も年齢も平等第一の今の若者たちはもちろん、「私は○○系」なんて自分をどこかに所属させる発言はしません。ただ、自分はこうありたいというイメージは明確に持っている子が多いようなので、客観的に見た時のタイプ分けをご紹介します。
安定コーディネート系
派手ではありませんが、全身流行に乗っている、THE普通。最も大学生に多いのがこの層と言えます。GUやF21、カスタネなどで全身コーディネートし、流行は常に取り入れつつも派手になりすぎないモノを選んで身に着けるタイプ。
OL系
いわゆる大人っぽく、女性らしいキレイめお姉さまファッションのコ。女子大や都内の有名大に多く、スカートルックがデフォルトスタイル☆ リュックで学校には行かない、いわゆるキレイ系。美容情報に敏感で、ブランド物を多くもっているイメージ。
海外志向系
ファッションだけでなく生活スタイルも海外に敏感な子たち。基本、海が好き、夏も日焼けを気にせず、ビーサンはいて髪の毛ロングの前髪かきあげるイメージ。ホリスターやアバクロ、American Apparelなどをよく着ている。サーファー系も大体このタイプでわりとシンプルなファッションが多い。海外セレブのファッションブームに感化されているタイプもいる。
スポーティー&ストリート系
ダンスブームをきっかけに、ボーイズファッション寄りのストリート系が増加。数年前でいう原宿系や古着系の一端が流れている感じ(裏原宿にストリート系のお店が多いことも要因)。ダンスサークルにいるような派手な印象でChampionやNike等スポーツブランドのトレーナーを好むのもこのタイプと言える。一時期原宿でよく見かけたカラフルで派手なサイケデリカルな個性派は減少傾向。都内近郊ではめったに見かけなくなりました。
学生の間で定着してきた「Normcore」
そして、今回ご紹介するのが「究極の普通」として注目された「Normcore(ノームコア)」。元々、言葉作りが得意な広告業界のニューヨーカーたちが"normal"と"hardcore"をあわせて、ブランドの世界観を伝えるために用い始めた言葉。2012~2013年頃からじわじわと浸透してきました。
オーガニックブームの流れで、モノを選ぶときの重要ポイントが「こだわりの素材」になり、このウェーブはNYファッション業界にも伝播して生まれたのが、"究極にこだわった素材で魅せる普通なファッション"。1万円の白Tに5万円のジーンズなど、シンプルなのに超高価というスタイルがセレブリティーやモード業界で注目されました。
こだわりのシンプルは、ヨーロッパ、とくにパリでは昔から用いられてきた当たり前のファッションイメージですが、改めて「究極の普通」として取り上げられたことで日本人にも取り入れやすい流れができたようです。30代以上の女性たちから耳にすることが多かった「Normcore」が、今年は学生の間でも定着してきているようです。
「ノームコア風」で"究極の普通"
ただし、Normcoreの思想をそのまま忠実に再現するにはかなりお金がかかります。そこで、大学生の中では学生らしく「ノームコア風」を生み出し、究極の普通を取り入れ、楽しむ人が増殖しています。
「ノームコア風」ファッションアイテムとして人気なのが、「パックT」。ユニクロメンズのパックTを着こなす女子が急増中。白が断トツ人気ですが、グレーや黒も使いやすいと人気です。元祖パックTのHanes(ヘインズ)から、アメリカのHanesのTシャツ。厚手なのが特徴のFRUIT OF THE ROOM(フルーツ オブ ザ ルーム)などなど。ノームコアブームはパックTブームにも大きく影響しています。
ノームコアファッションを発見して発信し始めたのは海外志向系の子達でしたが、今ではタイプを越えてみんなが着られる、全タイプに行き渡ったスタイルといいます。以前は、OLタイプの子はTシャツにジーンズなんて手を出していませんでしたが、ノームコアは"シンプルでかっこいいおしゃれ"というイメージが確立されたことで、スキニージーンズを履きこなすようになりました。
キャラクターが立っているからこそ活きる
ファッションの傾向は、発言とも比例しているという声がありました。ノームコアの人たちは、普段は発言も控えめで積極的ではないけれど、雰囲気が変わるような影響力のある言葉をボソッと発するイメージ。キャラクターが立っているからこそノームコアが活きている、雰囲気のある人が多いイメージが強いようです。
いつの時代も、身に着けるもので自分のキャラクターをマネージする女の子たちですが、今はSNSを通して自分が見られる場面(他人から外見的に評価される場面)が増えています。そんな中で"Normcore"が注目され、「Simple is the best=cool」の考え方が定着しました。
その背景には、自分がどう見られるかを気にせず、ストレスなく身に付けられるものを日本人(特に若い世代)が求めていたということがあるのかもしれません。シンプルなものを身にまとうことで、個々の持つ個性を強調させたい、見えない個性を大事にしたいという意識にシフトしてきているともいえます。
誰にでも選択する権利があり、汎用的な、真っ白なキャンバスともいえる「Normcore風」思想は、しばらく続きそうです。
ブームプランニング社長。山口県出身。1986年に企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を発足、女子高生ビジネスを立ち上げる。88年、株式会社ブームプランニングを設立し、女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。現在、未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦、シニア層まで全国1万人以上ネットワークを広げ、様々な業種で企業の商品開発にかかわる。活動に関係した女子高生は10万人。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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