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やる気スイッチを入れよう(6)元気は「もらうもの」ではなく
「あげるもの」

やる気スイッチを入れよう(6) 元気は「もらうもの」ではなく「あげるもの」
authored by 菊入みゆき明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン
ワーク・モチベーション研究所長

菊入みゆきのやる気スイッチを入れよう(6)

「元気をもらった」という言い方があります。がんばっている人の話を聞くと、元気になる、ということですね。でも実は、元気はあげるほうが、元気になります! 友達を元気にしようと、励ましたりなぐさめたりすると、励ましている人も元気になるのです。

励ます言葉には、パワーがある

 学食で、耳にした会話です。「◯◯君なら絶対やれるって。やってみなよー。っていうかやるべき」「そうだよ。この前のパフォーマンスもめちゃよかったし。そのあとさらに、がんばって練習してるんでしょう。絶対いけるよ」

 どうやら、1人が何かのコンテストに出ようかどうしようか迷っていて、2人の友だちが励ましているようです。私は、その会話を横のテーブルで聞くともなしに聞いていたのですが、なんとなく明るく元気な気持ちになりました。3人の仲の良い雰囲気と、2人の発する力強い励ましの言葉や友人の努力を認めるコメントが、ただ横で聞いているだけの私にも、やる気アップの効果をもたらしたのです。

自分の言葉は、自分自身に響いている

友達を元気にしようと、励ましたりなぐさめたりすると、励ましている人も元気になるもの

 どうすれば相手がやる気になるかを考え、工夫して言葉を選び、心を込めて相手に伝える。この行為自体の中に、やる気が高まるプロセスが含まれています。まず、「相手をやる気にさせる」という目標を持っています。そしてその目標に向かって、考え、工夫をする。さらに、相手がどう反応するかという「結果」が目の前にあります。自分の行動が適切だったかどうかがすぐにわかり、達成感も得やすい。

 また、自分が発する励ましコメントは、実は自分にも響いています。学食での、「絶対できるよ」という言葉は、隣のテーブルの私の心に響いてきましたが、実際には発した本人こそが、自分の言葉を自分の耳で聞き、「そうか、絶対できるんだ」と影響を受けているのです。

 ちなみに、学食で励まされていた人は、「やってみようかな」と言い、励ましていた2人は、「よっしゃ、俺もがんばろ」と言って、立ち上がり、食器を持って出ていきました。励まされた人も励ました人もやる気も上がったようです。

 普段の生活の中で、自分のまわりの友人や同僚、家族に対して、「どうすればもっと元気になるだろう?」「やる気が上がるだろう?」と意識して行動すると、自分のやる気も上がってきます。

 特に、なんとなくやる気が出ないなと思っているとき、内にこもるよりも、いろいろな人と会いましょう。そのとき、ただ漫然と会うのではなく、「少しでもいから、相手を元気にしよう」と思うことがポイントです。

相手のいいところをどんどん言葉にする

「少しでもいから、相手を元気にしよう」と思うことがポイント

 すぐにできることとして、あいさつや雑談の中で、相手のいいところを見つけ、言葉にして伝える、という方法があります。

 「今日、髪、めちゃいいじゃん」「そのセーター、似合うね」などの見た目に関することは、見つけやすいし、言いやすいですね。言われた人も、髪や服装に自信が持てるようになり、出かけたくなったり、いろんな人と会いたくなったりと、行動を起こすモチベーション(やる気)が上がります。

 相手の考え方や行為に対しても、いいなと思ったら、どんどん言葉にしましょう。「最近、バイト(部活、ゼミ等)がんばってるよね。私も見習おう」「いつもみんなに気配りしてくれるよね。ありがとう」などです。ありがとう、という感謝の言葉も、やる気のモトになります。自分の行動に対して、「これでよかったんだ」と思うことができ、これからもそうしようという意欲が湧くのです。

相手のやる気を想像する

 どういうときにやる気になるかは、人それぞれです。ほめられるとやる気になる、というパターンは多いですが、人によっては、けなされると悔しい気持ちになり、それをバネにして奮起するという場合もあります。やる気のツボは、人によって違うのです。

 例えば、競争することでやる気が湧くというケースもあります。そういう場合は、「レポート、どっちが早く提出できるか競争しない?」とか、「バイト代、競わない?」などと持ちかけると、やる気に火がつく可能性があります。

 苦手なことをしなければならず、一歩が踏み出せずにいる人もいます。自分の意見を発表することが苦手な人が、皆の前でプレゼンテーションをする、といった場合です。こういうときは、これまでにうまくいった場面を思い出してもらいます。「グループワークのとき、~~~って言ってたよね。あの発表、すごくよかったよ」などです。成功体験は、自信につながります。

 成功体験がまだない場合、うまくやっている人を参考にする方法もあります。できれば、同じように発表が苦手な人が発表している様子を見るのが、より効果的です。そして、「あんなふうにやればいいんじゃない?」と励まします。他の人の成功体験を、自分のものとして捉えるというやり方です。

 相手のことをよく見て、どういう言葉をかければいいかを工夫しましょう。

「~たりして」と夢を広げる

「あの人と話すと元気になる」と言われる人を目指そう

 その人なりにがんばっていることがある場合、さらに励ますにはどうしたらいいでしょうか。「がんばってるね」と、相手の努力をきちんと認めた上で、夢を広げるという方法があります。

 その人が持っている目標より、さらに大きな夢やその人が考えつかないような夢を、ちょっとあてずっぽうでもいいから言ってみるのです。例えば、飲食店でのアルバイトを一所懸命やっている人には、「今のバイトがきっかけで、将来は三ツ星レストランのオーナーになったりするかもね」とか、スポーツをやっている人には、「地元にもチームを結成して、子供から大人まで楽しめるコミュニティ作ったりして。楽しいだろうね!」などです。

 「~たりして」と気軽に言ってみることで、楽しく夢を広げてみます。相手は、自分が今やっていることが様々な可能性を持つことに気づき、もっとがんばろうというモチベーションが湧いてくると思います。

 元気はもらうものではなく、あげるもの。「あの人と話すと元気になる」と言われる人を目指しましょう。すると、自分のやる気も上がってきます。

 まずは、いま目の前にいる人に、元気が出るひとことを言ってみましょう。

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