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仕事も家庭も
霞が関の若手女性、働き方に変化

仕事も家庭も霞が関の若手女性、働き方に変化

 「不夜城」と呼ばれ夜遅くまで明かりが付いているのが定番だった霞が関で、若手女性公務員の働き方が変わりつつある。女性活躍を推奨する政府は「隗(かい)より始めよ」と女性比率の向上を進める。変化を追った。

 政府の人事政策を一元管理する内閣人事局が今夏、女子大学生限定の就業体験(インターンシップ)を初めて企画した。キャリアと呼ばれる国家公務員幹部候補の試験の女性合格者は全体の2割どまり。志望者を増やすため仕事の魅力を直接、伝える試みだ。

 282人が1週間、仕事を体験した。初日は政府の中枢を担う内閣官房、2日目以降は小グループで2カ所の省庁に入った。力を入れたのは「働きやすい職場」を訴えることだ。

 東大経済学部3年の宇田川晴加さん(22)は子育て中に早期退庁したり、育児休暇をフルに取ったりした職員の話を聞き「女性にもチャンスが広がっていると励みになった」と話す。国家公務員は結婚できないというイメージを持っていたのが変わったといい「私はワークライフバランスを大事にしたい」と話す。

女性限定のインターンシップで女性キャリア官僚(中)に国家公務員の仕事や生活などについて聞く大学生(東京都千代田区)

 学習院大法学部に通う栗山千加さん(19)は1年生ながら参加した。出産後4カ月で復帰し、定刻退社で子育てと仕事を両立する職員の話を聞いて「女性だからと差別されることがないと分かった」。国家公務員が将来の選択肢になった。

 国家公務員幹部候補の女性採用の比率は2015年度、34.3%と前年度比10ポイント以上上昇した。ただ女性比率が1割に満たない男性職場も多い。そんな環境で働く若手の女性職員はどう考えるのか。

 国土交通省入省5年目の渡辺加奈さん(30)は河川計画課でホームページ作りなどの広報活動や入札契約制度が担当。「情熱があって魅力的な人が多い」と霞が関に飛び込んだが、当初は男性と同じ働き方ができないのではと不安だった。

 今は職場の変化を感じる。渡辺さんの直属の課長は平日の早期退庁や1カ月に1回の有給休暇の取得を課員に呼びかける。「早く帰ると、あいつは頑張っていないと思われ、大事な仕事を任せてもらえないという不安感があったが、上司の言葉に安心した」と話す。

 渡辺さんは未婚だが、平日は自分の仕事が終われば友人と食事に行き、休暇には同僚らと登山に出かける。一昔前の職場の先輩女性は、両立には両親の助けが不可欠で、パートナーは関東出身の理解ある人でないと難しかったという。今は仕事も家庭も妥協しない人生設計が頭にある。

 交通管制システムやインターネット不正の取り締まりなど警察庁の男性理系職場で働く中井麻衣子さん(33)は「早く帰りたい時は帰ります。やりにくさは全くない」。上司自体が早帰り。どうしても居残る場面はあるが、部下には「残業するなよ」と呼びかける。

 とはいえ、まだ課題は多い。今夏、政府は「ゆう活」として平日の勤務時間を1~2時間前倒しして夕方を家族との時間などに充てる取り組みをしたが、定時退庁した公務員の割合は65%にとどまった。主導した有村治子女性活躍相は「おそらく省庁や部局によって温度差がある」とみる。

 内閣府は職員のパソコンに退庁予定時刻を示すタグを付け、職員ごとの帰宅時間を考慮して仕事を割り振った。無駄な残業が減り、職員の評判は上々だ。一方、安全保障関連法の審議に延長国会の最後まで取り組んだ防衛省の実施率は低迷した。男性の割合が多いある官庁の女性職員は「むしろ女性が増えることへの不安もある。職場の雰囲気がどう変わるか想像がつかない」と話す。

 財務省は予算編成時期は多忙を極める。国土交通省の若手は地方勤務が付きもの。どんな職場でも本当に家庭との両立は可能なのか。改革は初めの一歩だ。

人事局審議官の定塚氏に聞く

内閣人事局の定塚由美子内閣審議官(10日、都内)

 働き方改革を進める内閣人事局の定塚由美子内閣審議官に聞いた。

 ――厚生労働省での職歴が長いですが、若手の頃の働き方はどうでしたか。

 「入省1年目に結婚し子どもが小さい時は本当に大変だった。長時間残業が当たり前の時代で、子どもとは週末しか会話ができない日々が続いた。この時の経験は後に育児休業や保育所整備の政策立案に生きた」

 ――霞が関の働き方は変わってきたと感じますか。

 「ずいぶん効率化が進んでいる。長時間残業が霞が関全体で減っている。定時退庁する人が増えてきた。5段階の決済を3段階にしたり、会議を減らしたりという対策が奏功している」

 ――今年は国会の会期が延長するなど仕事量は多いはず。定時退庁が難しい人もいると聞きます。

 「国会の要員は一部だ。ほとんどの職員は仕事のやり方次第で残業を減らせるはず。資料の見栄えを気にするなど、まだまだ要らない仕事が残っている。管理職が何の仕事を捨て、何に力を入れるのか、取捨選択の指示の仕方が鍵になる」

 ――残る課題は。

 「女性の活躍を一層推進するには男性の協力が不可欠だ。男性にも育休を取ってほしい。子育ては間違いなく貴重な体験になる。育休の期間も仕事をしていたのと同じ評価にすれば育休取得は広がる」

(甲原潤之介、林咲希)[日経電子版2015年9月26日付]

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