からだとやる気の深~い関係
やる気スイッチを入れよう(4)
からだとやる気の間には深い関係があります。やる気がアガるポーズ(姿勢)と萎えるポーズがあるのです。アガるポーズを取ることで、自分のやる気がアガルだけでなく、まわりにいる人がストレスに強くなるという効果もあります。
やる気がアガるポーズvs萎えるポーズ
ポーズを変え、からだを動かすことで、自分のやる気もまわりのやる気もアゲていきましょう。
やる気が上がると、からだに反応が表れます。例えば、「よおし、今日中にこのレポート、片付けるぞ」というときには、シャキーンとした姿勢になり、きびきびと動く。大事な発表や面接で、「うまくやれるよう、がんばるぞ」というときには、背筋を伸ばし、まっすぐ立ったり、きちんと座ったりする。
やる気が、からだに影響を与えたわけです。これ、実は、逆もありです。からだが、やる気に影響を与えるのです。シャキーンと背筋を伸ばした姿勢や、きびきびとした動きをすると、やる気が上がってきます。
やる気が下がるときも同じです。行きたくない授業やバイトに行くときは、肩を落とし、下を向き、のろのろ歩く。この「肩を落として下を向く」というからだの動きそのものが、やる気を下げます。
うつむいて、縮こまったポーズを取ってみてください。その状態で、楽しいことを考えることができるでしょうか。とてもむずかしいですね。
からだとやる気は、深い関係があるのです。
よい姿勢はストレスに強い
あごを上げ、胸を張って周囲を見下ろすような自信満々の姿勢でいると、痛みなどのストレスに強い、という研究結果があります。私たちは、悩んでいるときや辛いとき、がっくりと猫背になってしまいがちです。しかし、そういうときほど、いい姿勢でいたほうが、ストレスに対処するためにはいいのです。
お笑いコンビ、オードリーの春日さんは、まさに、「胸を張って周囲を見下ろすような自信満々の姿勢」を取っています。明るく安定した芸風や、ボディビルなど多方面での活躍は、あの姿勢によってストレスに強くなっていることが一因かもしれませんね。
「やった!」のポーズはアガる
ものすごく嬉しいことがあったとき、思わず、「やった!」と腕を高く上げたり、飛び上がったりしますよね。この「やった!」のポーズは、やる気を上げます。
コロンビア大学とハーバード大学の研究者の実験によれば、このポーズによってやる気に関わるホルモンが増え、ストレスに関わるホルモンが減ったそうです。
ポーズのポイントは、空間を大きく取って、腕や胸を広げていることです。
「しょぼん」のポーズは萎える
逆に、空間を小さく使い、腕や胸を縮こまらせるポーズを取ると、やる気ホルモンは減り、ストレスホルモンが増加したそうです。「しょぼん」のポーズは、やる気を萎えさせてしまうのです。
このポーズ、実は私たちがよくしているものです。スマホやパソコンを操作するときです。背中は丸くなり、腕や胸が縮んでいますよね。気を付けないと、どんどんやる気が下がってしまう可能性があります。
スマホやパソコンに向かう時も、できるだけ縮こまらずに、姿勢をよくすることをおすすめします。
姿勢が、まわりのやる気もアゲる
よい姿勢は、まわりにいる仲間にも影響を与えます。近くにいる仲間がいい姿勢でいると、ストレスに強くなるのです。春日さんの相方である若林さんも、もしかしたら影響を受けて、ストレスに強くなっているのかもしれませんね。
背筋を伸ばしていることは、自分にもまわりにもいいのです。
動けば、やる気はアガる
からだを動かすことも、やる気を上げる大きな要因です。からだを動かすとなにかしら反応があります。単純に「あ、動いている」と実感したり、筋肉がほぐれたり、暑くなったり、逆に風を受けて涼しくなったり。こうした反応が、やる気のスイッチを押してくれます。
ある食品会社に入社して3年目の人が、こんなことを言っていました。「仕事で煮詰まったときは、トイレに行くふりをして、さりげなく社内を歩き回ります。それだけでもリフレッシュしてやる気になります。さらに、出会った人と雑談して、手伝おうか、と言われたりして、現実に仕事にプラスになることがあります」
煮詰まったら、そこで頭を抱えずに、動くことが解決のきっかけになるのですね。「犬も歩けば棒に当たる」ということわざがありますが、「人も歩けばやる気がアガる」と言えるのです。
「やった!」ポーズと「その場ダッシュ」
とはいえ、課題のレポートや予習などで、縮こまって机に向かうこともあります。やる気が下がってきたら、立ち上がって、からだをリフレッシュさせましょう。
とりあえず、胸を張り、背筋を伸ばし、「やった!」のポーズです。そして、歩いたり、腕を前後に振ったりして、からだを動かしましょう。歩き回るような時間もスペースもない、というときのおすすめは、その場ダッシュ。手軽に短い時間で、狭い場所でも実行することができます。その場で、足を上げ、リズムよく走ってみましょう。
自分のやる気をコントロールして、楽しい大学生活を送りましょう。
明星大学経済学部特任教授、JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長。筑波大学の博士課程で、組織におけるモチベーションの伝染について研究中。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBモチベーションズでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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