日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

家事上手「カジダン」、
頼れる男の条件

家事上手「カジダン」、頼れる男の条件

 家事に積極的な男性「カジダン」を増やす取り組みが広がっている。料理に縁遠かった男性向けの教室や、家事の知識を身につけるための検定を自治体が設ける。パートナーと家事を助け合う土壌づくりに一役買うだろうか。

料理に洗濯・・・俺に任せて

 「この肉、切り方がでかいかな」「いいんじゃない?」。エプロンをつけた男性たちが迷いながら鶏肉に包丁を入れ、首をかしげながら何度もレシピを確認している。東京都千代田区が2015年10月下旬に開いた父子向け料理教室のひとこまだ。

 パパ料理研究家の滝村雅晴さんが講師を務める。オムライス、オーロラソースで食べる温野菜、ぶどうミルクプリンの3品。「野菜を先に、生肉を後に切る」。食中毒防止を意識した手順を説明し、タマネギのみじん切りで手本を見せる。

 「わー、きれいにできた」。チキンライスを薄焼き卵でうまくくるんだパパに周囲から拍手が起こった。おそるおそる包丁を握っていた男性は作り終えたときはほっとした様子だ。参加した鈴木秀明さん(37)は「共働きの妻に料理をほとんど任せきり。頑張ってレパートリーを増やしたい」と笑顔を見せた。

 滝村さんの持論は「男の料理とパパの料理は違う」。自分のおなかがすいたときに趣味でつくるのが男の料理であるのに対し、おなかがすいた子供や妻のためにするのがパパの料理だ。

子供と一緒に料理教室でオムライスを作る父親ら(東京都千代田区)

教室や検定で自治体も後押し

 自治体や企業の依頼が全国で増えているといい、2014年4月には任意団体、日本パパ料理協会を設立した。幕末の藩士に例えた会員の「パパ飯士」は約90人。会員以外のパパも招いて料理を振る舞うイベントを定期的に開き、レシピなどを共有する。

 男性の家事能力を向上させようと、福井県は12年6月に家事チャレンジ検定を始めた。「ピーマンと肉いためをつくるのに、ピーマンの切り方として正しいのはどれ?」「キッチンの蛇口に白い汚れが付かないようにするにはどうすればよい?」など家事の知識を3択で問う。

 年2回、インターネットで回答できる。20問中14問正解で合格だ。希望者にはビビンそうめんや卵焼きなどの料理の実技試験もある。これまで計1920人が合格した。

アイロンがけをこなす前田英一さん(福井市)

 福井市の前田英一さん(53)は今春、検定と実技試験を通った。「料理するときにすぐに役に立つ内容」と評価する。もともと共働きの妻と家事を分担し、小学生の娘の制服のアイロンがけなどをこなす。「子供が小さいときに少しでも助けようと思って家事を始めた」そうだ。

 福井県は共働き率が57%と全都道府県で1位。一方、女性の管理職比率は41位の12%と下位に甘んじている。女性の仕事や家事の時間は全国でも長い方で、ゆとりの時間が少ない。県女性活躍推進課の担当者は「夫が妻の家事負担を軽くできれば、管理職に挑戦する女性が増えるかもしれない」と期待する。

部活で特訓、未来の「カジダン」

真剣な表情で料理に取り組む生徒(京都市北区の洛星高校)

 カジダン育ても広がり始めている。「ゴムべらちょうだい」「みりん入れ過ぎちゃう?」。15年11月中旬の午後、関西有数の進学校である洛星高校(京都市)の家庭科室では、3人の男子高校生が料理コンテスト「第9回高校生食育王」に出品するメニューづくりに取り組んでいた。

 彼らは料理研究部の部員だ。洛星高校は全9回のうち8度高校生食育王に出場している常連校。15年11月8日には中学・高校生の料理大会「第4回ジュニア料理選手権」で優勝している。

 男子校ながら料理熱心な生徒が多いのは、中高一貫を生かして家庭科教育に力を入れているためだ。中学2年生から高校1年生にかけて食育教育や最大年8回の調理実習、校内の畑での野菜栽培などをしている。

 部の顧問の畠中希世美・家庭科主任は「社会では教室の中だけで学べない生活力を問われる。生徒には栄養に気を配って自炊できるようになってもらいたい」と話す。

 関東の大学に進学して親元を離れ、一人暮らしを始める生徒は多い。食育王チームの山崎司さん(16)は「大学に行ったら1人で料理をする機会が増えると思ったから入部した」そうだ。

 男性は外で仕事、女性は家事育児に専念――。こんな形の性別役割分業が日本の社会を支えていた時期があった。働く女性が増えた今、性別にとらわれず家事に取り組むカジダンはますます存在感を増していくだろう。

共働きでも夫の家事時間は妻のわずか6%

 家事に積極的な男性が目立つ一方で、共働き子育て世帯全体でみると男性が家事に費やす時間は女性より短い。社会生活基本調査(2011年)によると、1日当たり12分と妻(3時間27分)の6%にすぎず、ここ20年間で傾向は変わらない。

 育児などを含めて妻は4時間53分、夫は39分と大きな開きがある。

 日本女子大の大沢真知子教授は「日本に根強い長時間労働を改善しないと、男性の家事に向けた意識が変わらない」と指摘する。ただ、男性にも変化が出てきて、妻の収入が高いと夫婦間の分担が進む傾向がある。また、家事は積極的にやらなくても子育てを楽しむ男性は増えたとみる。「今は転換点」という。
(天野由輝子、山田和馬)[日経電子版2015年12月26日付]

【関連記事】
「女子大生の子育て体験広がる 育児と仕事の実態学ぶ」
「僕たちはどう働くか 結婚は最高の財テク」

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>