日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

ソーシャルビジネスの新しい波(3)「社会起業家」と「起業家」の違いは?

ソーシャルビジネスの新しい波(3) 「社会起業家」と「起業家」の違いは?
authored by 和田有紀子Out;Elite(アウトエリート)編集部

 ここまでの2回で、Coaidoや代表の玄正慎(げんしょう・まこと)さんご自身について色々と聞いてきたが、ここ数年で格段にその名を聞くようになった「社会起業家」とは一体どのような存在なのか。自身もその一人ひとりである玄正さんに聞いた。

ビジネスとの違いは利益の重視度

――ここ数年でますます耳にするようになった「ソーシャルビジネス」や「社会起業家」といった言葉ですが、いわゆる「ビジネス」や「起業家」とはどういった違いがあるのでしょうか。

玄正 最も端的に述べるならば、利益の重視度ということではないでしょうか。もちろん一般起業家の中にも、何かを改善したいと思ってサービスを始める人はたくさんいますし、ソーシャルビジネスであっても、継続的に活動していくためにはどこかしらで利益を出す必要があります。社会起業家は、社会の問題を解決しようとして起業している人のことを指しますが、社会問題を解決するのは何も社会起業家じゃなければならないわけではありません。既存の企業が取り組んでもよいわけです。

 ただ現実的な問題として、組織は収益を上げて従業員の雇用を守っていく必要があるものですし、銀行も利益が出て返済できることを前提として融資をしているわけですから、利益が出にくい分野や、投資分を回収するのにあまりに時間がかかるものには進出しにくいというだけです。そこにあえて取り組むのが社会起業家で、利益と同等、もしくはそれ以上に社会問題の解決を重要視している存在だと言えるかと思います。

――なるほど。ソーシャルビジネスの多くが一般社団法人やNPOの形をとっているのも、そうしたことに理由があるのですか。

玄正 そうですね。利益を最優先しないのであれば、寄付金や補助金の獲得が重要になります。NPOは寄付金や会費が集めやすく、行政と繋がりやすいというメリットがある一方で、補助金などを獲得するためには活動の公益性が求められ、活動内容を助成団体のみならず都道府県や国に報告する義務があります。補助金の多くは税金ですから、用途を細かくしっかりと説明できることが重要です。ですので問題に対してどのような方法が有効なのかあらかじめわかっているのであれば、NPOは適した形と言えますが、課題解決に対するアプローチが有効でなかった場合に素早く他のアプローチを試していくような試行錯誤が求められる事業においてはあまり向いていない法人形態であると思います。

 一般社団法人は寄付金や会費が集めやすいなどのメリットがある他、NPOとは異なり、社会的な情報公開の義務がないのでより活動の自由度が高くなります。しかし株式会社と違って、「株式」での資金調達はできません。株式会社は利益を追求していく組織ですので寄付を受けることができませんが、その反面、株式での資金調達が可能で、かつ経営者や株主が柔軟に事業内容を決定・変更することができるので、中小企業では小回りが効きます。そのように法人形態によってメリット、デメリットがあります。

社会起業家だと思って起業したわけではない

――その中で、Coaidoは株式会社の形態をとっていますが、ビジネスとして展開していこうと考えた理由はなんでしょうか。

玄正 理由は私たちが自治体にシステムを提供するサービスだからです。自治体の中でも命を預かる「消防」が使用するサービスには常に高い品質が求められます。システムをブラッシュアップして安定して運用していくには良い人材を確保していくことが必要です。それには社会課題の解決だけでなく利益も追求し、メンバーに還元していかなければ、良い人材を集めて維持していくのは難しいと考えました。実際、社会起業家のコミュニティにいると、私たちのように株式会社の形をとって活動している者はまだ少ないようで、よい意味で注目していただいています。

――Coaidoの場合は、課題を解決するソーシャルビジネスと、利益を追っていくビジネスの良い面をそれぞれ持ち併せているのですね。

玄正 実際、起業したときは、自分が社会起業家だと思って起業したわけではないんですよ。いちスタートアップとしてシードアクセラレーションプログラムに応募していたのですが、ビジネスの話をする前に、心臓突然死の社会問題を理解してもらうだけで大変でした。そこで、社会起業家の支援プログラムに応募してみると、そこでは理解と共感が得られ、無事審査を通り、いくつかのプログラムで支援を受けることができるようになりました。その過程で、自分ではビジネスをやっているつもりですが、外から見るとソーシャルビジネスに分類されるということをじわじわ認識していきました。社会起業家の仲間が増えていくにつれ、今では自分でもソーシャルビジネスをやっているという意識が芽生えてきたので、その利点は十分に活かしていきたいと思っています。

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>