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8大学が英語プレゼンで競う
グローバル人材育成フォーラム

8大学が英語プレゼンで競うグローバル人材育成フォーラム

 これからの日本経済をけん引するグローバル人材の育成支援を目的とした、「グローバル人材育成フォーラム」(共催・日本経済新聞社人材教育事業局)が11月21日、亜細亜大学(東京都武蔵野市)の大講堂で開かれた。前半は、JETRO(日本貿易振興機構)の中村富安参与が基調講演。効果的な途上国支援のためには、現地の人のやる気を促すビジネスの仕組みを作って継続することが欠かせないと訴えた。後半は、8大学の学生が、英語によるプレゼンテーションを披露。審査の結果、大規模な自然災害時に効果的な衛生トイレを提案した、東京医科歯科大学のチームが優勝した。

支援のカギはビジネス手法

 中村氏は、「協働により実現する継続的な途上国の発展」をテーマにスピーチ。自らの現地での経験を基に、まず、途上国の支援をする上で、継続性や持続性の重要性を指摘した。例えば、支援の一つの形として、その国の農産品や工芸品などを買い上げて日本国内で販売する手法があるが、中村氏は「バイヤーの一番の悩みは安定供給ができないこと」と述べ、現地で安定供給の仕組みを構築できれば、結果的に、持続的な支援が可能になると訴えた。

JETROの中村富安参与は基調講演で現地の人に起業家精神を植え付ける大切さを強調した

 さらに中村氏は、持続的な支援を可能にするカギを握るのは、ビジネスの手法にあると指摘。「例えて言えば、現地の人が魚を欲したら、単に与えるのではなくて捕り方を教える。捕れ過ぎたら売り方を教える。捕りすぎて魚がいなくなったら、養殖の仕方を教える。これがビジネス。こうしたやり方をしていかないと、支援は持続しない」と語り、日本企業による実例も紹介しながら、現地の人に起業家精神を植え付ける大切さを強調した。

 基調講演後、会場の大学生からの質問に中村氏が答える「対話」セッションも設けられた。その中で、「グローバル時代の中で、これから社会人になる大学生に求められるものは何か」と聞かれた中村氏は、言葉によるコミュニケーション能力、日本に関する知識、チャレンジ精神の3つを挙げた。特に、日本に関する知識に関しては、「外国人と議論する時には、日本の歴史や文化、経済、社会についてのしっかりとした知識が欠かせない。韓国人と歴史問題を議論する時に、日本の歴史を知っていないと、真正面から議論できない」などと述べ、その重要性を強調した。 

8大学が英語プレゼン

 休憩をはさんだ後半は、東日本地区の予選を勝ち抜いた8大学の学生チームが、「アジアそして世界の未来を創る『協働プロジェクト』」をテーマに、各チーム10分の持ち時間で、英語でのプレゼンテーションを競った。

 トップバッターの昭和女子大学のチームは、アジア人同士、必ずしも仲が良くないという世論調査のデータを示しながら、お互いが仲良くなるためのスマートフォンのアプリを提案。そのアプリを使えば、アジア共通の食文化であるコメを見知らぬ人と協力して栽培するゲームを楽しむことで、アジアの他国の人たちとの心理的距離が縮まり、かつアジアのコメ農家を支援して食糧問題も解決できると主張した。

 次に登場した創価大学のチームは、アジア全体の発展と繁栄のためには、特に将来を担う若い世代における相互理解の促進が大切との考えから、アジア各国の小学生が他国の小学生と協働体験ができるシステムの構築を提案した。

 3番手の中央大学のチームは、アジアの途上国で多くの人の命を奪っている室内空気汚染の問題に着目。多くの家庭で、一酸化炭素や有毒ガスを発生する古いコンロを使っているのが原因と指摘した上で、実際にコンロを扱うことの多い女性に対する具体的な啓もう活動のやり方を提案した。

低コストで衛生面に優れたオリジナルのトイレを提案した東京医科歯科大学チーム。どのチームもプレゼンスキルの高さが目をひいた

 4番目に登場した東京医科歯科大学のチームは、大規模な自然災害が起きた時の、被災地での衛生問題に焦点を当てた。既存の様々な簡易トイレの問題点を具体的に指摘した上で、低コストで衛生面に優れたオリジナルのトイレを提案した。

 5番手の東京工業大学のチームのテーマもトイレ。ただし、こちらは、日常的に使われるトイレの衛生面での問題を取り上げ、それに代わる新型のトイレットを提案。効果のほどを動画で紹介しながら、低コストであることも強調しつつ、説明した。

 6番手の東洋大学のチームは、ミャンマーで密かに深刻になりつつある国民の肥満問題を取り上げ、その解決方法をプレゼンテーション。一番の原因は質の悪質な食用油の摂り過ぎにあるとして、教育活動とビジネスの手法を併用して、食用油の使用量の削減や良質の油への切り替えを促すことを提案した。

 7番目の一橋大学のチームは、日本の高齢者の貧困問題を取り上げ、その解決策の一つとして、ベトナムの低所得者層向けの職業訓練校をモデルとした職業訓練施設を日本国内に設立することを提案。同時に、そのベトナムの学校は運営資金を寄付に頼っていて規模拡大が限られていることから、ビジネスの手法を導入して規模拡大の手助けをするプランも提案した。

 最後に登場した早稲田大学のチームは、プラスチック製のブロックを組み立てて遊ぶ「レゴ」で有名なレゴ社の全面協力を得た、子供たちを対象とする異文化交流促進計画を発表。具体的には、異なる国の子供たちを集めてレゴで遊んでもらい、遊びを通じて互いを理解したり、協働の精神を培ったりするという内容。この取り組みを地道に続けることによって、国際紛争をなくすことができると主張した。

高いプレゼンスキル

 プレゼンテーションを通して目を見張ったのは、「プレゼンスキルの高さ」(審査委員を務めた、松本英登・文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室長)。英語力はもちろんのこと、パワーポイントや小道具の使い方、体を大きく使って聴衆に訴えかけるパフォーマンスなどは、まるでアップルの新製品を発表するスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを見ているかのようだった。各チームとも3~5人のメンバー編成で臨んだが、メンバー間の掛け合いや受け渡しもスムーズで、しっかりと練習を積み重ねてきた形跡をうかがわせた。

 審査の結果、東京医科歯科大学が優勝、2位は東京工業大学、3位は創価大学が入った。

惜しくも第2位だった東工大のメンバー(取材協力:有限会社ミックスマックス、写真:田中達晃)
第3位には創価大チームが入った(取材協力:有限会社ミックスマックス、写真:田中達晃)

 審査委員も務めたJETROの中村氏は、創価大学の発表について、「教育というのはそれぞれの国の価値観を反映するから、自然科学の分野をのぞけば、非常に微妙で繊細な問題を含んでいる。それにチャレンジしたのは評価できる」と講評した。

 アラン・マルコム審査委員(ピアソン・ジャパン社長)は、2位の東京工業大学のプレゼンテーションについて、「非常に社会的なインパクトのあるテーマで、実現の可能性も感じた」とコメントした。

全員で記念撮影(取材協力:有限会社ミックスマックス、写真:田中達晃)

 渡辺雄一郎審査委員(日本経済新聞社人材教育事業局事業開発部長)は、どのチームのプレゼンテーションも「感動を覚えた」としたうえで、優勝した東京医科歯科大学の内容は「イノベーティブ、サステナブル、スケールアウト、そして今日のテーマである協働を表すコラボレーションと、グローバル時代のビジネスに重要な4つの要素をすべて満たしていた」と評した。