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自分の強みを発見する「ストーカー分析」

自分の強みを発見する「ストーカー分析」

 「自分の頭と心を定期的に棚卸し、客観的に見つめて軌道修正していく力」――それを「ひとり力」と呼んでいます。本来のあなたを、あなた自身の手に取り戻すひとつの手段が「ひとり力」をつけること。今回は本当の自分の強み、「好きで、得意で、勝てる」を深堀りするための手法をお伝えします。

自己分析は就活時期だけのものではない

 「好きを仕事に」は、雑誌やネットの記事でも永遠の人気テーマです。皆さんも就職活動や転職活動の際、自分の好きなことって一体何だろうと、たくさん悩んできた経験をお持ちかと思います。もしかしたら、今も仕事を続けながら模索中かもしれませんね。

 とはいえ、忙しい毎日、腰を据えてもう一度棚卸しというのもなかなか大変なこと。「好き」だけを追求して、何も考えずに飛び出して路頭に迷う訳にもいかないのが現状です。そんなときにおすすめの、ひとり時間でできるプチ棚卸し法を今回はお伝えします。名付けて「ストーカー分析」です。

 「ストーカー」と聞くとドキっとしてしまうかも知れませんが、「好き」で「得意」で「勝てる」の頭文字から名付けただけなので、怪しいものではありません。日本語だと少し違和感があるかもしれませんが、英語で「stalker」を調べると獲物を追い求める人という訳もあるため、そのような意味合いも込めて命名しました。

 用意するのは「好き」「得意」「勝てる」を三層の逆ピラミッドにした図と、ふせんです。図は使いやすいようにA3に拡大コピーしましょう。

 準備ができたら、次の手順で分析をしてみてください。

1.最初にあなたの「好き」を、「1テーマ1ふせん」でどんどん書いていく。
2.それをふるいにかけ、「得意」なものを抽出する。
3.最後に「勝てる」ものまで絞りこむ。
4.「好き」「得意」「勝てる」と思ったものを改めて眺めてみて、「なぜそう思うのか?」を考える。

 「勝てる」と聞いて、何だろうと思う方も多いかもしれません。この「勝てる」は自分ひとりでは決めることが難しいですし、なかなか客観的に見ることができないものです。常に流動的で状況が変わるということもあり得るので、あなたが考えた「勝てる」を周囲に話して反応を見てみる必要があります。まずはひとりで考えたときに「勝てる」を判断するための基準は下記のとおりです。

●基準1
周囲に話したときに、「すごい」「それで?」と身を乗り出して聞かれたことがあるか(SNSにアップしたときに普段よりも良い反応がもらえたか)。

●基準2
その分野で少しでもお金を稼いだ経験があるか(お礼にプレゼントをもらった、感謝されて手紙をもらった、などでも可)。

なぜそれが「好き」なのか、「得意」なのかも深く考えてみよう

 「好きなもの」「得意なもの」「勝てるもの」を絞り込んでみたあと、それらの「好きグループ」「得意グループ」「勝てるグループ」を眺めてみると、何かしらの共通点が見つかるはずです。例えば「好き」に入っているもので「映画」「読書」など情報インプット系が多いなと思ったら、「どうして情報インプット系が好きなのか」を考えてみましょう。

 今はコミュニケーションや時間管理・プレゼンなどを教える立場にある私ですが、実は昔は「料理研究家」を目指してレシピ開発や資格試験の勉強をしていました。しかし、「ストーカー分析」で調べていくうちに、私は「料理」そのものが好きというよりも、「料理」という媒体を通じた人との関わりが好きだと気付いたのです。

 私のストーカー分析は下記の通りです。

●転勤族の家庭に育ったせいか、友達と仲良くするのが苦手でした。仲良くしたいと心では思っていても、それを素直に表すことができず、バナナケーキを焼いて学校に持って行くことによって人と仲良くしようとしていました。
●人見知りが激しく最初はうちとけなくても、「乾杯」のひとことで皆と仲良くなることができるから飲み会が好きでした。

 つまり、別に料理という手段にこだわらなくても、何かしらの媒体(職業として関わっている図解、プレゼン、時間管理、早起きなど)を通じて人と関わればOKだったと気付いたのです。

 今のコミュニケーション、時間管理、プレゼンも全てコミュニケーションの手段を教えているというそのことに気付いてから、目の前の仕事がより楽しくなりました。

「勝てる」に至らなかったスキルでも、その経験は必ず役立つ

 自己実現のためにたくさんの資格を取る人を、人はよく「資格マニア」と呼びます。私も資格マニアでした。きき酒師、酒匠、ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル、パン教師師範、マクロビオティック師範...と、食にまつわる資格をたくさん取得しました。とりあえず興味の赴くままに、様々な試験勉強をしてきました。

 これらの資格は公認会計士、弁護士などといったような国が認める公的な資格ではないため、実は取得してもキャリアとして見なされないことが多く、転職する時に履歴書に書いても全く効力を発揮しません。しかし、一つひとつの資格をクリアしていく達成感を味わうことにより、自分だってやればできるという自信をつけることができたのも事実です。また、一見無駄だと思っていても必ず何かの機会で身になってくることも実感しています。

 例えば、私は独立してから経営者の方や目上の方と会食する機会が増えました。ある程度上の立場の方は、食やワインに対する知識や好奇心が旺盛なことが多いのです。そんなとき、私が昔取得した資格が生き、とっかかりとしてグルメネタで場の雰囲気を円滑にすることもできるようになりました。

 料理の知識は、発想を広げたり、段取り力をつけたりするのに役立ちました。例えば1つの大根から3通りの調理方法を考えることは、1つの企画から3通りのアプローチ方法を考えるのと一緒のこと。パンの発酵時間を見越して他の料理を作るといった段取り力は、プロジェクトの終了を見越してメンバーの進捗状況をそれぞれチェックしていく段取り力とも通じるのです。

 つまり、「資格マニア」として一生懸命になった経験は、今すぐに直接役に立つことがなくても、必ずなんらかの形で自分の血肉となっていることが分かったのです。

 日々自分の想いが動いていて、あれもやりたい、これもやりたい、でもどうしたらよいかわからない。いろんな習い事をしたり、資格を取ったり、異業種交流会に出たり、転職を繰り返したりするうちに見えてくるかなと試してみたけど、どうもしっくりこない。もしそう思っている方がいらしたら、やみくもに動き回る前に、一度徹底的に自分を見つめ直してほしいと思います。

 見つめ直すことで、初めて自分はどんな自分にだってなれるという、ゆるぎない「軸」を見つけることができるのです。「ストーカー分析」がその一助となれば嬉しいです。

池田千恵(いけだ・ちえ)
Before 9(ビフォア・ナイン)プロジェクト主宰/CONECTA代表。図を活用した思考整理/情報発信/時間管理/目標達成手法を著書や講演、企業研修などで伝えるかたわら、朝9時までの時間を有効活用するための早朝セミナー「Before 9プロジェクト」を2008年より開催。ベストセラーとなった『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)は、朝4時に起きる「ヨジラー」急増のきっかけとなる。『「ひとり時間」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)、『朝活手帳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など時間管理に関する著書多数。

[nikkei WOMAN Online 2015年10月16日付記事を再構成、日経電子版2015年11月3日付]

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