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ピアノが値上がり
背後に地球温暖化の影響

ピアノが値上がり背後に地球温暖化の影響

 コンサートなどで美しい音を奏でるピアノやギターが今、異変に見舞われている。材料価格の上昇や円安・ドル高傾向で生産コストが上がり、メーカー各社の値上げが相次いでいる。もともと高価なイメージがある楽器類だが、さらに手が届きにくくなるかもしれない。実情と背景を探った。

部材作る常緑針葉樹「スプルース」が値上がり

 2015年、値上げが目立ったのがピアノだ。大手メーカーのヤマハや河合楽器製作所が希望小売価格を15年夏から約5万~10万円引き上げた。演奏会などで使う本格的なグランドピアノ、家庭や音楽教室での使用が多い省スペース型のアップライトピアノの両方が対象だ。ピアノは1台60万円前後の製品から300万円を超える高額品まで様々だが、各地の楽器店でも販売価格を引き上げる動きが目立つ。

 「原材料など製造コストの上昇を吸収しきれなくなった」(ヤマハ)。ピアノの音を美しく伝えるには、主要部材である木材の役割が大きい。特に重要なのが、弦の発する音を響かせる「響板(きょうばん)」。木の密度が高いマツ科の常緑針葉樹「スプルース」が多く使われる。米アラスカ州や欧州の一部など比較的寒冷な地域に分布するが、楽器に適した木が世界的に不足し、国際市場での取引価格が上がっている。

ピアノは中古品も値上がり傾向だ(東京都内の中古品店)

 貿易統計でスプルースの平均輸入価格を調べると、2012年ごろまでは1立方メートル当たり2万円台でほぼ安定していた。これが13年に3万4000円、14年には4万円近くに跳ね上がり、この3年間でほぼ2倍の値段になっている。

 背景には地球の温暖化が関係している。楽器に使うスプルースは100年を超す長い年月をかけて育ち、木目が細かく緻密な板材が求められる。ところが温暖化を背景に木の生育が早まったことで年輪の幅が広くなり、音を伝えるのに必要な密度が損なわれているという。森林の伐採規制も各地で強化され「良質な木の調達が難しくなっている」(河合楽器製作所)。

 日本の楽器メーカーは低価格のアップライトピアノを海外で、グランドピアノを国内で生産するところが多い。使う木材は海外で調達する場合が多く、いずれも円安傾向が製造コストを一段と押し上げている。各社は円安が進んだ12年末以降も希望小売価格を据え置いてきたが、ここにきて原料高の転嫁を余儀なくされた。

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